コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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下校部アナザーワーク!
日時: 2016/01/24 22:45
名前: ガッキー (ID: 9i/i21IK)

ガッキーです。とある高校の男女が、有意義な下校をする青春コメディ!を目指しています。
コメント、随時お待ちしております(‾+ー‾)
帰宅部オーバーワーク!と併せて読むと、更に面白くなるぞ!(宣伝)
更新は不定期的ですが、頑張ります。

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Re: 下校部アナザーワーク! ( No.6 )
日時: 2016/02/25 21:58
名前: ガッキー (ID: aOQVtgWR)

「・・・・・・えーっと」
俺は頬を掻きつつ、今言われた言葉を脳内で反芻(はんすう)した。
俺の記憶に間違いが無ければ、俺の脳に欠陥が無ければ、目の前の女の子は『下校部に興味がある』と言ったのだ。
一瞬、『変わり者だなぁ〜』とのんびり考えてしまう程には衝撃的だった。何せ、今の今迄新入生から相手にされなかった身である。当然、夢かと疑いもした。
だが嬉しい事に、コレは現実だ。
「新入生の子か?」
「は、はい」
女の子は、もじもじと俯きながら返事をした。うぅむ。先程から一度も目が合っていない。
「勧誘していた俺が言うのもアレなのだが・・・・・・どこに興味を持ったのか教えて貰えるか?」
その問いに対する答えは素早く、それでいて簡潔であった。
「先輩、です」
「・・・?」
俺?何で俺に興味を?必死こいて勧誘する姿が滑稽で面白かったとか、そういう事か?
だとしたら、泣けてくるな。
しかしどうやら、女の子の表情から察するに違うようだ。
腕時計で現在時刻を確認すると、そろそろ最終下校時刻が近付いている事に気が付いた。
続きは明日でも良いだろう。
「まぁ、良いか。ーー分かった。もう今日は、下校時刻が近いからお開きにしよう。明日部室を案内する」
「お、お願いします」
女の子が頷いたのを確認して、俺は鞄からチラシを一枚取り出して渡した。
「場所は、このチラシに書いてある。分からなかったら先生に俺の名前を言えば教えて貰えると思う。じゃあな!」
それから走って立ち去る。目的地は、勿論自宅。
早く下校して、電話で悠梨に報告してやろう。アイツ、びっくりするだろうな。




翌日。
放課後。

「・・・さて」
俺以外には誰も居ない、『下校部』の部室。
何故、出来立ての『下校部』如きに部室が与えられているんだ?と思う人もいるだろう。
こればっかりは、俺の日頃の行いが良かったとしか言いようが無い。他に何もしてないし、学校側に何かコネクションがある訳でもないのだから。
小さいながら、部室は部室。ぶっちゃけると、『下校』する部活だから広さは必要無いのだ。
広さとしては、四〜五人が座って、少しスペースが余る程度のモノ。そのスペースには、ストーブとか適当に置いておけば良いだろう。
放課後になってから、早くも三十分。昨日の女の子が現れる様子は無い。もう、お茶とお茶請けの用意は出来ているというのに。
「・・・からかわれていたのだろうか」
そう。昨日電話越しに悠梨からも言われた、最悪の可能性。
あの言葉自体が嘘で、俺を騙していたーーという、可能性。
しかし俺は、そんな事は無いと思っている。何しろ理由が無いしな。
悠梨は、そんな俺の意見をボッコボコに反論していたが。凄かったね、あの勢いは。是非とも見せたかった。そして涙目の俺を慰めてほしかった。
カチ、コチ、カチ、コチ。備え付けられていた時計の針が、無慈悲に時を刻む。俺の心を擦り削るように、止まる事無く。
・・・遅い。
探しに行こうかと椅子から立ったその時、ドアをノックする音が。
「どうぞ」
ガチャリ。「こ、こんにちは・・・」と遠慮がちにドアをゆっくりドア開けた人物は、昨日の女の子だった。やっぱり目は合わせてくれないらしい。
良かった。俺は騙されてはいなかったようだ。そんな意味を込めてふぅ・・・と息を吐いてまた椅子に座った。
「いらっしゃい。『下校部』部長の土手・帰路(どて・かじ)だ」
「暎宮・白湯(えいみや・さゆ)です」
「よろしく、暎宮さん」
「あ、はい」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・あっ、座って良いんだぞ?」
「あぁ、失礼します!」
ジッと動かないから、何かと思った。
まだ出会って間も無いからか、会話はぎこちない。
それにしても・・・奥ゆかしいと言うか、内気と言うか。あまり自分から話すタイプではないようだ。緊張しているだけかもしれないが。
それは置いておいて。
「本題に入ろうか。ーー暎宮さんは、『下校部』が何をする部活か知っているか?」
「えぇーっと、・・・・・・・・・・・・下校する部活、ですか?」
「概ね正解だ」
おっかなびっくり。
そんな感じで手探るような暎宮さんの答えを、俺は優しく笑って頷く。それだけで、暎宮さんは安堵の溜息を吐いた。
何をそんなに緊張しているのか。
「せ、正答は何ですか?」
「ただ平凡に帰宅するだけじゃ詰まらない。毎日行う帰宅という行動に、ちょっとした遊び心を加えようじゃないかーーという俺の想いから生まれた部活だ。重く捉えなくて良い。この言葉は別にテストに出る訳じゃない。ただの高校生の一人のちっぽけな主張だと思ってくれ」
説明すると、「帰宅に、遊び心・・・」と顎に手を当てて何やら考えている暎宮さん。
「更に簡単に言うと、帰り道にあるちょっとした何かを発見したり、自宅への最短ルートを探してみたりーーみたいな事をする部活だ」
「楽しそうですね」
「あぁ。きっと楽しい」
ふふっ、とお上品に口元を押さえて笑う暎宮さん。俺は畳み掛けるように更に言った。
「だから、暎宮さん」
真面目な顔で。テーブル越しに椅子に腰掛ける暎宮さんを見詰める。暎宮さんは顔を真っ赤にしていたが、気にしない。

「『下校部』に入らないか?」

「え、その、あ、あの・・・///」
ガタッと椅子を鳴らして立ち上がる暎宮さん。丁度今の時間帯の太陽のように、顔は真っ赤だった。文字通り、漫画やアニメのように、本当に真っ赤だった。
ドア側へと移動しようとする足も、どこか覚束(おぼつか)ない。
危ないぞ。
そう声を掛けようとしたその時、暎宮さんはバランスを崩した。
声を掛けるのは遅かったが、
「危ないーー!」
身体はそれを予想出来ていた為、行動に移すのは早かった。
立ち上がり、俺と暎宮さんを隔てていたテーブルを手を付いて飛び越える。着地と同時に暎宮さんの背中に手を回し、転倒を何とか防ぐ事が出来た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言で見詰め合う二人。顔と顔との距離は、三十cmも無い。
暎宮さんの顔の赤さは限界を超えている。流石に心配になってきた。
「大丈夫か?風邪でも引いているのか?」
「きょ、」
「きょ?」
「きょ、今日は!失礼させて、いっ、いいいいただきます!」
「えっ、どうした?」
「ではっ!!」
俺をドンッと押して、置いていた鞄を手に取り、振り返らずにドアを開けて、真っ赤な顔を隠しながら全速力で下校してしまった暎宮さん。暫くして、遠くから「きゃあぁぁぁぁぁぁ・・・」と暎宮さんの声が聞こえた。
部室には一人。
どこからか、寂しげなカラスの鳴き声が聞こえてくる。
「・・・・・・この季節の風邪は厄介だからなぁ」
何故帰ってしまったのか分からないので、俺はそんな言葉を洩らすのだった。





Re: 下校部アナザーワーク! ( No.7 )
日時: 2016/02/26 17:16
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: lKhy8GBa)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

続編ですね!!
凄い〜^^

遅くなりましたが見つけたので早速コメントを←
今度また〝オーバーワーク〟の方も読んで改めて読もうと思ってます(`・ω・´)

時間が無くてコメント短いですが((
此れからも頑張って下さいね!!

byてるてる522

Re: 下校部アナザーワーク! ( No.8 )
日時: 2016/02/27 00:16
名前: ガッキー (ID: 3w9Tjbf7)

はい、続編です!
相も変わらずおっっっそい更新ですが、これからも読んでいただけたら凄く嬉しいです!

Re: 下校部アナザーワーク! ( No.9 )
日時: 2016/03/13 20:54
名前: ガッキー (ID: 1Fvr9aUF)

「・・・みたいな感じだ」
今日は悠梨が遅刻してきたので、朝に会話は行われず、放課後に話す事になった。俺としてはわざわざ放課後に時間を取ってまで話す事があるのか?という疑問が第一に浮かぶのだが、悠梨曰く「これはボクの日課なんだよ」らしい。
別に反論や反抗する理由は無いので話していると、悠梨から、ふと昨日の事を聞かれた。事実をありのままに話すと、悠梨の口元が妖しく歪んだ・・・ような気がしたのは果たして気のせいか?
「それは君、アレだよ」
俺が悠梨の口元について問おうと口を開いた瞬間、悠梨が言葉を被せてきた。
「アレって?」
「結局、お人好しで愚かな君は一年生の女子にからかわれていたーーって事だよ。現に、その女子は明確な理由を言わずに帰ってしまったんだろう?」
「まぁ、それはそうだが・・・」
釈然としない・・・というか、よく分からないのが本音。俺の考えとしては、突発的に風邪を引いてやむなく下校ーーという事だと思っていたのだが。
俺の考えをそのまま伝えると、悠梨はハンッと鼻で笑った。
「甘いね。君は世の中を舐め過ぎだよ」
悠梨に言わせてみればこうらしい。
「大体、新入生の誰からも相手にされなかった君の怪しい部活に、いきなり単身で話を聞きにくる人がーー更に言えば、女子がいると思うかい?絶対部室の外に仲間が居て、君が女子を襲うなり何なりした時には突入出来る体制だったんだよ。何もなくても、自分の部活動を嬉々として紹介する君の浮かれた表情を見られれば満足。みたいな集団の犯行だったんだよ。・・・いや、なに。君がその事で気に病む必要も、悲しむ必要も良い。例え部活動を続ける事が出来なくても、ボクが一緒に下校してあげよう。無理に部活のメンバーを集める必要は無かったんだ。そもそも君が求めていたのは仲間ではなく、下校へのちょっとした遊び心なんだからね。それなら、言ってしまえば、部活を創らなくても出来る。ボクとその想いを叶えれば良いじゃないか」
「お、おう・・・」
机から身を乗り出して俺に顔を近付け、悠梨が長文を噛まずに言い切った。避けないと唇と唇がぶつかりそうだったので、精一杯背中を仰け反らせる。悠梨も、俺なんかとキスするのは本意ではないだろうしな。
しかしまぁ、そこまで力説されてしまうと、不思議と悠梨が全て正しいように思えてしまう。
「うーん・・・・・・」
腕を組み、考える。
このまま足掻き続けるのが正しいのか。
それとも、潔く活動を辞めてしまうのが正しいのか。
「君が『下校部』を廃部(=無期限活動停止)にした所で、君を責める人は誰も居ないよ。居たとしても、ボクが君を守ろうじゃーーうん?」
「どうした?」
珍しく言葉を途中で切り上げた悠梨を不思議に思い顔を見てみると、悠梨の視線は教室の入り口へと注がれていた。
俺もつられて視線を移す。

「あ、あの・・・」

ドアの所には、今まさに話題に上がっている暎宮さんが気まずそうに立っていた。
「白湯は、別に騙してた訳じゃないんですけど・・・」
「やっぱりそうだったか!」
「落ち着きなよ。まだ分からない」
彼女自身の口から出た言葉に、嬉しさのあまり立ち上がりそうになった俺を悠梨が片手で制する。
『まだ分からない』
『嘘か真か、分からない』
悠梨はそう言いたいのだ。
「嘘じゃありません!」
「言葉では幾らだって言えるんだよ」
「おいおい、お前が落ち着けよ。何でそんなに威圧的なんだ」
剣呑な雰囲気になってきたので、慌てて止めに入る。
俺の言葉に、悠梨は口を閉じた。それから、身体の中にある悪い気を吐き出すように「ふぅ・・・」と息を吐いた。
「・・・悪かったよ。つい熱くなってしまった」
と、暎宮さんに謝罪した。
「い、いえ、白湯も悪かったですし」
「そう言ってもらえると助かるーーさて」
暎宮さんに向けていた視線を俺に戻してから、ゆっくりと言い聞かせるように悠梨は口を開いた。
「君は先に帰っていてくれないかな」
「・・・・・・は?」
いきなり言われた予想外の台詞に、俺は思わず聞き返してしまった。帰っていてくれ、だと?『下校部』についての話なのに部長が不在でどうするんだ。
悠梨は俺の唇を人差し指で優しく押して、
「なに、別に君を蔑ろにしている訳じゃないんだ。ただ・・・女子同士じゃないと話せない話とかあるだろう?」
最後の方は、俺の耳元で囁くように言った。
理解。
あれ程部活に反対していた悠梨が、まさかそこまで考えていたなんて。俺は心がジーンとした。同性だったらハグしてたね。変な意味としてではないが。
「成る程な。だったら悠梨に任せる。後は頼んだ」
「うん、頼まれた」
鞄を取り、俺は足早に教室を出た。これから先は悠梨の言葉に懸かっていると言っても過言ではない。




その日の夜。自室。
『明日、いつもよりも三十分程時間を早めて登校してくれないかな』
悠梨からのメールの内容は、その一言だった。
おいおい、なんだよその簡潔な文章。
失敗でもしたのか?
『下校部アナザーワーク』は今回で終了?
風呂に入った後だというのに、俺の身体からは嫌な汗がダラダラと噴き出すのだった。




「ーー悠梨!」
ガラガラッ!と教室のドアを乱暴に開けて、室内を確認する。いつもなら誰も居ない教室には、悠梨が自分の席で静かに眠っていた。
俺はその事に胸を撫で下ろしつつ、悠梨に近付いた。
「おい、悠梨」
「・・・うぅん、何だい?」
寝起きで寝惚け眼を擦る、まだ頭が起きていない悠梨には悪いが、俺は早速本題を切り出した。
「昨日の事の結末はどうだったんだ?失敗したのか?」
「あぁ、それか・・・・・・」
俺の問いに、明らかな落胆の表情を見せる悠梨。
「誠に残念ながら、彼女を止める事は出来なかったよ。彼女の熱意に負けてしまった。もうボクに出来る事は無い」
「・・・うん?つまりは」
「君にとっては大成功だよ。・・・・・・ボクにとっては大失敗だけどね」
「お、おぉ!やったな!」
最後の方の台詞は聞こえなかったが、兎に角成功したらしい。俺は年甲斐も無く両手を挙げて喜んだ。


かくして、新たな部員を獲得した『下校部』。しかし、まだ安心するには早い。
部活動と認められるには、最低でも部員が三人必要なのだから。

Re: 下校部アナザーワーク! ( No.10 )
日時: 2016/04/08 21:43
名前: ガッキー (ID: Z/MkaSMy)

「・・・あの」
「何だ?」
「何かしないんですか?」
「よし、じゃあしりとりでもするか」
「いや、そういう事じゃないんですけど・・・」
「?」
放課後。『下校部』部室でぼけーっとしていたら、机を挟んだ向こう側に座っていた暎宮さんがこんな問いを掛けてきた。
「部活動として、何かしないんですか?という意味だったんですけど」
「・・・あぁ」
だから、さっきから居心地悪そうにうずうずしていたのか。
俺は窓の向こう、青色の中に伸びる飛行機雲を眺めながら答えた。
「何も無いな」
「えぇ!?」
「何かするか?」
「良いんですか、そんな適当で!」
成る程、暎宮さんの言いたい事は大体理解したぞ。
つまり、下校の時間迄する事が無い。部活中なので携帯を弄ったりするのも気が引けるので、何か活動をしようーー概ね、こんな感じだろう。
・・・しかしまぁ、する事が無いのは事実なのだ。
『下校部』は、下校する事が目的だ。
下校する迄に何をするのかは、俺自身創設する時にあまり考えてなかったんだよな。
「うーん・・・」
だからと言って、こうしてダラダラしていられないのも事実。
それに、活動についてもそうだが、『下校部』には最低でもあと一人部員が必要なのだ。
このままでは、部の存続が危うい。
「部員を集めなきゃな」
「そうですね。まずはそこからです」
「誰かいないか?良さそうな人」
「良さそうな人ですか?えぇーっと・・・・・・」
宙を見詰め、考え始める暎宮さん。
数秒してから、「あっ」と暎宮さんが意味ありげな声を洩らした。
「何だ?」
俺が暎宮さんに問うと、暎宮さんは「良さそうかどうかは分からないんですけど」と前置きしてから言った。
「そう言えば、新一年生の中に凄い人がいたような」
「凄い人?」
「はい。どんな人かは見た事ないんで知らないんですけど、友達曰くーー」





「『忍者』ねぇ・・・本当なのか?その情報」
一年生の廊下を歩きつつ、俺は暎宮さんに問うた。
暎宮さんの友達曰く、その凄い一年生は『忍者』らしい。どんな経緯で忍者という結論に至ったのかは知る由も無いが、気になるのは確かだ。あの場で真偽を定かにはせずに、取り敢えず暎宮さんと聞き込みを行う事にしたのだ。
俺からの問いに、暎宮さんは難しそうな顔をした。
「グレーゾーン、って感じですね。明確な証拠がある訳でもありませんし。でも、目撃者はいるらしいですよ?」
「へぇ、その目撃者は?」
「何を隠そう、白湯の友達ですっ」
「おぉ!」
胸を張って自信満々に答えてみせた暎宮さんに、俺は胸が高鳴った。目撃者が友達なら、聞き込みも行い易い。
「その友達は何組だ?」
「白湯と同じ組です。ーーあ、ここです」
「良し、気を引き締めて行こう」
閉まっていた教室のドアを開く。
停止。
「・・・うん、まぁ予想してはいたけどさ」
「居ませんね・・・」
そりゃそうか。何せ放課後だし。こんな時間迄教室に残っている方が珍しいか。
「居ないなら仕方無いな。他の人に聞こう」
「でも、白湯の友達同様、帰っちゃってるんじゃないですか?」
「居なかったらその時だ。行こう」
歩き始める。
簡単に忍者が見付かる訳も無いので、暇潰しに、と暎宮さんへ切り出す。
「暇だからしりとりでもするか」
「あー、はい。良いですよ」
「しりと『り』」
「倫『理』」
「リア『ル』」
「瑠『璃』」
「リス『ト』」
「ト『リ』」
「また『り』か。・・・リクエス『ト』」
「帳(とば『り』)」
「おぉう!?り、り、立方『体』!」
「稲『荷』」
「どうやっても『り』で返ってくる!ぐぬぬ・・・!リ『ス』!」
「ス『リ』」
「ぎゃあああああああ!!」
「終わりですか?」
「降参だ、俺の負けだよ・・・。と言うか、何だよその強さ。勝てる気がしない」
「ふっふっふ・・・白湯は強いですよ。相手が泣くまでしりとりをやめませんから」
「怖い怖い!虚ろな目で言うなよ」
暇潰しも俺自身の降参によって終わってしまった事だし、俺は探している忍者について考える。
忍者、ねぇ。
忍者と言えば、水の上を走ったり姿を消したり壁を登ったり天井裏に潜んだりすモノだがーー現代を生きる忍者さん(仮)はどんな事をするのだろうか。
一緒に下校とかしてみたいな。あわよくば下校に便利な忍術とか教えてもらいたい。
「是非とも部員にしたいな、忍者」
「そ、そうですか・・・ーーあれ?」
「どうした」
「一組の教室、人が居ます」
部活をやっていない者なら下校している時間帯。教室内には、無言で空を眺める男子生徒。異質とまではいかないが、不思議な気持ちになった。誰かと談笑しているのならまだしも、彼は一人でただただ空を眺めているのだから。
俺は気付いたら男子生徒の元へと歩き出していた。「ちょ、ちょっと」という暎宮さんの小声の制止は聞かずに。
「君、忍者か?」
俺は無意識にこんな風に問うていた。
馬鹿か俺は。何を初対面の人にイカれた問い掛けをしているんだ。
これは怒られても仕方無いな・・・と発言し終わってから覚悟したのだが、男子生徒の反応は予想外だった。

「ーーな、なな、何故それを・・・!?」

御丁寧に、問われた瞬間に肩をビクッと揺らし、顔面を蒼白にしながら。
え、まさかのビンゴ?
「忍者なのか!そうか、君が!」
探し求めていた忍者との対面に、俺は嬉しくなって男子生徒の肩をバンバン叩いた。
忍者(男子生徒)は口をパクパクし、されるがままだ。
「良かった良かった、探してたんだよ。早速だが、『下校部』っていう部活に入らないか?」
喜びのあまり、捲し立てるように忍者に言った。
「『下校部』・・・部活、か?」
正気に戻ってきたのか、忍者が平然とした顔で俺に問うた。
「そうだよ、部か」
肯定した瞬間の出来事だった。
俺の喉元に苦無(くない)が突き付けられたのは。



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