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幻想短編狐娘
日時: 2016/01/26 02:06
名前: 白須賀貴樹 (ID: xeUX4s55)

【祭り歌】

幻のあやかしがおめかしでお出まし。

明眸皓歯(めいぼうこうし)、いとをかし。

けれどいくら恋慕し耽溺(たんでき)しても

それはひとえにただの目晦まし(めくらまし)

人ならぬものと思ってあきらめるが潔し(いさぎよし)。




〜〜プロローグ〜〜

妖(あやかし)族のその娘は、300年ぶりに森を出て、ふもとの町におりてみようと思い立った。

賑やかなお祭りのお囃子と太鼓の音に誘われて、ついつい遊びに行きたい気持ちになったのだ。

彼女はひとけのない稲荷神社の狐塚に降り立ち、しばらくそこで人間界の様子を静かに探っていた。そして、すぐに15,6歳くらいの一人の少年に目を付けた。彼はどことなく影のあるオーラをまとった寂しげな少年だった。


「化かしやすそうな子だな」


娘はピンクで形のいい舌をペロッとなめると、その少年に近付いて行った。少年は足元の小石を力いっぱい蹴った。先の尖った小石が勢いよく転がる。


祭りは酔狂な盛り上がりを見せ、森の奥、妖の住む隠れ里にまで祭り歌が届いていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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Re: 幻想短編狐娘 ( No.1 )
日時: 2016/01/26 11:22
名前: 白須賀貴樹 (ID: xeUX4s55)

〜〜剛(つよし)編〜〜



「人と人は支えあって生きているんです。」
中学校の先生はそんな話をいつもしていた。
「真の友はどんなときにも愛し続けるものであり、苦難の時のために生まれた兄弟なのですよ。」

先生はたぶん自分の言葉に半分感動しながら語ってるんだろう。
キリスト教系の学校だからか、宗教の時間にはこういうありがたい道徳的な話を聞かされるんだ。


先生によれば、理想の友達ってのは、辛い時には悲しさを半分にして、嬉しい時には喜びを2倍にして分かち合うものらしい。




そうだよ。きっとそれこそが真の友情だ。先生の言っていることは正しい。僕だってそういう友情は確かに素晴らしいものだと思うよ。




だから、僕はそんな相手が心の底から欲しかった。だけど、現実は理想通りいかないもんなんだ。これもまた世の中の真実じゃないかな。

真の友がいる人って、世の中にどれくらいいるものなんだろう。宗教の時間にありがたい話をしてくれる先生が、職員室では誰ともしゃべらず窓際の席にポツンと座っているのを、僕は時々見かけるから知っている。そしてなんだか切なくて、でもちょっと先生を見下したような気分になってしまう。


僕にも、真の友なんて一人もいなかった。

そんなことを思い返しながら、寂しい僕は紺色の浴衣を羽織り、はきなれない下駄をカツンカツンいわせて夕方の道を歩いていた。夕方の空のオレンジ色までがなんだか切ない。

Re: 幻想短編狐娘 ( No.2 )
日時: 2016/01/26 21:49
名前: 白須賀貴樹 (ID: xeUX4s55)

独りぼっちの僕は人気のない方へと歩を進めて、気が付いたら神社の鳥居の前まで来ていた。

深い森を背中に背負った古い神社には、400年前から狐の守り神が祭られている。この町を見守っているという伝説の稲荷だ。

神社の鳥居はこの夕方の空と同じオレンジ色。日が暮れる時、太陽は一度死ぬんだ。そして死の直前に世界を自分の血で染める。禍々しいまでのこの鳥居の朱色は、森をつかさどる神の血の色だ。


僕はこのまま児童養護施設の青葉学園をでて、祭り会場へ行くつもりだった。今日は町の商工会主催のきつね祭りだ。

太鼓とお囃子、それに祭り歌がにぎやかに響いている。きっと祭り歌はこの森の奥にある神々の住処にまで届いているんだろうな。


学校の同級生たちはきっと仲良い者どうし誘い合わせて祭りに行くのだろう。楽しいだろうな。正直に言って、僕は彼らがうらやましいんだ。

見えてきた祭り会場はにぎやかだった。屋台が沢山出ていて、皆、浴衣で着飾って陽気にはしゃいでいた。同じ中学のクラスメイトの姿もちらほらとあった。


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