コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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謎嫌い書店員の事件簿
日時: 2016/02/05 22:18
名前: 相楽 (ID: g1CGXsHm)

「帰れ。」

構っている暇なんぞないと言わんばかりに、男は冷たく言い放ち、玄関のドアを閉めようとする。
やれやれ、と痩せ型で端正な顔立ちをした男は苦笑をして閉まるドアを片手で制した。

「昔のよしみじゃないか。そんな冷たくするもんでもないだろうに。」

不愛想な男は、イライラを募らせたため息をついた。
その時、男の脇からヒョイと黒目の大きな愛嬌のある少女が現れた。
小学校高学年から中学生程度と見られたその幼い風貌の少女が、不愛想ついでに言うと、無精ひげを生やした男の家から現れることがなんとも犯罪の香りを漂わせた。

「お、お前……!」

犯罪の香りはすぐにこの訪ねてきた男にもわかったようで、疑念の目で目の前の犯罪者予備軍らしき人物を見つめた。
犯罪者予備軍はチッと舌打ちをして少女を睨みつけた。と思えば、その白く細い首をガシッとつかむと、乱暴に外へ放り出した。

「ンギャア!」
「お前も帰れ!」

どうやら犯罪者予備軍ではなさそうだった。
少女は前のめりで倒れそうになるのをなんとかこらえ、振り返った。

「酷いじゃないですか!突然放り投げるなんて!」

見た目よりも大人びた綺麗な声音で、少女は抗議した。

「帰れと言ったのに帰らないからだっ。俺はクソ簡単な事件を解くのも相棒を持つ義理もない!二人とも帰れ!」

「瀬名!」
「葵おじさん!」

乱暴に閉じられていくドアを見ながら、男と少女の声は重なった。


                        ***




CHARACTER

瀬名 葵
基本不愛想かつ気まぐれ、めんどくさがりという性格。職業、書店員。
頭の回転が速く、よく高校、大学時代からの友人に事件の謎をといてくれと頼まれる。が、本人はめんどくさがり、嫌がる。

瀬名 悠(はる)
活発で頑固。10年前に父親を、そして5年前に母親を亡くした。
気さくで態度をどんな人にも一定なので、男女問わず好かれる。
葵の姪っ子にあたるが、悠の父丹(あかい)とは本当の兄弟ではないので葵と血の繋がりは無い。
童顔に加え、小柄なので小学生から中学一年生ぐらいに見間違われるのが悩み。

宮塚 侑士
葵の大学時代からの数少ない友人の一人。
刑事として奮闘するも、時たま葵に知恵を求める。
その顔立ちから、寄ってくる女性は数知れず。

三橋 加奈子
地元情報誌のコラムコーナーを担当する。
些細な事件に巻き込まれた事がきっかけで、葵に興味を持つ。ゆえに、ストーカーに似た行為を行って、度々自身が担当するコラムに葵を登場させる。
常識人ではあるが、物事に熱中すると周りがあまり見えなくなる。

相島 譲
葵の勤務先、幌南書店の店長。
ミステリー小説と、変わったものが好き。
葵に昔事件の関係で助けてもらったことから、葵を気に入り、また葵も心を許す数少ない人物。
少々世話焼き。

朝倉 一颯(いっさ)
悠のバイト先のスーパーで一緒に働く。主にレジ打ち担当の大学2回生。
出る言葉は本心なのか、はたまた嘘なのか、掴みどころのないふわふわした人物。
悠をよく気にかけているが、その本心とは…?


目次

第1話 潜んでいた記憶>>001 >>002
第2話 捜索活動>>003 >>004 >>005
第3話 瀬名葵という奴は >>006 >>007







作者からのコメント。

たいした細かい設定も考えず見切り発車した作品です。キャラと大まかな設定は気に入っているため、とりあえずキャラたちを動かしつつなんとか良いストーリーにしていけたら、という安直な考えからここで執筆をと思い立ちました。
ライトなミステリーを目指しますが、何分私の頭が足りないもので、そもそもミステリーに仕上がるかもわかりません…。
なんとか、楽しく読んで頂けるよう頑張ります。

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Re: 謎嫌い探偵の事件簿 ( No.1 )
日時: 2016/01/29 12:37
名前: 相楽 (ID: g1CGXsHm)


『アイツ、元気にしてるかなぁ……。』
『パパ、アイツって誰なの?』
『んー?あぁ、そういえば悠には会わせた事なかったね。パパの大事な弟だよ。』
『パパに弟なんていたんだ!どんな人なの?悠も会いたい』
『わかりにくいけど、いい奴なんだ。でも、今は……。』
『パパ?』
『気を使って会ってくれないんだよなぁ……。』
『きをつかう?』
『パパやママと悠の仲良ししてる時間を邪魔しないようにしてくれてるって事だよ。』
『へぇー……。良い人だけど、ちょっと変だね!悠は会ってみたいのに。』
『だろ?でもいい奴なんだ。今度連絡とって会いたがってるって伝えてみるね。』
『うん!』



悠はそこでゆっくりと目を開けた。
いつもの見慣れた白い天井をボウッと少しの間見つめた。
それからゆっくりと起き上がり、フフッと短く笑った。

「昔の夢見るなんて……。」

とっくに忘れて去っていた、遠い、温かな記憶。
それを夢で見るなんて初めての事だった。

「お父さんの、弟かぁ。」

起き上がって学校へ行く準備をしながらポツリと呟いた。
中学で児童保護施設を出て、高校に進学してからはバイトと勉強の両立の忙しさで過去を振り返る余裕も体力もなかった。

10年前に父親は交通事故死。その5年後、母親は————。

暗いその記憶に悠は顔をしかめた。
高校生活も1年もすれば慣れたもので、最近はようやく心の余裕が生まれてきた。体力もついてきた。
だからなのか、今朝は昔の記憶の夢を見た。
絡まった糸がほどけていくように、お父さんとお母さんとの記憶が鮮明に蘇った。
遊園地、水族館、動物園、海、山へ様々な場所へドライブしたこと、悪さをして叱られたこと、夏休みの自由研究を手伝ってくれたこと、誕生日の事————そして、お父さんの弟の事。

簡単な朝食を済ませた後、ぼろいアパートの家を出た。

お父さんは両親と折り合いが悪く、勘当も同然でお母さんと結婚したので、悠は父方の祖父母に会ったことがなかった。
話もたいして聞かなかった。幼心ながら、触れてはいけない事なのだと感じ自分から祖父母について質問することはなかった。
しかし、お父さんは唯一の理解者であるらしい弟の事はよく聞かされた覚えがある。
弟の事を話すときは、いつも楽しそうで、時には困った笑みを浮かべ、しかし誇らしげだった。

駅につき、ICカードで改札を通った。すると丁度、電車が現れてそれに乗り込んだ。

『ママは会ったことあるの?』
『何回かね。最初は……変な人って思ったけれど、だんだん私も好きになっていったわよ。パパの言う通り、良い奴だったわ。』

そう言ってお母さんも笑うのだった。
母方の祖父母は悠の生まれる前に他界し、父親とその両親のいざこざがあったため、悠は父方の祖父母や親戚には会ったことがなかった。
唯一の、父が気を許した弟。
名前も聞いたような気がするが、覚えていない。

会いたいなぁ。

朝の通勤通学ラッシュで満員電車で揺られながら、悠は自然にそう思った。

その時だった。

真後ろにかすかなハァハァと息をした音が聞こえた。
それはゆっくりと耳元に近づいてきて——————

「いつも……可愛いね……。」

スカートの上から身の毛のよだつような感触を悠は感じた。
その声はとても小さく、周りは電車の騒音で全く気付いてないようだった。

「高校生みたいだけど……はぁ……小学生みたいだね……。」

悠は冷静に次の駅名を目を動かすだけで確認をした。

『次はー…通り駅ー…通り駅ー……降り口は左側に変わります……。』

アナウンスが聞こえ、悠はふぅと呼吸をした。
相変わらずスカートの上からもぞもぞとした感触があった。

「ふふ……こ、声も出ないのかな……?いいんだよ、ハァ、声出しても……。」

『…通り駅です。降り口は左側です。お足もとにお気をつけて———……』

停車し、ドアが開くのを確認すると、悠は真後ろの痴漢男の手をひっつかみ駅に降り立った。
そのまま、えいやっと男を突き飛ばした。
男は盛大にしりもちをつき、ギョッとした目で制服を着た小学生のような少女を見つめた。
悠は男にたいし、盛大な睨みとドスのある声をきかせて言い放った。

「女がみんな弱いと思うなよ、ハゲ。」

クルリと背を向けて、悠は足早に人ごみに紛れた。

Re: 謎嫌い探偵の事件簿 ( No.2 )
日時: 2016/01/30 00:48
名前: 相楽 (ID: g1CGXsHm)
参照: さがら、と読みます。悠は、はる。


悠がようやく時計を見ると、夜の10時をとうに過ぎていた。

「はぁ……疲れたな。」

痴漢犯を撃退し、その後は通常通り学校、放課後は真っ直ぐバイト。
22時までの勤務を終えた帰路で、いつもの怒涛のような1日にホッと息をついた。
しかし、帰っても寝ておやすみではないのだ。
夕飯を食べて食器を片付けて、今日の授業の復習をしてからやっと眠りにつけるのだ。
両親が亡くなり、頼れる親戚もいない今は自力でなんとかしていくしかなかった。
週6のバイト、生活が厳しい時は許可を得て短期のアルバイトを更に掛け持ち。去年1度過労で倒れた事あったっけ、と目と鼻の先にある我が家を見ながら思い起こした。

思い出した。今朝の夢を。父親の弟の事を。

鍵穴に鍵を差し込み、家の中に入る。
そうだ、お父さんの弟。今の今まで忘れていた。
もし会えるなら会ってみたい。今朝の思いが同じようにして、悠の頭を巡った。

だが、どうやって調べればいいのだろう?

伝(つて)なんてない。
名前も……。

「あ。」

脱いだ制服をハンガーに通してクロゼットの取っ手にかけた。

『葵君、元気にしてるかしらね。』

どの場面かはわからない。
ただ、お母さんが言った言葉だけが脳内にポンッと現れた。

「お父さんの弟だから……瀬名葵?」

スマホを取り出して、試しに瀬名葵とうってみた。
もしSNSをやっているなら、ひょっとするとヒットするかもしれない。
しかし、検索結果は意外なものだった。
地名だったり、苗字、または名前部分だけのヒットもあったがその中に唯一ピタリと当てはまりそうなものがあった。

「平成の……ホームズ?」

タップして詳細を見ると、地元情報誌について感想を述べている誰かのブログだった。
その情報誌にかかれたお店がどうとか、色々と悠にとってはどうでもいい言葉がしばらく並んでいたので、少しばかり早く下へスクロールした。
すると、最後に数行、目的の事がかいてあった。

「この情報誌にのってるコラムの内容少し気になってしまいました……あらゆる事件を解決しながらも、手柄を全て警察に託し己は一切メディアに出てこない……まるで平成のホームズとかかれた瀬名葵さん、どういう人なんでしょうか……これから彼女(彼なんでしょうか?)の活躍に期待ですね……。いや、まさかそんな。」

画面を見ながら悠は、ははっと乾いた笑いをするも同姓同名及びこの情報誌が今住んでいる地元のものであることに、どうもひっかかってならなかった。
他にもヒットした検索結果を見てみるも、たいした情報は得られなかった。

「……葵おじさん、何者なんだろう。」

電源をオフにして、しばらく空を見つめてボウっと考え込んだ。
ひとまずはこの情報誌を手に入れこの目で確かめてから、コラムを書いたというライターさんに連絡するしかない。
そう決めると、よっこいしょと立ち上がり遅い夕飯の準備をした。

Re: 謎嫌い探偵の事件簿 ( No.3 )
日時: 2016/01/31 18:05
名前: 相楽 (ID: g1CGXsHm)


それからまもなく、悠はバイトからの帰り道のコンビニに寄るとその情報誌を見つけた。

「シャラン……か。」

誌名を読み上げてから手に取り、お会計を済ませた。
家に帰っていつものように夕飯の支度を済ませて、遅い夕食を食べながらパラパラとめくった。

「おっ」

すぐにそのコラムは悠の目に留まった。といっても、紙面の下の方に小さく何行か載っているだけだった。
ライターの名前もしっかりと印刷されていた。

「三橋加奈子……。」

どうやら、この女性ライターが市内で気になったものだったりオススメのものなどを細々と紹介するようなコーナーのようだった。
今月号のこのコーナーの題名は、平成のホームズ、と銘打っていた。

『平成のホームズ!

皆さんも一度ならテレビ、漫画、小説なので目や耳にしたことはあるでしょう。イギリス人作家が書き上げた推理小説の主人公、シャーロック・ホームズはこの世に現れてから100年以上も経つ今も世界中で愛されているキャラクターです。
しかし、彼はあくまで二次元の人であって、現実世界に生きるものではありません。
ですが、この私、以前妙な事件に巻き込まれたとき、見てしまったのです。平成のホームズを!
瞬時に全てを見抜く洞察力、不可解なパズルのピースをあっという間につなげてしまう推理力を兼ね備えたその人物はまさしく平成のホームズのよう!
その名も市内在住の瀬名葵さん。
今後も彼の活躍に期待です!=文 三橋加奈子』

悠はシャランの連絡先を探した。すぐに電話番号は見つかり、メモをした。
明日の朝、悠はこの人に連絡を取ろうと心に決めた。


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