コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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—+;*:近くて遠い距離;*:+—
日時: 2016/01/30 18:00
名前: 佳織* (ID: kI1tZ/UV)

:*;+ploroge+;*:




こんなにも
貴方を想っていても…



貴方は、 別の人を見てる———。



きっと、 貴方は知らない。












こんなにも  あたしが










貴方を   好きなこと。



+:*;目次:*;+

登場人物紹介>>1

@1:想い想われる恋。

第1話>>2 第2話>>3

Page:1 2



Re: —+;*:近くて遠い距離;*:+— ( No.2 )
日時: 2016/01/29 22:12
名前: 佳織* (ID: kI1tZ/UV)

#1:失恋と恋の予感。




好きだって 気がついた時には
いつも手遅れだった——。



*****************************************************************



「ずっと前から好きでした…よかったら、つき合ってください」

震えて小さくなっていた声を
必死に絞り出して…
やっと言えた、 人生初の告白。


———でも。


「———悪い。俺、可憐のこと…そういう風に思えない」



頭では分かっていた。
きっと、 こう返ってくること。




あたしは少しの間を開けた後
笑い飛ばしながら答えた。



「そっか…そうだよねっ!!あたしったら何言ってるんだろー」


胸が痛い、 苦しい。
今すぐ逃げ出したい。

そんなマイナスの感情ばかりがあたしの中で大きくなっていた。


「……ごめん」
「あっ…謝らないでよ。ぜんっぜん爽は悪くないしっ!!」

暗い表情で謝る爽に慌ててあたしはそう返した。
本当にやめてほしかった。

だって

そんな顔して謝られたら


余計に辛くなるじゃんか…。




「てか、謝るのあたしの方だし。……ごめんね困らせて。今の告白、忘れて——」




最後にボソッとそう言い残してあたしは
爽の横をすり抜けて二人っきりだった教室から出た。

爽はそんなあたしに何て言葉をかけたらいいのか分からず
黙ったまま、 その場に立ち尽くしたままだった。




教室の扉を閉めて
廊下を足早に駆けて…下駄箱へと向かった。




「ほんっと…バカだなぁ…あたし」



フラれるのは分かってたのに。
爽があたしなんかを好きなわけないって
分かってたのに。



なのに。






溢れる涙をあたしは止めることができなかった。




「っ…ヒック…」


声を殺して泣いていると。


「…どうしたの?」


突然、耳を差した声に。
あたしはビックリして振り返った。

そこにいたのは。




「何、泣いてんの?」



同じクラスの……如月琉生だった。
面識はあるけど、 こうして改めてお互いの顔を見ながら話すのは初めてっていう間柄だった。



「なっ…なんでもないからっ!!ごめん、 ヘンなところ見して。じゃあねっ!!!」

クラスメイトにこれ以上、泣いている所を見せたくなくってあたしはその場から逃げる様に走り去っていった。

その時。

勢いよく腕を掴まれた。



「……えっ……」


予想外の事に頭がついていけなくって。
あたしは唖然と立ち尽くしてしまった。

如月くんはゆっくりと口を開く。


「……よかったら、 これ使って」


それだけ言うと、如月くんはあたしの手の中にハンカチを入れた。


「じゃあな」


ハンカチを渡された。
ただ、それだけの事だったのに
あたしの鼓動はドキドキしっぱなしだった。


やだ、 何ときめいてるの?
あたし。



たった今、フラれたばっかりで
恋なんかしばらくいいってそんな状態だったのに。




なのに。












なんで、 こんなにも… 胸の高鳴りが抑えられないの??

Re: —+;*:近くて遠い距離;*:+— ( No.3 )
日時: 2016/01/30 17:53
名前: 佳織* (ID: kI1tZ/UV)

#2:心の内。





———君は、 いつだって
あたしの心を読み解いてくれる。





そんな人だったね———。



*****************************************************************




翌日。
すっかり泣き腫らした顔を鏡で見て
改めてひどい顏だと思った。

でも、 休むわけにもいかないので
あたしは家を出た。

「行ってきます…」


憂鬱な一日の始まりだ。




■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



駅から学校までのいつもと変わらない通学路をあたしは重い足取りで歩いていた。
その時。勢いよく後ろから声をかけられた。

「おっはよー!!可憐っ!!」

振り返ると。
そこには、満面の笑顔を浮かべた元気いっぱいの女子・水沢由美がいた。
由美は同じクラスで一番仲の良い友達。
気を使わないで気軽に話せる相手だ。

「由美っ!!おはよ」

なるべくいつも通りを装ってあたしも笑顔でそう返した。
———爽にフラれた。そのことを
あたしは何となく由美に話すことができなかった。

「そういやぁさぁ…もうすぐバレンタインだねっ」

由美に言われて気づく。
そっか。…あと、2週間ちょっとで、もうそんな時期なんだ。
爽にフラれる前だったら…きっともっと楽しみだったのになぁ。

「可憐はさぁ…誰かにあげないの??つーか、好きな人とかいないの??」

——好きな人。
今は振ってほしくなかった話題が来て。
あたしは思わず顔をしかめてしまった。

慌てていつもの調子で由美に返した。

「いっ…いないよーそんな人!!今年も友チョコとして由美に渡すしっ。後は乃衣にも渡そうかなー」

乃衣っていうのは、同じクラスで由美と同じく一番仲の良い子だ。
あたし達はいつも3人で行動している。
いわゆるいつものメンツ、略していつメンってやつだ。

「えー。可憐、可愛いのにもったいないなぁ。絶対可憐に告白されて断る人なんかいないのにー」

由美に悪気がないってことは知っている。
仕方ない。…だって、由美は
あたしが爽を好きだってことを知らなかったんだから。

…と、いうか

あたしが打ち明けられなかっただけ、 なんだ。




「……由美は??誰かにあげたりしないの??てか、由美こそ好きな人いるんじゃないの??」



さりげなく話題を変えた。
これ以上、あたしの好きな人の話を続けていたくなかったから。


由美は少しの間を開けた後。



頬を赤らめて答えた。




「———あー…わたしはいるよ??…好きな人」



一瞬、驚きのあまり声が出なかった。

え…由美…好きな人いるんだ。



「うっそ!!本当に!??いっ…いつの間に由美にそんな人が!??」
「あははっ…可憐、リアクションいいねー」

そりゃあ、驚くよ!!
だって、今まで恋愛になんか興味なさそうにしてた由美に好きな人ができるなんてっ!!
友人としては驚きだ。

「えっ…じゃあ、その人にあげるの??」
「うん…一応、手作りチョコで頑張って渡して…そんで告白しようかなって」

こっ…告白、だと!??

「すごい…由美ってば大胆…上手くいったら教えてね」
「当ったり前よー!!あっ…でもフラれた時はわたしのこと慰めてよ—」
「もうっ…由美ってば悪い冗談止めてね」
「あははっ…可憐も好きな人できたら教えてねー!!わたしと乃衣で全力で応援しちゃうから!!」
「……うん、ありがとう」

———応援する。
由美のその言葉に少しだけ胸の奥が痛んだ。



あたしは



もう、 とっくに












ずっと好きだった人に フラれてしまったから。













■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □








下駄箱へ着いた途端。

「おっ…如月ー!!今、朝練終わりかい??」

由美のその声にあたしは思わず肩がビクッと揺れた。
そういえば昨日…
如月くんに…泣いている所を見られていたんだっけ??

ヤバイ。

今、 その話題を振られたら———。


「水沢か…相変わらず今日も騒がしいな」
「なんとでも言えー!!もうすぐ試合だっけ??」
「まぁな…」

そこで如月くんとばっちり目が合ってしまった。
あたしは慌てて視線を逸らす。

「ごめん、由美。あたし…ちょっとトイレ寄ってから教室行くね」
「えっ…うん…またあとで」

なんとなく、 如月くんの顔を直視できなくて。
あたしは足早に教室へと向かった。



——だけど。




「———美園さん」



振り返ると。
後から走って追いかけてくる
如月くんがいた。


少しだけ息が弾んでいた。




「……何か、用??」




話したくなんかなかったから。
あの場から立ち去ったのに。




なんで…追いかけてなんかきたの??







「……昨日…もしかして、俺…余計だった??」





だけど、 如月くんが出した話は。






何で泣いてたのか、 じゃなかった。







てっきり、 昨日のことについて尋問されるかと思ったのに。
そうじゃなかったことに
あたしは驚きでいっぱいだった。






「もし…その…昨日の俺の気遣いが余計だったのなら謝るよ。ごめん」





如月くんのそんな優しさに。
あたしは零れ落ちそうになった涙を抑えながら答えた。




「ううんっ!!全然余慶なんかじゃないよ。むしろ…ありがとう。てか、ごめんね…なんか気を遣わせてしまって…それでっ…昨日泣いてたことなんだけど——」
「いいよ、無理して言わなくて。つーか、泣いてたこと…誰にも言ってねーから気にすんな」

あたしが言いかけたことに対して横から遮る如月くんの声。
あたしの心なんか見透かしているようで…

かなわない…そう思った。






「ありがとう…如月くん。ハンカチは後で洗って返すね」
「……別に洗わなくても」
「いいのっ!!せめてものお礼だから」
「……そっか。じゃあ、受け取っとく」





そう言って、如月くんは教室へと入って行った。
その背中を…

あたしは、 ただ…    見つめていた———。

Re: —+;*:近くて遠い距離;*:+— ( No.4 )
日時: 2016/01/31 22:35
名前: 佳織* (ID: .p4LCfuQ)

#3:幸せ。




君を幸せにできるのは
あたしじゃない。



だからこそ



あたしは君の幸せを願って
この想いを消すよ———。


***********************************************************



「ふーん…由美に好きな人、ねぇ」

由美は日直の仕事で先生に呼ばれていたため
乃衣と二人で由美の好きな人について
話していた。

乃衣は、いつものクールなスタイルで
淡々と言う。

「わたしは…何となくわかるけどね。由美の好きな人…」

そんな台詞にあたしは一瞬、開いた口がふさがらなかった。
乃衣は…気づいてるの??
由美の…好きな人。

「えぇっ!?乃衣わかんのっ!??」
「けっこう、由美の反応見てれば分かりやすいと思うけど??…まぁ、アイツは気づいてないと思うけどね」

乃衣の指しているアイツというのは
たぶん、由美の好きな人のことだろう。

「あたし…由美の友達のくせして全然分かんないや…」

あたしが項垂れていると
乃衣が優しい口調で言う。

「まー…由美のことだし、うまくいかなかった時のこと考えて言ってないだけだと思うから、うまくいけば教えてくれるっしょ!」

乃衣の言葉に。
あたしも笑顔で頷いた。

「うん…だよねっ!!」

由美の好きな人は気になるけど…。
今は余計な詮索はしないでうまくいくことだけを願っていよう。

由美に…



あたしと同じ辛い思いをさせないことを———。




「で??……可憐はいつ、爽に告るのかな??」
「ぶっ!!」

乃衣の突然の言葉にあたしは吹き出した。
なっ…なぜそれを!!!

「なーに驚いてるの??…バレバレだし」
「っ…もしかして、由美も気づいてるの??」
「……とっくに知ってるよ。…可憐が何も話してくれないってよくぼやいてたし」

そっかぁ…。
2人にはあたしの気持ちなんかとっくに…
バレてたんだ。

それなら




もう





何も… 隠すことなんかないや。






「———実は…昨日、告白してフラれたんだ」





そう言うと。
乃衣の表情が、さっと暗くなった。
そして下を向いたまま…無言になった。




「バカだよね、あたし。フラれること…分かってた。爽があたしなんか何とも想ってないってことも知ってたのに…」



自分で言って…また、涙が滲んできた。
本当にバカな自分が惨めで…嫌になる。

そのとき。

教室の閉まっていた扉が勢いよく開いて。
振り向くと。



瞳に涙をためた、 親友がいた。





その親友は足早にあたしのもとへ来て。
泣きじゃくるあたしを
強く抱き締めた。

それから、強い口調で言う。



「可憐のバカっ!!!…そんな辛いこと一人で抱えるな!!!…親友なんだから、相談してくれなきゃ寂しいよ…」

一緒にあたしのために泣いてくれる。
そんな由美が…すごく大切に思えた。
自分は1人じゃない。

そう思えたんだ。

「由美ぃー…ありがとぉー…」

由美の胸のなかで。
あたしは今まで我慢していた
爽への気持ちを涙と一緒に流した。



爽のことは… 本気で好きだった。
自分から好きになった、初めての人だった。
だからこそ…余計に辛かった。



———ひとしきり、泣いたあと。
あたしは全部、乃衣と由美に打ち明けた。
二人は真剣にあたしの話を聞いてくれた。

一通り話し終えると。

乃衣が口を開く。

「…可憐はさぁ…爽のこと、もう諦めんの??」

少し考えてから。
あたしは笑顔で答えた。

「実は…まだ、諦めきれてない。爽を好きっていう気持ちは変わってないけど…だけど、爽には好きな人と幸せになってほしいから、諦めることにする」
「それって…好きなのに諦めるってこと??」

由美にそう聞かれて。
あたしは頷いた。

「まー…可憐がそれでいいっていうなら、わたしは何も言わないけどね。でも——」
「でも??」

間をおいて。
乃衣はこう言ったんだ。



「———後悔は…しないようにね!!!」





その言葉が 何故か強く心を打たれた気がして。
あたしは大きく返事を返した。





「うんっ!!!…わかった」





あたしに、 この先
爽以上に好きだって思える人が来るかどうかは分からない。


分からないけど。



もし… 現れたら。
絶対に今度は





あたしが… その人を幸せにしたい———。

Re: —+;*:近くて遠い距離;*:+— ( No.5 )
日時: 2016/02/03 22:40
名前: 佳織* (ID: kI1tZ/UV)

#4:君の好きな人。





君とすれ違うたび、
君は…



あたしじゃない




別の人を見ていることに…気づいてしまった———。




*************************************************************



爽にフラれてから、早いもので1週間ほどが過ぎた。
クラスはすっかりバレンタインの雰囲気で浮足立っていた。
だけど、好きな人がいないあたしには
そんな行事…関係ないので
いつもの平日と変わらない…そんな日常を送っていた。


「乃衣はさぁ…バレンタイン、誰かにチョコ渡すの??」

お昼休み。
いつもの3人でお弁当を広げているとき、
何気なく由美が聞いた。

乃衣はいつものクールなスタイルであっさりと答えた。

「ああ…彼氏と兄貴にあげるよ」
「そっか…って、ええっ!!??彼氏!??」

あまりにもサラッと乃衣が答えるものだから
あたしと由美でビックリして聞き返してしまった。

「えっ…何よ、乃衣!!いつの間に彼氏なんかいたの!??」
「あれ??…言ってなかったけ??…クリスマスイブに告られてそっからつき合ってんだけど」
「全然聞いてないよー。言ってくれればよかったのにぃ」
「ごめんごめん」

まぁ…乃衣の容姿なら彼氏がいても不思議じゃないんだよなぁ。
目がぱっちりしてて、小顔で…しかも細いし。
羨ましいなぁ。

…あたしも告白されたい。

「で??乃衣の彼氏ってどんな人??」

身を乗り出してあたしも興味津々に聞いてみた。
乃衣はまたしても、淡々と答える。

「ああ…同じバイト先の2個上の大学1年生の先輩」
「ほぉ…年上かぁ」
「いいねー…大人の恋愛だぁ」

彼氏なしのあたしと由美でそう呟く。
独り身ってこんなに寂しいんだね。

「そんなに気になるなら…今日、バイトだし見に来る??」
「えっ!??何々!??行っていいの??」
「全然いいよ。…彼氏にも2人のこと、紹介したいと思ってたし。……あっ」

何かを思い出したかのように
乃衣はそっとあたしの方に顔を向けて。

小声でそっと教えてくれた。

「———あのさ…実はわたしのバイト先に…その…爽がいるんだけど…大丈夫??」

それを隣で聞いていた由美も
あたしに心配そうな表情を向けてきた。

そんな2人に向けて
あたしは笑顔で返した。

「———大丈夫っ。…心配してくれてありがと」

これは本当だった。
実際、クラスで毎日爽とは顔を合わしてるけど
もうお互いに普通に話せるぐらいにはなったし。
フラれた途端ほど辛い思いが消えたというのは本心だった。

「…そっか。ならいいんだ。よかった」
「じゃあ、放課後に下駄箱の前で」
「オッケー」




この時は乃衣の彼氏を見ることが本当に楽しみだった。






爽の…












好きな人を知るまでは。












■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □





「ほぉー…ここが乃衣のバイト先かぁ」

乃衣のバイト先は学校から徒歩で15分ぐらいのオシャレな喫茶店だった。
アンティークの時計など内装も可愛いお店だった。

「じゃあ、わたしバイトの制服に着替えてくるね」
「オッケーよー」
「開いてる席、適当に座ってていいから」
「りょうかーい」

そう言われてあたしと由美はカウンターから一番近い
4人席に座った。

「それにしても、乃衣のやつ…こんなオシャレなところでバイトしてたのかぁ…確かにこういう所ならイケメンとか働いてそうだしね」
「いやいや…乃衣はそんな下心でバイト先決めないっしょ」
「そっか…まぁそうだよね。乃衣は恋愛なんか興味ないって感じのスタイルだったし」

由美の言葉にあたしも深く頷いた。

乃衣は男の子とか恋とか…そういう話を自分からしたがらなかったし。
てっきり恋愛事に興味とかないんだと思ってたんだけど———。

「…ほんと、どんな人なんだろ。乃衣の彼氏———」
「ねぇ」

由美と何気ない話をしていたとき。
すぐ近くに背の高い。
すらっとしたイケメンの店員さんが立っていた。

髪は少し茶髪がかっていて。
切れ長の瞳があたしの顔をとらえていて。

不覚にも…
少し、 胸が高鳴ってしまった。

「あ…なっ…なに、か??」

由美も突然のイケメンさんが登場したことにより
軽くパニック状態に陥っている様子だ。

「君たちが乃衣の友達??」
「「は……??」」

と、いうことは。
もしかして。

この人が———。



「恋次…いきなり、話しかけちゃ駄目でしょ。2人ともビックリして固まっちゃってる」


そして後ろからバイトの制服姿の乃衣がなだめる様に話しかけていた。
やっぱり

この人が… 乃衣の彼氏さん??

「紹介するね。…この人がわたしの彼氏の倉吉恋次」
「どもっ。大学1年だよ。…いやぁさすが乃衣だな。友達も可愛い子じゃん」
「ちょっかい出さないでよー」
「何言ってんのー。俺がちょっかいかけるのは乃衣だけだから」
「あー…はいはい」

リアクションの薄い乃衣に
恋次さんは涙ながらに言う。

「何だよー…乃衣ってば本当に冷めすぎだろー」
「友達の前で恥ずかしげもなくそんなこと言うアンタが特殊なの」

2人を見ていると。
お互いにそんなことを言い合いながらも
何だか楽しそうで。




クールで大人っぽい乃衣が




すごく乙女に見えて…  可愛かった。





「乃衣…幸せそうだねっ」

耳打ちしてきた由美。
たぶん、由美も同じことを思っていたのだろう。

あたしは頷いて笑顔で言う。

「うんっ。よかった、彼氏さんと上手く言ってるぽいね」





その時だった。





カランと音が鳴って。
入り口の扉が開いた。





「あっ…おっせーよ、爽!!」




中に入ってきたのは。



息を弾ませている、 爽だった。



———平気。
そう分かっていても。
なんとなく目を合わせられなくて…


あたしはうつむいてしまった。



「……可憐」



小さな声で
心配そうに言う由美に。

あたしは罪悪感を感じてしまった。



「すみません。…委員会が長引いちゃって…」
「今日は俺と乃衣とお前だけなんだからなー」
「だからすみませんって言ってんでしょーが!!……つーか、それ…完全に俺、邪魔じゃないですか」

爽は2人がつき合っていることを知っているみたいだった。
乃衣の方に顔を向けると、真っ赤になってうつむいてしまっている。
乃衣が照れるなんてレアだな。


「本当は2人でいちゃついてたかったんじゃないっすか??」
「なっ…そんなわけねぇし!!バカな事、言ってんじゃねぇよ」
「そっ…そうだよ。恋次がそんな事考えるわけないし!!2人とも何か頼まないの??わたし、おごってあげるよ??」

乃衣がおごるって言うなんて。
よっぽど、取り乱してるなこれは———。


乃衣のお言葉に甘えて。
おごってもらおうと思い、
メニュー表に何気なく目を通して。
コーヒーを注文しようとしたとき。




乃衣の方を真剣に見つめている
爽が目に入ってしまった。











爽の瞳は…
明らかに他の女の子を見る目とは違っていて。











一瞬で分かってしまった。













爽は。






















———乃衣が…    好きなんだって事。

Re: —+;*:近くて遠い距離;*:+— ( No.6 )
日時: 2016/02/25 14:42
名前: 佳織* (ID: XrKlmz0K)

#5:行き場のない想い。






叶わない恋に区切りをつけたいとき。



貴方だったら、 どうしますか———??




■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■




「じゃあねっ。乃衣!!また遊びに行くわー」

ケーキセットを頂いた後、
あたしと由美はバイトの邪魔にならないように
帰ることにした。

「いいけど、わたしと恋次を冷やかしに来るのはやめてねー」
「あははっ…それはどーかなー」
「もうっ!!」

あたしは上の空の思いで二人の会話を聞いていた。
今は正直…乃衣と明るく話せる気分ではなかった。

爽の方にちらっと視線を向けた。
中の方で恋次さんと親しげに話している様子だ。

何、 話してるんだろう…。

「かーれんっ!!どしたの、ボーっとして」

お会計を終えた由美があたしの顔をそっと覗き込む。
あたしは慌てて首を横に振って笑顔で言う。

「ううんっ!!なんでもない。…乃衣、今日はありがとね」
「全然だよー。また今度おごらせて」
「じゃあ、また明日」
「うん」

そう言い終えて、お店から出た。
あたしと由美の二人だけの帰り道となった。

「それにしても、びっくりだよね。あの乃衣にイケメンの彼氏がいたとか!しかも年上だなんてー」
「ねっ。まぁ、乃衣は可愛いしねー」

だから…きっと
爽も




乃衣を好きになったんだろうなぁ…。






「可憐??…元気、 なくない??」
「えっ…いや、そんなことないって」
「可憐はそうやってすぐ、隠すからなぁ…言ってみ??なんかあったっしょ」


由美は…こういう時
やっぱり鋭いなぁ。



あたしは意を決して話すことにした。





「実は…さっき…注文しようとしたとき、爽が乃衣のことをじっと見てて…その視線がやけに真剣でさ…だから」
「ああ…爽が乃衣を好きなんじゃないかって?」
「そーゆーこと。…だから余計にへこんじゃって」

あたしがため息交じりにそう言うと
由美がそっと口を開いた。

「まぁ…なくはない話、かも」
「やっぱり由美もそう思ってた??」

由美は真顔でそっと首を縦に振った。

「アイツ…学校でもよく乃衣のこと見てたし。休み時間も二人でよく話してたし。正直、乃衣は爽が好きだって思ってたんだけど———」
「彼氏ができたし、乃衣にはその気持ちはなかったってことなんだよね」
「うーん…乃衣は基本男子とよく話すから分かんないんだよね」

そう。
乃衣は基本誰とでも話すから
好きな人に対しての態度とか分かりにくかったりする。
まぁ、今回の彼氏との関係を見て、
照れてる乃衣とか見れたし、気持ちに嘘をついているような感じはなかった。
つまり———。

爽の片想いってことなんだ。





「しっかし、そんなこと気にするなんて。まだ好き、なんだ??」


由美の言葉に。
少しだけ間をあけたあと。





あたしは自分の気持ちをたしかめるように
そっと頷いた。





由美はそれ以上は何も言わず。





「そっか」







それしか言わなかった。










叶わない。
諦めなくちゃいけない。





頭ではそう分かっているのに。







気持ちに整理はつかなくって———。














誰か、 教えてください。




















どうしたら     あの人を。


       忘れることができますか————??









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