コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 桜咲く
- 日時: 2016/02/01 17:49
- 名前: 蛇スミン 茶摘み (ID: gpPx10DG)
桜散る、とはまさにこの事だ。
中学生時代からの愛用ノートパソコンを見ながら、溜息をはく。
「…はあ。やっぱりか」
項垂れる先には、パソコン画面の不合格という文字が映し出されていた。
まあ、分かっていた事なのだが。そう思いながらパソコンを閉じる。
時計を見ると八時を指していた。そろそろ夕飯の時間だ。
「皐月ちゃーん!そろそろご飯よー!」
まるでタイミングを見計らったように言う母の声に少し驚きながらも、返事をして階段を下りて行く。
「はーい」
こうして、インフルエンザにかかりながらも第一志望の高校に合格するため、特別教室で試験を受け、あと一歩のところで合格を逃し、第二志望の私立桜坂女学園高等学校に入学する事になった榊 皐月(さかき さつき)は、家族団欒の場所へと足を運んだのであった。
こうなると中々言い出せない。どのタイミングで報告すれば良いんだ?
報告内容は合格発表と言っても、自分の場合は不合格発表だ。残念がるに違いない。そう思うとやっぱり言うのは気が引ける。
いや、うじうじ考えても仕方ない。ここははっきり言おう。
「母さん。第一志望の高校の合格発表見たんだけど…不合格でした。すみません」
母さんや他の皆の反応が怖くて、最後の方は敬語になってしまった。
「えっ?あらそうなの?ていうか謝らなくて良いわよ!皐月ちゃん行くって聞かないから行かせたけどお母さん本望じゃなかったんだから!
…これからは無理しない事。良い?」
と母。最後は若干話が逸れていたが、娘を心配する姿は母親だな、と実感させる。
「うん。ありがとう」
兄達も何か言っていたが、あえてスルーしておく。
「「無視しないで!!」」
「ぷっ」
いつ聞いても見事なハモりっぷりだ。実はこれを聞くために兄達の話をスルーする時があったりする。今はどっちが先に皐月に話しかけるかで争っているようだ。
争う必要あるか?それ。そう思いながら食事を再開する。
桜坂女学園の場所どこだったかなーと思いながら。
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- ありがとう ( No.1 )
- 日時: 2016/02/01 17:52
- 名前: 蛇スミン 茶摘み (ID: gpPx10DG)
「そういえば、皐月ちゃん高校は第二志望のところにするの?」
第一志望校の不合格発表をした次の日の朝、ふと母が聞いてきた。
「うん。そうするつもり」
「そう。確か第二志望校も女子高だったわよね?良かったじゃない。男の子がいなくて」
そう、問題点はそこなのだ。皐月は男性恐怖症、とまではいかないが男性がちょっと、いやかなり苦手である。理由は皐月が世に言う美人であったため、小さい頃からよく男子にからかわれてちょっとしたトラウマになってしまったからだ。
問題点というのは私立桜坂女学園高等学校、略して桜高の隣にある学校が男子校という事である。
男性が苦手な皐月にとっては、何それ拷問?と言いたいほどキツい状況下にある。もしも帰る時間が一緒だったら、なんて考えたくもない。
油断していた。まさかインフルエンザにかかるとは。第一志望校はA判定だったのに。と、今思い出しても言いようの無い悔しさがこみ上げてくる。
「部活は入るの?ていうか言葉使いは気をつけなきゃダメよ。女の子なんだから」
皐月は言葉使いが荒くは無いが、男口調だ。こんなに女性らしい母親をもったというのにと、それは今でも謎だ。大方兄達の所為だろうが。
「部活は入るよ。中学から続けてるし。口調は直せたら直すけど…まあ後々ね」
直せたら直す、というのは本当の事だ。直す努力をするのは精々三十秒から一分くらいだが。それよりも皐月は赤面症について悩んでいた。家族は全然平気なのに初対面の人や、ましてや男の人なんて百パーセント発症してしまう自信がある。
特にイケメン、世に言う美男子は直視出来ない。美少女ならまだ大丈夫なのだが。やっぱり同姓だと安心出来るのか?と思う。おかげで中学生時代の男友達は、地味な人しか出来なかった。正確に言えば作らなかったと言ったほうが正しい。何か地味な人と一緒に居たほうが安心出来るんだよな。
「皐月!変な人が居たらすぐ教えてね!お兄ちゃん達でそいつ潰すから!」
「そうだぞ皐月!何か困った事あったらすぐ言えよ!特に桜高の隣の男子校の奴とか奴とか!」
おいおいどっから出てきた。そして急に出て来て物騒な事を言わないでほしい。奴とかって二回言ってるけど結局隣の男子校の事だし。
過保護もここまでくるとこっちが心配になってくる。でもまあ、
「ありがとう」
お礼くらいは言わなきゃだよな。
- new friend ( No.2 )
- 日時: 2016/02/02 21:07
- 名前: 蛇スミン 茶摘み (ID: gpPx10DG)
あれから兄達にお礼を言ったら泣かれた。そんなに嬉しかったんだろうか。最近スルーしすぎたかな?毎日は無理だけど、時々は優しくしてやろう。
あれから三週間弱。今日は桜高の入学式だ。おかげで昨日は全く眠れなかった。
そして、今まさに『私立桜坂女学園高等学校』と書かれた門の前にいる。 ついに来てしまった。…というか、
「隣の男子校近くないか?」
今桜高に来て一番に思った事がこれだ。他にも校舎が城みたいにデカいのと中庭が異様に広いのが気になるが。それよりもこれだ。何故こんなに近いんだ?
確かに、桜高の隣に男子校が在るのは知っていた。でも!でも!こんなに近いなんて聞いてない!
「こんな事なら見学くらいしとけば良かった…」
浮かれて第一志望の事しか考えていなかった自分を殴りたい。
ああ、私のハッピーライフが崩れていく音がする。
「あのっ、新入生の方ですよね?」
「あ、はい。そうです」
一人で絶望に浸かっていると、後ろから声が掛けられた。新入生か聞いてきたって事はこの子も新入生か?
「良かった〜。私もそうなんですけど知ってる人いなくて。」
あ、やっぱり。
「私もなんで大丈夫ですよ。入学式って緊張しますよね。友達一人もいないと心細いし」
実際、私も少しホッとしている。一人でも知っている人がいると落ち着くものだ。
あれからクラス表を見に行った。お互い自己紹介をし合って、相手は佐々木 凛(ささき りん)と名乗った。そして呼び捨てで呼び合う事になったので、ありがたく呼ばせてもらっている。
「皐月!クラス一緒だよ!」
「マジで?すごいな本当だ」
タメ口でも良いという事だったので今はそうだが、最初にタメ口で話した時は初めに会った時とのギャップが凄いと驚かれた。その後にカッコイイとも言われたが、よく意味が分からなかった。
「もー、反応薄ーい!」
そう言って頬を膨らます凛は、結構な美少女だ。初めて会った時も思ったが。男子校の奴に何かされないだろうか。と私が言うと、凛は私は大丈夫だけど皐月が危ないから私が守るね!と、何ともまあ男らしい発言をしてくれた。凛には私は男性が苦手だという事は言ってあるので、その時同時に凛は私が守ろうと思った事は内緒にしようと思う。
クラスは一年C組だったので、今はそこを目指して歩いている。
「あっ!あった!わ〜もう結構人いるよ」
凛が言ったとおり、思ったよりも人がいた。
「本当だ。じゃ、入ろ」
後ろで、えっもう!?と言って騒いでいる凛を置いて教室に入る。緊張する理由が男子なら分からなくもないが、ここは女子高だ。私の場合は緊張する理由が見つからない。強いて言うなら凛以外は全員知らない人だという事くらいか。
私達が教室に入ると、騒がしさがより一層増す。煩い。そういう気持ちをこめて少し眉を寄せると、少し静かになった。うん、そういう所がいいよな、女の子って。ちゃんと空気が読めてる。男子の場合はもっと煩くなるだけだ。その根拠は私の実際の経験から来ているので間違い無い。
そんな事を考えている内に、もうすでに凛は他の人達と打ち解けていた。凄いな、凛は。そう思いながら凛を見る。
「皐月!皐月もこっち来て!」
えっ私も?と思いながらも返事をして凛の方へ向かう。
「はいはい」
凛と一緒に話していた子達は凄く良い子で、私でもすぐに馴染める事が出来た。
それから少ししてから担任が来て、入学式を行うために体育館へ向かった。
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