コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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偽りと解放 〜真実を求め汝は彷徨うか〜
日時: 2016/02/06 22:01
名前: リリディム (ID: I.inwBVK)

過去、誰しもが力を求めた時代……力を求め、力を得た先に【偽りの世界】が出来ていた。

『僕』は誓う。 【偽りの世界】の解放。
『彼女』と共に本当の未来を掴み、数多の苦難を乗り越えると……−−



当作品はオリジナルで、暇を見つけて投稿する為亀更新です。
なるべくは控えますが、この作品ではファンタジー系列でありながら現実味を帯びた内容、若しくは全年齢対応に相応しくない内容を使う可能性もあるので、それも踏まえて御理解の元宜しくお願いします。

【能力】一覧
・【火焔】 読み:プロミネンス 初登場:>>2
火を発生させる【能力】。 使いこなせば、辺り一面を火の海にする事も出来る。

・【獣使い】 読み:テイマー 初登場:>>4
魚や鳥、獣を操る【能力】。 人を操る事は不可能。

・【毘沙門天】 読み:ビシャモンテン 初登場:>>3
己に怪力や鉄壁、無尽蔵の体力といった肉体強化を施し、如何なる【能力】を打ち砕く【能力】殺しの【能力】。 希少な【能力】であり、肉体強化型で最高峰の【能力】だと言える。

・【韋駄天】 読み:イダテン 初登場:>>4
『速さ』に特化した【能力】であり、更に秘められた力がある。 ※後に全容が明らかになる

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Re: 偽りと解放 〜真実を求め汝は彷徨うか〜 ( No.1 )
日時: 2016/02/03 20:51
名前: リリディム (ID: 6k7YX5tj)

「もし瞬間移動があれば、学校に遅刻せずに余裕をもって来られる」
「もし不老不死なら、何時までも楽しめる」

そんな他愛もないものから。

「もし念動力が使えたら、溺れていた猫を助けられた」
「もし自由に武器を生み出せたら、憎い奴を殺したい」

人の生死を分けるものまで。 それを人は纏めて【能力】と呼んだ。
漫画や小説、アニメ等でも主人公が能力を駆使して戦ったり、人助けしたりというものがある。 生きし者なら必ずやこの【能力】を求める。

では、その【能力】を実際に手に入れた場合は如何なるか?
【能力】を手に入れた事によって、人は如何変わったのか、それは此れから知る事だろう。



【第1章 偽りの世界の小さき者】
「……」
高度経済成長とはよく言うが、車や電車等は車輪を失った代わりにホバリング移動をし、田園風景が見えていた所も既に高層ビルが立ち並ぶ世界。
日本やアメリカ等と、海を隔てて世界が其々区切られていた時代は、我々が知るパンゲア大陸が如く陸地が合併した時代となっていた。
……いや、合併と言っても自然と大陸同士が繋がったわけではない。
あり得ない話だが、この陸地は人工的に造られ、それが各国を物理的に結び付けたのだ。
当然ながら、これは科学的には不可能の域を脱する事は不可能。 されど、前述の通り【能力】がある世界だ。 【能力】を駆使する事により、不可能を可能にした。

【アルマーゼノン】。 それがこの大陸の名だ。
アルマーゼノンに生きる者達は皆【能力】を持っている。 当然ながら、この『僕自身』も持っている。
「……表面上は平和になっても、いざ裏の方を見れば、腐敗した弱肉強食の世界が広がっている」

そう。 【能力】は素晴らしい力であると同時に、相手を傷付ける謂わば危険な代物だ。
【能力】を悪用し、嘗ては辛酸を舐めていた者は道を外し、表に立てぬ者は更に凶悪となった。
故に、僕はこの世界を好いていなかった。

Re: 偽りと解放 〜真実を求め汝は彷徨うか〜 ( No.2 )
日時: 2016/02/04 19:56
名前: リリディム (ID: vJF2azik)

子供達が笑いながら追いかけっこをし、道行く人々がすれ違う様を見続けながら、僕は街を歩き続けた。
【能力】がなかった時代と大差ない光景であろう。 しかし、【能力】の存在が全てを台無しにしていると思うと非常に残念で仕方なかった。
「……この世界が壊れてしまえば良いのに」
ふと、そんな事を呟いていた。 何とも不謹慎な言葉であったと頬を掻きながら、僕はふと空を見上げた。

瞬間。

ヒュゥゥーン……
「……え?」
突如飛来してきた火球。
僕は其れを呆然と眺め、人々はその火球に気付くと一目散に逃げ出した。

だが、遅かった。

炸裂する閃光。 舐め回す熱。 僕は【能力】の恩恵によって耐えたが、【能力】を使わなかった哀れな逃亡者達は一瞬で炭へと変わった。

黒炭となった人々、燃やされ崩れ落ちる高層ビル群。 先程迄聞こえた子供達の元気な声も、人々が行き交う騒音も、たった一撃の火球で無と成り果てた。
「……何が……起こった……?」
僕は頭の中が真っ白になり、近づく人影に気付けなかった。
「へえ? オレの【火焔】(プロミネンス)を受けて五体満足だなんて、余程良い【能力】持ってんだな?」
「ふむ……上手く調教すれば、素晴らしい戦力になると思いますね」
片やチンピラ、片や紳士風の男達が何か言っているが、そんな事は如何でも良い。
「……何故……?」
「うん?」
「何故……街を、人をこんな風にした!?」
最早街とは言えない、荒廃した地にて、チンピラは鼻で笑うと、何やら高慢的に話し始めた。
「オレ達はこの世界を牛耳る為に、戦力になる奴を探してるんだよ。 そんで、折角【能力】を持ってるし、多少手加減したオレの技で試験してやっただけよ」
「更に言うならば、私達は人も探しているのですよ、態々一人一人探すよりも、敢えて一掃してからの方が楽に探せますからねえ」
「ッ!」
紳士の言葉を聞き、僕は思わず紳士の胸倉を掴んで地面に叩きつけていた。
「そんな事で、此処の人達は殺されたのか!?」
「少し落ち着きなさい……」
「落ち着けるか! お前達の所為で、街は何も残っていないんだぞ!?」
怒り任せに揺さ振ると、今度はチンピラが不愉快そうな顔になり、胸倉を掴んでいた手を蹴り払った。
「お前ウゼェよ? 全員が同じ考えじゃねえのに、勝手な事を押し付けんじゃねえよ!」
「ゴホッ!?」
思いっきり腹を蹴られ、僕は飛んだ。
そして、紳士が立ち上がりながら服の埃を払うと、何処からか鞭を取り出した。
「これは痛みつけないと、言う事を聞きそうにないですねえ?」
「おーおー、鞭でしばくとか怖え怖え……オイガキ、今の内に大人しく謝ったほうが良いぞー?」
「誰が……お前達なんかに謝るか……ッ!」
鋭く睨みつけると、紳士は無表情で鞭を振るい、嘆息した。
「やれやれ……私達の恐ろしさを、その身に刻み込まねばいけませんねえ!」
「ッ!」
やられる。 そう思って咄嗟に守る態勢に入った。

……しかし、何時まで経っても鞭が来ない。 不審に思い、態勢を解くと……

「ふむ……一人相手に、二人ががりで襲うとは卑怯な奴等だな?」
「「「なっ!?」」」
何処から現れたか分からない、謎の老人が右手一つで受け止めていた。

Re: 偽りと解放 〜真実を求め汝は彷徨うか〜 ( No.3 )
日時: 2016/02/05 20:41
名前: リリディム (ID: UcGDDbHP)

「貴方は何者ですか……?」
紳士は老人に問いながら鞭を離させようとするが、全く動かない。
老人はふむ、と顎に手を添えると、自己紹介を始める事にした。
「我が名は『龍燈』……つい先刻、この街に着いた旅人である」
「旅人だと? ……いきなり現れて、しかも馬鹿みたいな力持ってる爺さんが旅人ってだけで済むかよ?」
苦笑いで少し退くチンピラ。 その時にトン、と誰かにぶつかった。
「「「……!?」」」
チンピラがぶつかった先には、明らかに身の丈に合わない大槍を担ぐ、目元まで帽子を被る男がいたのだ。
「馬鹿な!? この老人といい、この男といい……何処の者ですか!?」
「俺や龍燈は【能力】持ちの旅人って以外、身分はねえ……」
「ただ、困った者には手を差し伸べ、悪業を行う者には制裁を加える程度の者だがな」
男は悪どい笑みを浮かべながら、龍燈は淡々と事務的に語る。
(こ、この人達は……あのチンピラや紳士よりも、遥か高みの存在だ!?)
僕は二人が放つプレッシャーに飲まれかけたが、突如後ろに現れた龍燈と名乗る老人に肩を優しく叩かれた。
「飲まれるな少年。 飲まれたら死ぬぞ」
「つっても、テメェにゃ圧かけちゃいねえけどな」
ゲラゲラと笑いながら帽子を被る男が笑う。 そして、その男の顔に……火球が当たった。
「!?」
「へっ! 隙だらけなんだよバーカ! とっとと燃え尽きて死ね!」
チンピラは攻撃が当たった事で調子を取り戻した、しかし、紳士は違う反応をしていた。
「いや……あの攻撃は……『あの程度』では駄目です!」

「痛えだろゴルァ!」
「ガッ!?」
思いっきり振り抜かれた大槍の薙ぎ払い。 ただの薙ぎ払いでチンピラは遠くの燃え尽きたビル一つを貫通し、もう一つのビルの壁をぶち抜いて気絶した。
「ガ……ハァ……」
「何という怪力!? これが貴方の【能力】ですか!?」
紳士が戦慄し、男が未だ笑みを崩さずに向き直る。 今度はプレッシャーだけではない……明確な『殺意』をも織り交ぜた圧をかけていた。

「名乗ってやるよ……俺は『零無』、【能力】の名は【毘沙門天】(ビシャモンテン)……武器を持っている間、如何なる【能力】の恩恵を無視し、圧倒的武力を翳す【能力】殺しの【能力】だ、宜しくな」
男、零無はより一層黒い笑みを浮かべた。

Re: 偽りと解放 〜真実を求め汝は彷徨うか〜 ( No.4 )
日時: 2016/02/06 21:57
名前: リリディム (ID: I.inwBVK)

「くっ……!」
紳士は急いで零無から離れると、手にした鞭をピシッと鳴らした。
「現われなさい! 私の愛らしい獣達よ!」
グルルルと、肉食の獣の声が聞こえる。 紳士が呼び出したのは百獣の王・ライオン。
龍燈はほう、と声を漏らすと、何の【能力】か考え始めた。
「獣を操る【能力】か……確か、【獣使い】(テイマー)と呼ばれる【能力】があったな」
「その通り……私の【能力】なら、百獣の王すらも忠実なペットになるのです」
紳士はもう一度鞭を鳴らすと、ライオンに命令を下した。
「行くのです! 先ずは其処の老人から引き裂きなさい!」
「おーおー、龍燈。 テメェ嘗められてんぞ?」
「強ち間違いではないがのう……」
苦笑しながら、正面から突っ込んでくるライオン。 何処からか現れて紳士の鞭を止めたり、一瞬で僕の後ろに回るのだ。 きっと避けられるだろう攻撃。

だが龍燈は……避けずに立っていた。
「!? な、何で立ち止まっているんだ!?」
「いや……」
龍燈は懐から煙管を取り出し、丸めた刻み煙草に火を着け、紫煙を燻らす。 一つ煙を吐いた後、ゆっくりと爪を立てて腕を振り下ろすライオンを睨みつけた。

「この程度の攻撃……我の10秒よりも遅い」
刹那、ライオンの身体が無惨に細切れと化した。
「何!? 馬鹿な!?」
「我が爪『黒揚羽』……『死の象徴』を意味するこの黒き羽が如し爪は、凡ゆる生命の命を奪い去る」
ライオンの血を浴びて尚も崩れぬ表情。 そして、光の込もらぬ金の瞳が紳士を見定めた。

「失敬。 我の【能力】は【韋駄天】(イダテン)と申す。 移動速度も攻撃速度も……『速さ』については他の追随を許さん」
【毘沙門天】に【韋駄天】。 二つもの最強クラスの【能力】を見せられた紳士はただ、膝から崩れ落ちるしか出来なかった。

「では、吐いてもらおうか、御主の背後の組織……そして、その目的をな」
首元に大槍の刃、心臓を貫ける位置に黒揚羽を向けられ、紳士はただ己の知る範囲で答える事しか出来なかった。


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