コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 恋、世界征服、ティーンエイジ。
- 日時: 2016/02/09 12:51
- 名前: miki (ID: I36i1trF)
連作にするつもり。
受験生のため更新遅し。
読んでくださったら幸いです。
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- Re: 恋、世界征服、ティーンエイジ。 ( No.1 )
- 日時: 2016/02/09 13:18
- 名前: miki (ID: I36i1trF)
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大人の世界ってやっぱり学歴とかそういうもんで決まるらしい。でも俺たち高校生の世界はやっぱり多少馬鹿でも、球技ができたり顔が整ってれば生きていける。クラスの一番上にいれば、面倒ごとには関わらなくて済むし、毎日を楽しく生きていける気がする。俺は大体のだるいことを避けて、眠れる時は眠って、そんな感じで16年間生きてきた。循環していく高校生社会を、ただ勉強をして正しく生きていこうとするやつは大体みんな、童貞のままつまらなく生きてそのまま死ぬんだって。だから俺はこんな楽観主義なわけだ。
「先輩、」
いつものように自販機に行こうとすると、後ろから女子の声がした。振り向けば下級生の女子で、スリッパの色を見るに2年生だろう。それにしても短いスカートで。こんなに足出して寒くないんだろうか。
「何?」
俺がそう言うと、真っ赤になりながら後ろに隠していたものを俺に押し付けた。見れば、調理実習で作ったであろうクッキー。ハート型で、焼きたての甘いにおいがした。
「2年、3組の金崎はるです、よかったら食べてください、」
「ありがとう」
俺がそう言うと彼女は真っ赤な顔で走っていった。ほらな、やっぱり顔がいいとこういう場面に遭遇する。クッキーはありがたく受け取っておくが、残念なことに俺には彼女がいる。けれどそのことを、学校で知らないやつはほとんどいないはずだ。それを知りながら渡してきたのだろう。彼女がいてもいいファン感覚で、だからきっとそんなくらいの気持ちのクッキーだ。
「ほんっとモテるよなあー、いいねえ勇介は」
「んなことねーよ、つか宏樹もモテんだろ」
宏樹だけじゃない。俺のまわりにいる男子みんな、誰かの憧れの先輩で、学年で何番目かにかわいい、とか言われる女子と付き合っていて。その彼女らは大体バドとかダンスとかチア部とかそういうかわいい部活に入っている。高校生なんて大体そんなんだ。似たやつは似たやつで集まって、集団でモテるんだから。
- Re: 恋、世界征服、ティーンエイジ。 ( No.2 )
- 日時: 2016/02/11 01:21
- 名前: miki (ID: I36i1trF)
教室に戻ると、クッキーを持っている俺に注目が集まる。2年の女子にもらってんだぜ、こいつ、なんて宏樹がにやにやしながら周りの奴らに話しているのを右耳で聞きながら、俺は留められているその金色をくるくると回して袋を開けた。すると。
「ゆーうすけっ」
「ん、なに、彩乃」
後ろから抱きつかれて、クッキーに手を伸ばす手を止める。彩乃はピンク色の唇で、俺の耳元で甘ったるい声を出す。
「それ、なにー?」
「2年の女子にもらった」
「え、誰その子。かわいかった?」
「まあまあ。はるちゃんって言ったかな」
何下の名前だけ覚えてんのよっ、と彩乃は俺を小突いた。ゆるく巻かれたロングの髪の毛が、俺の頬に触れる。俺は彩乃の自分の体から離れさせながら、別にいいじゃん、と笑う。
彩乃はたぶん、うちのクラスで一番可愛い。それで俺はたぶん一番かっこいい。こういう女とこういう男は付き合うもんですよー、と言わんばかりに彩乃は俺に告白してきたし、俺は断る理由もないから付き合った。でも彩乃はきっと俺に振られていたとしても、ほかのかっこいい男と付き合っていただろう。多分俺じゃなくてもいい。ただ彩乃のそばの男で、俺が一番かっこよかったってだけの話。
だから俺も彩乃じゃなくていい。彩乃のことは好きだけど、彩乃はそんな漫画で見るような一生の恋の相手じゃない。可愛くて、足が細くて、チア部で、クラスでは中心的グループにいて。ピーチの香りがするリップを塗って、長い髪をゆるりと巻いて、スカートをひざ上まで上げていても誰も何も言わない、彼女がそうすることを当然であるかのようにみんな受け入れる。可愛い女子の特権をすべて手に入れているような女の子。そんなお姫様みたいな女の子が彼女だってことが、俺にとって都合のいいことだし、幸せだから、それでいい。
- Re: 恋、世界征服、ティーンエイジ。 ( No.3 )
- 日時: 2016/02/11 01:51
- 名前: miki (ID: I36i1trF)
放課後、バスケ部の練習に行くために宏樹と体育館までの道を歩く。俺たちのグループは、俺と宏樹のバスケ部2人、ダンス部の将太とバレ−部の康哉って感じで、みんな部活をやっている。
「勇介さん」
カッターシャツを脱ぎながら、俺はどうした、と答える。
「勇介さん今日、金崎にクッキー渡されたんですよね」
教室で席近いんで、女子が話してるのすっげー聞こえるんすよー、と涼太は笑いながら言う。涼太もたしか2年3組だったな、と彼女の声を思い出しながら思う。
「でも俺彼女いるし」
「そうっすよねー。有名っすもんね、でも金崎も知ってますよ」
「だろうな」
涼太とそんな話をしていると、練習着に着替え終わった。そのまま俺は部活をして、そのまま俺は体育館の前で待っている彩乃と一緒に帰る、はずだったんだけど。
届いたメッセージには、『ごめん勇介。美咲が彼氏と別れたらしいから、優たちと慰めにカラオケ行ってくるね』とゴメンのスタンプ。俺は了解、とOKというスタンプを送信して、携帯を閉じた。そしてそのまま一人でバス停まで歩いていると、後ろから声をかけられる。
「沢田じゃん、あれ、菊池はいねーの?」
「港。彩乃は今日は岡田の慰めカラオケだってよ」
「あー、桑田別れたっつってたなー。まあ桑田だしよ」
まあな、と笑いながらバスを待っていると、港せんぱいーと港と同じ軽音の後輩らしき女子2人が俺たち、まあ厳密には港に近づいてきた。あれ、右の女子って。
「あ、沢田先輩、」
やっぱり、金崎だ。
「おう、金崎だっけ」
「覚えててくれたんですか」
「俺もそこまで冷たくねーし。クッキーありがと」
はい、とうれしそうに俯く彼女。そして不覚にも可愛いと思ってしまう俺。彩乃とは違う可愛さだなー。
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