コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました！使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例）鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ひかれ、ぼくの流れ星
- 日時： 2016/02/25 17:03
- 名前： いるみ （ID: iPZN8Dy0）
いるみと申します。初めまして。
前々から書いてみたいと思ってたものに手を付けてみました。
読み返してみると誤字が結構ありました。
見つけ次第、ご指摘頂ければと思います；；
その他、感想も頂けますと励みになるので、お時間よろしければお願い致します。
＊＊＊
※以下、簡単なあらすじもどきです。
天使のトパーズは、アークエンジェルとなるため昇級を掛けた試験に挑む。
試験内容は下界に降り、願いを持つ対象者を見つけ願いを叶えること。
願いを叶えた回数ではなく、それぞれの内容を吟味した上で合否が下される。
下界に降りたトパーズは、候補者の一人（対象者）である市川美鶴に出会う。
しかし、彼の願いはそう簡単に叶えられるものでは無かった。
＊＊＊
※以下、申し訳程度の人物紹介。
トパーズ
アークエンジェルを多く排出してきた名家の息子で、天使と人間のハーフ。
左の翼が無いのは生まれつき。よって飛ぶことができない。お陰で足がとても速い。
無口だけど面倒見が良くお人好し。とある特別な力を持っている。
市川 美鶴（いちかわ みつる）
候補者の中で一番最初にトパーズと出会う。
クソ真面目で勤勉。堅物な優等生だが周囲には苦手視されている。
実は超金持ちのお坊ちゃん。かなりの甘党でお菓子を常備している。
願い事の関係で、トパーズと行動を共にすることに。
真宮 千影（まみや ちかげ）
美鶴の幼馴染。候補者の一人だが願いを叶えることは望んでいない様子。
千影は美鶴を友人と呼んでいる（美鶴は全力で否定している）。
心優しい性格と爽やかな顔のお陰でたいそうモテる。
ちょっとした秘密を抱えているらしい。
＊＊＊
目次
>>1 市川美鶴編
Page:1 2
- Re: ひかれ、ぼくの流れ星 ( No.1 )
- 日時： 2016/02/24 09:14
- 名前： いるみ （ID: iPZN8Dy0）
軽い荷物を抱え資料を手に持ち、騒がしい街を歩く。
下界って、こんなに発展していたのか。上界と違って魔力の流れを感じないから、多分発展せざるを得なかったんだろう。
（誰にも俺の姿は見えてない。ぶつかる事もないから羽も仕舞わなくていい。……楽だな）
内心ラッキーだなんて思いつつ、どうせ自分には片方しか翼がない事を思い出しちょっとめげそうになった。
気を紛らすべく、手元の資料をぱらぱらと捲る。
無駄に分厚いそれは、候補者達一人一人についての資料だ。
地域別で別れていて、それなりに見やすくなっている。
当然、全員の願いを叶えなくちゃいけない訳じゃない。そんなんだったら過労死する。
問題は、この中からどんな願いを叶え、どれほど自分の力を出し切れるか、だ。
でも候補者を選別したりはしたくないから、見つけた順に願いを叶えていくつもりだ。
その時。
「うわっ！？」
俺から見て右の背後から、驚いたような声と何かが落ちる音がした。
慌てて振り返り手を差し伸べようとするが、自分は人間に見えていない事を思い出す。
（……ん？じゃあなんでこいつ、俺にぶつかったんだ……？）
「痛た……、ぶつかってすみません。でも、そんなコスプレして街を歩かないで頂けますか」
やっぱり少年は、俺の目を見て言っていた。
コスプレじゃないとかそういうツッコミはすべて捨て置いて、俺は少年の手を取る。
「今、ちょっと話、いいか？」
「はあ？……嫌ですね。俺これから用事がありますし」
「少しでいい。手間は取らせない」
まだ何か言いたげな少年の手を引っ張り、とりあえず来た道を戻った。確か人の少ない公園があった筈だ。
まさかこんなに早く対象者が見つかるなんて思わなった。話についてきていない少年はまだ後ろでぎゃーぎゃー言っていたが、とりあえず無視した。
- Re: ひかれ、ぼくの流れ星 ( No.2 )
- 日時： 2016/02/24 15:58
- 名前： いるみ （ID: iPZN8Dy0）
候補者を見極める術は二つある。
一つ目。受験者である俺を見て、触れることができるかどうか。
ぶっちゃけた所これが一番楽だ。資料なんていらない、翼を生やした異様な俺に気が付くことができた人。それこそが候補者なのである。
そして二つ目。これは当たり前の話だが、資料と候補者を見比べ名前や外見を合致させること。これは主に候補者を選別する場合に行うので、俺にはあまり関係ない。
彼の場合は前者だ。誰も俺のことを気に留めない、或いはすり抜けていく中、彼は俺にぶつかり、そして目を見て声を掛けた。
「あの、手を離して頂けますか、……聞いてるんですか貴方！」
後ろで未だに騒いでいる彼は知る由もない。俺の姿を確認出来ない人間達にとってその姿が如何に異様なものとして映るのか。
それではあまりに可哀想なので、ゆっくり話をする場所として人の少ない公園を選んだ。
否、少ないというよりは、人の居ない公園を選んだ。
自販機の横のベンチまで彼を引っ張り腰掛ける。肩で息をする彼もベンチに座るよう促した。
「……なんなんですか、貴方！」
文句を言いながらも大人しくベンチに腰掛ける彼はどうやら体力が無いようだ。未だにぜえ、はあ、と息を整えている。
「とりあえず、落ち着け」
「貴方に言われたくない！よくそんな格好で街を歩けますね！」
怒りが収まらないといった様子の少年を少しだけ面白いと思ってしまったのは秘密で、とりあえず俺はありのままを告げた。
「そんな格好も何も、お前以外に俺は見えていないからな」
鳩が豆鉄砲を食らったような、とはこの事か。妙に納得しながら、唖然として動かなくなった彼が意識を取り戻すのを待った。
- Re: ひかれ、ぼくの流れ星 ( No.3 )
- 日時： 2016/02/24 16:14
- 名前： いるみ （ID: iPZN8Dy0）
「いや、待て、そんな筈が無い」
案外とっとと気を取り直した少年が自分に言い聞かせるようにして呟く。多分、俺に向けて言ったんじゃない。
どうも信じてくれていない様なので、下界に降りてきた目的や自分のことを洗いざらい話してみる。
「俺は天使だ。名前はトパーズ。昇級試験の真っ最中だ。
下界に降りてきた目的は人間の願いを叶えること。お前は一人目に選ばれた」
先程と同様にありのままを告げる。
彼はと言うと、もう硬直はしなかった。ただ頭を痛めている様だ。つまらない。
「……さっき、貴方にぶつかった時。俺にとっておかしいのはどう考えても貴方の方なのに、周囲を歩いていた人達は俺の方を見ました。
怪しむみたいに、異様なものを見るような目で」
それは当然だ。なぜなら、
「貴方は俺にしか見えていない。だから周囲の人達は、俺が勝手に尻餅をついた上、誰もいない場所へ話しかけているように見えた」
そういうことですか。少年が問う。彼は賢かった。俺が肯定すると、彼はそうですか、とだけ言った。
「それで、いいのか」
「これ以上言及したって、何の意味もありませんから」
彼は諦めてしまった様だった。それで信じてもらえるなら構わない。
ふと、手元の資料のことを思い出す。
「差支えなければ……名前を聞いてもいいか」
名前さえ分かれば地域から探すことが出来る。名簿順で並んでいるので、あとは簡単だ。
「市川美鶴です。……それに、俺のことが載っているんですか」
美鶴と名乗った少年の視線の先には、俺の資料がある。なるほど彼は、物分りが良いらしい。
「ああ、そうだ。ここに願いや、お前についての情報が載っている」
ふうん、と美鶴が言った。あまり興味が無い様だった。
- Re: ひかれ、ぼくの流れ星 ( No.4 )
- 日時： 2016/02/24 16:33
- 名前： いるみ （ID: iPZN8Dy0）
美鶴の情報を探すのは簡単だった。そもそもこの地域にはあ行の登録者が少ない。たぶん、十人も居ないんじゃないだろうか。
顔写真や名前を確認していく。名前と顔は合致した。あとは願い、そして大まかな生い立ちが記されている。
（弟が一人、父母、父方の祖母は健在。小学校はここ、現在通う学校はこっちで、部活は文芸部か。願いは……）
その願いを彼に告げるのは、躊躇われた。
事前に説明を受けていた。対象者本人が願いを自覚していない場合が存在すると。では、彼の場合はどうか。
「美鶴」
「いきなり名前ですか？」
「ファーストネームで呼ぶのは天使の基本だ。それはそうと美鶴、お前は自分の願いが想像できるか」
「なんですか、……っと、そうでしたね。俺の願いを、叶えてくれるんでしたか」
美鶴は口元に手を当て暫く考え込んだ後、思い当たるものがあったのか口を開こうとした。
しかし、思い直したようですぐに口を閉ざす。
「……ここには、お前の願いも書いてある」
「それで、わざわざ言わせようとしたんですか。悪趣味ですね」
はっ、と嘲笑うみたいに笑って、でもすぐにすみません、という小さな謝罪が聞こえてきた。別に、謝らなくても良かったのに。
（美鶴の願いは『友達が欲しい』、か）
最初から最高難易度が出てしまった。
例えば、ピアノが上手くなりたいのなら、俺が教えてやればなんとかなる。でも友達は、例えば俺が適当な人物を引っ張ってきて差し出し「友達になってくれ」なんてお願いしたって、それはきっと美鶴にとって友達としてカウントされない。
友達を作るなら、美鶴自身を変えなくてはいけないのだ。
でも、関わってしまった後でやっぱりやめるなんて、彼に失礼だし、そんなの俺が許さない。
そう、やるしかないのだ。
「美鶴、俺はお前の願いを叶えよう」
美鶴は驚いた顔をして、そのあと、酷く寂しそうに笑った。
Page:1 2
この掲示板は過去ログ化されています。