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   好きな人 と 私の唇 。
日時: 2016/03/04 18:36
名前: 蒼奈 (ID: Aw5kQYTw)



  
   「 やっぱお前が一番だわ 」

   あなたはそう言うけれど、一番なのは私じゃなくて、

   私の 唇だけ でしょう?


  
   神田 晴菜

   杉本 遼 

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Re:    好きな人 と 私の唇 。 ( No.1 )
日時: 2016/03/04 19:00
名前: 蒼奈 (ID: Aw5kQYTw)


   「 はあ……お前なんでこんなバカなの? 」
   「 うるさいなー! 苦手なの! 」

   夏休み。2年生の教室。
   私の目の前には、1つ年上で幼馴染みの遼がいた。

   「 お前、高2だろ? こんなんも解けないでどうすんだよ 」
   「 まだ高2だもん! これから頑張るし 」

   夏休みの英語補習対象者になった私。
   その補修でも優れなかった私は、補修の後こうして遼に勉強を教えてもらっている。

   「 そんなんじゃ、来年大変だぞ 」
   「 ……分かってるよ 」
   分かってる。ちゃんとしなきゃってダメだって。
   できれば遼と同じ大学に……って。

   そう。私は遼のことが好きだ。小さい頃から。


   「 遼の邪魔してごめんね 」
   「 学校じゃ先輩って呼べって言ってんだろ 」
   遼は高校に入ったときからこう言うようになった。
   普段は呼び捨てだけど、学校じゃ先輩って呼ばないといけない。
   遼は普通に晴菜って呼ぶくせに……ズルいよ。

   「 ま、今は誰もいないしな。俺も勉強になるし、気にすんな 」
   そう言って私の頭に大きな手を乗せて、髪をくしゃっとする。
   こういうところが、好きなんだ。優しくて、私より断然大人びている。

   だから、遼を好きになるのは私だけじゃない。たくさんいる。

   「 今日彼女さんは? 」
   「 あーなんか部活に顔出してくるって 」
   当たり前のように彼女もいる。
   昔から遼の隣にはいつも彼女がいて、こんな私が入る隙なんてなかった。

Re:    好きな人 と 私の唇 。 ( No.2 )
日時: 2016/03/05 22:58
名前: 蒼奈 (ID: Aw5kQYTw)


   「 彼女さんと順調? 」
   「 まあな。羨ましいだろ 」
   遼は笑いながら、私の英語のプリントに目を落とす。

   「 ……うん 」
   羨ましい。遼じゃなくて……彼女さんが。
   遼の彼女になりたいってどれだけ願ったって叶わないんだもん。


   「 なあ 」 
   「 ん? 」
   遼が持っていたシャーペンでプリントをトントンと合図する。
   トントンとしたところを見ると、

   I wanna kiss you.

   の文字。

   「 あなたと……キスしたいってこと? 」
   「 おー正解。英語できんじゃん 」
   そう言って遼の顔が近づいてきたと思ったら、私の唇には遼の唇があった。
   優しく私の唇を吸うようにキスをして離れる。

   「 やっぱお前が一番だわ 」
   「 彼女さんに怒られるよ 」
   こんなただの幼馴染みにキスしちゃ。

   遼が私にキスしてくるようになったのは、昔からのことで日常茶飯事だ。
   どうやら私とのキス……
   私の唇が気持ちが良いようでこうやってキスをしてくる。

   「 無性に晴菜とキスしたくなるんだよなー 」
   断れないのは、こうやって言ってくれるのが嬉しいから。
   彼女さんに申し訳ない気持ちはあるけれど、こう遼に言われたら断れない。

   「 お前に彼氏できたらしねえから、安心しろ 」
   最近、遼はこう言うようになった。
   もしかして、私が遼のこと好きってバレてるのかな。
   好きになられても困るから彼氏作れよってこと?

   こういうネガティブ思考はぐるぐる頭の中を駆け巡る。

   「 当たり前だよ 」
   そして、変に強がってしまう私。もう、最悪。


   「 遼ー。探したよー! 」
   急に甲高い声が聞こえたと思ったら、教室の入り口に遼の彼女さんが立っていた。

   「 あ、わり。連絡すんの忘れてた 」
   遼は椅子から立ち上がって、彼女さんに笑顔を向けていた。
   彼女さんもニコニコしてて……、私置いてけぼり。

   「 じゃ、今日はこの辺でな。家に帰ってからもちゃんとやれよ 」
   「 うん。ありがとうございます先輩 」

   こうやって言うこと聞くのは、遼に嫌われたくないから。
   本当は先輩なんて呼びたくないよ。

   そのまま遼は彼女さんと帰って行った。

   はあ。実際辛い。こんな恋愛したくないのが本音。
   でも、しょうがない。

Re:    好きな人 と 私の唇 。 ( No.3 )
日時: 2016/03/05 23:05
名前: 蒼奈 (ID: Aw5kQYTw)


   「 晴菜じゃん。遼は? 」
   顔を伏せていたところに聞こえた声は、
   「 帰ったよー。彼女さんと 」
   遼と私と幼馴染みの裕平。通称、裕ちゃん。裕ちゃんも私の1つ年上で先輩。

   「 また置いてけぼりか 」
   笑いながら、さっきまで遼が座っていた席に座る裕ちゃん。
   裕ちゃんは私が遼のことを好きなのを知っていて、
   キスしていることも知っている唯一の理解者みたいな存在。

   「 置いてけぼりとか言わないでよ 」
   裕ちゃんに同情してとでも言いたげな顔をする私。
   裕ちゃんは優しい。とっても。

   「 また、キスされただろ 」
   裕ちゃんは遼が書いたさっきの英文を見て言う。
   「 私が一番だって 」
   私も遼が残して言った文字を見て言う。
   kiss you ……だって。

   「 お前は? どうなの? 」
   「 ……遼が好きだよ 」
   とっても、ね。
   裕ちゃんは小さく溜息をつく。

   「 遼も変わり者だけど、晴菜も変わってるよな 」
   窓の外を見ながら裕ちゃんは笑う。
   「 自覚してます 」
   私もつられて笑う。

   なんであんな奴が好きなのか自分でも不思議。
   でも……どうしようもなく好きなんだ。

   「 ま、しょうがないよな。好きなんだったら 」
   裕ちゃんはなんでも受け止めてくれる。
   かといって、簡単にアドバイスをくれるわけでもない。
   でも、それが居心地がいいんだ。

   「 裕ちゃんは? 好きな人いないの? 」
   いつも私が話すばっかりで、裕ちゃんのこういう話聞いたことなかった。

   「 お前、どうせ興味ねえだろ 」
   裕ちゃんは笑いながら私のおでこをピンっと指で弾いた。
   ……まあ、あるって言ったら嘘になっちゃうけど。

   「 いいじゃん。実は……ホ 」
   「 違う 」
   裕ちゃんは、食い気味に言う。
   だって、好きな女の子の話とか聞いたことなかったから
   もしかしたら……って思っちゃったんだもん。

   「 好きな奴ぐらい居るよ 」
   「 それは……女でしょうか? 」
   裕ちゃんは冷めた目で私を見る。
   あっ……ごめんなさい。

   「 お前うぜー。ちゃんと女だよ、可愛いよ 」
   「 裕ちゃん面食いだったんだ! 」
   そういう私に裕ちゃんは少し頬を赤くしながら、うるさいと言って私の頭を叩いた。

   「 でも、ずっと片思い 」
   「 なんで? 」
   裕ちゃんは私の質問に答えずに
   英語のプリントに目を落として間違ってるところを消した。

   裕ちゃんも、叶わない片思いしてるのかな……。
   これ以上、裕ちゃんに聞くのはやめた。


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