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近いようで遠い距離
日時: 2016/03/22 07:38
名前: てんとう虫 (ID: Wz7AUOMy)

席替えの日が来た。


メガネの私は、いつでも変わることなく前列にいる。

「じゃあ目の悪い人先に名前書いてー」

先生の合図で、いつも通り私は黒板に名前を書いた。


毎回最初に名前を書くのは

私と友達のナツちゃんだけなのだが

今日は違った。

「あれ、はじめって目 悪かったっけ」

「うん、なんかね」

「何だそれ」

私が書いた〈立野〉という文字の隣に、〈神山〉という彼の苗字が加えられる。

(うそ!?)

これが、全ての始まりであった。

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Re: 近いようで遠い距離 ( No.1 )
日時: 2016/03/22 09:15
名前: てんとう虫 (ID: Wz7AUOMy)

私こと〈立野帆乃〉は今年、中学で二度目の夏を迎えた。

入学してから変わらず地味に生息している。

明るくて人気者で誰にでも分け隔てなく接する〈神山元〉という男とは全く違う人種だ。


だからこそ、今、ものすごく動揺している。

「よろしくね立野さん」

席を移動した後で、神山くんは満面の笑みを私に向けた。

「よ、よ、よろしくお願いします」

思うように言葉が出ない。

緊張で、たぶん、私の顔は赤いと思う。

「僕前の席初めて」
「へぇ……」
「立野さん、ショートヘア似合うよね」
「はっ」

周りが席替えのくじ引きでざわざわしている中、突然のお世辞に私は過呼吸になりかけた。

膝の上に置いた手のひらに力がこもる。

手汗がすごい。


一人緊張感に襲われている中、席替えのくじ引きは終わったようで、机を運ぶガチャガチャという音が教室に響く。

目立つグループの男子が
「はじめだー」
と言って神山くんの髪をわしゃわしゃやりながら通り過ぎていった。

「やーめろー」
と言う神山くんの声は、とても楽しそうだ。


隣の彼との空気の違いに、私は落胆する。




《作者コメント》

初めまして、てんとう虫と申します。
よろしくです。

恋愛系のお話は書いたことがないので駄作になるかもしれませんが、
誰かに気に入ってもらえるような
そんな作品になればいいなと思っております(`・ω・´)

コメントも待ってますので、よろしくお願いします。

Re: 近いようで遠い距離 ( No.2 )
日時: 2016/03/22 09:21
名前: てんとう虫 (ID: Wz7AUOMy)


席が変わって、最初の授業が終わった休み時間。

一人で本を読んでいた私は、ふと、隣から妙に視線を感じた。
目を向けるべきか、無視するべきか。

しばらく気付かないフリをして黙々とページを捲っていたが、やはり本に集中できない。

仕方なく、「何ですか」と神山くんを見る。

「何の本読んでるの」
案の定、神山くんが席で頬ずえをつきながら私を見ていた。

まさか本の事を尋ねてくるとは思わなかった私は少し戸惑った。

「え?あ、この本は〈影の私と表の未来〉って言って、その、暗い話です」

何とか言い終えて、私は本の表紙を彼に見せる。

彼は関心したような顔をして、身を乗り出した。

「へ〜、難しい本読んでるんだね。……良かったらさ、今度僕にその本貸してくれない?読み終わったらでいいから」
「へ?」

神山くんがこんな暗い本を読みたいと?
人間、見た目だけじゃ分かんないなあ。

「いいですよ。もう二週目だし、今貸します」

私は本の栞を抜いて、彼に渡した。

「ありがとう」

神山くんは笑顔で本を受け取る。

何だか良い事をしたようで、初日から気分が良い。


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