コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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恋人ごっこ
日時: 2016/04/23 13:44
名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)

どうも、川魚です!
つたない文ですが読んで頂けると幸いです。

コメンテーター
こん様

目次
#into >>1
#first contact >>2>>5
#second effect >>6-7

Page:1 2 3



Re: 恋人ごっこ ( No.2 )
日時: 2016/04/20 18:31
名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)

#first contact

 それは偶然の出来事だった。
 たまたま、場所が同じでーー
 たまたま、時間が同じでーー
 偶然にも事は起きた。
 偶然が偶然にも重なってーーまるで必然のように。

 野球部の略し過ぎて擬音語みたいになってしまっている掛け声。バットとボールがぶつかる金属製の気持ちいい音が校舎の屋上に響く。
そんな青春の音のする放課後の屋上は人気な、いや、定番な告白スポットになっている。
 そうして、今日も告白の場所となっている。

「翔太君が好きです! 私と付き合ってください!」
 そういって彼女は顔を伏せた。ショートにした髪が前に揺れる。
 柿原梨奈、隣のクラスの子で前に委員会で隣が彼女なので作業の傍らよく話す仲だ。
 ちょっと振りにくい。
 梨奈は今どんな顔をしているのだろうか。
 顔色を窺おうとも、梨奈は顔を伏せているのでわからない。
 ええい、乙坂翔太! しっかりしろ! 相手は本気なんだ。ならこっちもちゃんと答えるのが道理だ。
 なんて自分に鼓舞して、はじめから用意してきた言葉をいう。
「ごめん、柿原"さん"とは付き合えない」
 柿原さんが顔を上げ、目が合う。
 口を開いたまま何かを言おうとしてる。
「そっか・・・・・・こめんね急に・・・・・・」
 柿原さんはまた顔を伏せた。
「私、先に帰るね。じゃあね。しょ・・・・・・乙坂君」
 柿原さんは走って校舎の中に消えた。
 屋上に残った俺は帰ろうかと思ったがやめた。まだ柿原さんがいるかもしれない。鉢合わせでもしたら大変だ。
 それに、自分がさっきしたこと。
 道理だ、本気だ、なんだと言い訳して俺は相手を傷付けることを正当化した。
 もっと相手を傷つけずに振る方法もあった。なのに、相手を傷付けるやり方を選んだ。
 俺には恋をする権利なんてないにも等しい。
 誰かに恋をするなと言われた訳ではない。
 だけど、俺には人を幸せにすることができない。
 自分が幸せになることが赦せない。赦してならない。
 だから、俺には恋ができない。

Re: 恋人ごっこ ( No.3 )
日時: 2016/04/10 19:33
名前: こん (ID: 4m8qOgn5)

はじめまして!
こん、と申します。

なんだか先がとっても気になるお話ですね。
題名もすごく気になりました。

こういうテンポのお話はとても好物なので、また読みに来ます。

更新頑張ってください!!

初コメ失礼いたしました。

Re: 恋人ごっこ ( No.4 )
日時: 2016/04/13 00:43
名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)

うわあぁぁぁ!

こんさぁぁぁん!
初コメありがとうございますっ!
すごい嬉しいです! 感謝感激です!
今後もよろしくおねがいします!

Re: 恋人ごっこ ( No.5 )
日時: 2016/06/02 16:09
名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)

 ・・・・・・はぁ。
 ため息が出た。
 その場で座り込む。
 もう二十件目だ。あ、今のを足したら二十一件か。
 だんだん、振ることに罪悪感を覚えてきた。
 いや、そうじゃない。
 めんどくさいのか。
 もう彼女作ろうかな。そうだな、そうしよう。
 相手は恋愛に興味がない子がいいな。俺と一緒で告白されるのが嫌になってる子。
 ーー偽物の彼氏彼女。
 ・・・・・・いるわけねぇか。

 そろそろ、いいかな?
 立ち上がって、扉に向かう。

 若干重い鉄扉のレバーハンドルを捻り、引く。
 キィィ、と錆びた音を立てて扉は開く。
 ハンドルから手を放し、屋内に入る。
 後ろ手で扉を閉めるとバァンと大きな音が立った。
 わざと立てた訳ではない。この扉、手を放して閉めるとさっきのように大きな音を立てて閉まるので、手でゆっくりと閉めなければならない。
 しかし、この扉はある程度閉まると急に重くなるので、閉まる際の力加減が難しく、ミスすると、今のように音を立ててしまうのだ。

 だから、そこにいる女の子を故意に驚かせ、転ばしたわけでは決してない。
 それにしても・・・・・・水色か。いやもう少し薄いな何色って言うんだろ? 青白磁色とか近い気がする。
 いや、何言ってんだ俺。そうじゃなくて、女の子が何か焦ったような顔をしているのは俺の気のせいだろうか?
「さやかちゃん! ちょっと待ってくれ」
 下の階から階段を駆け上がる音と男の声がした。
「あの! ちょっと! すみませんっ」
 さやか、と呼ばれた女の子が立ち上がりこっちに向かってくる。
 あ、巻き込まれたなこれ。
 さやかさんが俺の後ろに逃げる。
 そこで、下の階から先の声の男がさやかさんに追い付き、俺を挟んで彼女と向かい合うかたちになった。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・さやかちゃん、なんで、逃げるの」
 男が荒い呼吸をしながら絶え絶えにも言う。
 いやぁーーそりゃそんな見た目じゃ逃げるでしょ。目付き悪いし、ピアス開けすぎだし、香水なんか臭いし。
「あの人・・・・・・お断りしたのに追いかけてくるんです」
 え、なんで俺に言うの? あの人がなんで逃げるか聞いてるよ?
「あぁ? おめぇ誰だ?」
 いや、それこっちの台詞な?
「お、乙坂翔太だ」
「ふーん、で、さやかちゃんとどういう関係なんだ?」
 あのさぁ、いちいち目付き怖いって。安心しろ、今会ったばかりの他人だから。
「他「恋人です」人だ」
 は? 今なんつった?
「こ、恋人ぉ!?」
 男が素っ頓狂な声をあげた。
 うわー聞き間違いじゃなさそう。
「はい。恋人です」
 さやかさんが俺の手を握った。
 さらさらとした肌の感触と自分より少し冷たい体温が手全体に広がる。
 男は恋人繋ぎになった俺とさやかさんの手を見て何を言おうか口を開けたままだ。
 どうしようかと、考えていると、恋人というキーワードに俺は閃いた。効果音がついていたならキュッピーン、と鳴っていただろう。

「あー悪い、さやかとはこういう関係だからさ。引いてくれない?」

Re: 恋人ごっこ ( No.6 )
日時: 2016/06/02 16:13
名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)

#second effect


 水無瀬さやか。
 俺と同じ二年生で、クラスは十組。俺は一組なので教室の位置は校舎の端と端になる。
 男子からはかわいいと専ら評判で一時は告白が絶えなかったらしい。
 そんな彼女、実は女子にも人気がある。無論そっち系の人もいた。
 水無瀬菓子という和菓子屋の娘で趣味でよくお菓子を作るらしく、女子の中では美味しいお菓子が作れると専らの評判だ。
 そんな彼女と俺は先日、恋人になった。
 もちろん、偽物のーー

「二年十組。水無瀬さやかです」
「二年一組。乙坂翔太」
 男が去ったあと、俺と水無瀬さんは階段に座り先の恋人宣言について話し合うことにした。
 というわけで、まだお互いの名前も知らないので自己紹介をしたのだが、暗い。めっちゃ暗い。かくいう俺も声が明るくない。正直少し後悔している。
 なんだよ、こういう関係だからって。
 肩下、肩甲骨の辺りまで伸びたサラサラな黒髪、きめ細かな肌は白く綺麗だ。
 控えめに言っても彼女はかわいかった。
「水無瀬さんは・・・・・・告白にうんざりしてるとか思ったことある?」
「・・・・・・急ですね」
 水無瀬さんは相変わらず暗い、言ったことを後悔しているのだろうか。
「俺はさ、告白にはもううんざりなんだ。相手のことを傷付けたとかそういうことやっぱり考えちゃうし、めんどくさい。二日連続とかほんとめんどくさい」
「私は今日で九人連続です」
 マジかよ。
「それは大変だったな。話を戻すけど、俺は告白されるのが面倒になった。だから、さっき助けたところで何のメリットもないはずのお前を助けた。メリットができたから」
 水無瀬さんは静かに聞いていた。
 俺はそのまま続けた。
「そのメリットは偽物の彼女だ」
「偽物の・・・・・・彼女」
 水無瀬さんはそう呟いた。
 そして、続ける。
「そう。そしたら、乙坂くんは私の偽物の彼氏になるってことですね」
「そうだな。もし水無瀬さんが告白にうんざりしてるようだったら悪い話ではないはずだ」
「そう・・・・・・ですね。既に付き合ってる人がいたら、告白しようとする人も減りますね・・・・・・わかりました。私と偽物の恋人になってください」
「あぁ、よろしく頼む」
 こうして、俺と水無瀬は偽物の恋人となった。


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