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2人のダミー 【完】
日時: 2016/04/30 10:04
名前: マル彦 (ID: 21zier3A)

人気俳優の添田徹は、明日にも仕事を控えている。

しかし、その前日になって、

「添田が誘拐された!?」


マネージャーの加藤が一日限り世話をすることになったのは、添田徹にそっくりな、二人の若者。

果たして彼らは一日で本物の添田徹となれるのか!?






とまあ、こんな感じのお話です。

気軽に読んで頂ければと思っているので、是非、時間があるときなどは寄っていってください^^


【目次】

第一話〜2人のダミー >>01

第二話〜着物の添田とチャラい添田 >>02

第三話〜添田徹になるために >>03

第四話〜二人の事情 >>04

第五話〜深夜の練習 >>05

第六話〜添田と徹 >>06

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Re: 2人のダミー ( No.1 )
日時: 2016/04/30 08:33
名前: マル彦 (ID: 21zier3A)

【第一話、2人のダミー】


「添田が誘拐された!?」



俺は、人気俳優、添田徹のマネージャーだ。
歌手としても活動している彼は、明日にもチケットが即完売したライブを控えている。

そんな彼が、ライブ前日に、しかも誘拐だと?

俺はもう一度、携帯電話に向かって大声を出した。

「待ってください、社長。添田が誘拐なんて、そんなことあるわけないじゃないですか。第一に、警察に電話は?」

『……実はね、私が悪いんだ』

「は?」

『私には兄がいるだろう?大きな会社を持っている兄が。実はこの間その兄と喧嘩をしてしまってね。兄が徹君のライブを阻止しようとしているんだよ。でも、もう策は練ってある。もう会場の練習室にいるはずだ。私は徹君を捜す———』

それだけ言って電話はポツリと切れた。

そんな無責任な。

兄弟喧嘩ごときに添田を巻き込まないでくれ。

………だからと言い、このまま手の中の携帯を睨み続けているわけにもいかない。
「策」があるというのなら、今はそれに任せよう。
それにしても、「いる」とはどういうことだ?



そんな事を考えながら、ライブ会場の練習室に行き、俺は開いた口が閉じなくなった。

そこには、二人の添田徹がいたのだ。

「初めまして、加藤さん」

「どうもっす」

深い緑色の着物を着た添田と、少しチャラそうな添田が、俺に頭を下げる。

「待て待て待て、どういうことだ?」

二人に背を向け、頭を抱えて考えていると、ポケットの中の携帯が鳴り出した。

誰からの電話かということも確認せずに、それを耳にあてる。


『どう?驚いた?本物そっくりだろう。よく探してきたと思わないか』

電話越しに明るい声が聞こえてきた。

社長だ。
あの二人の添田は、本物のそっくりさんだったのか。

それにしても———。

「驚くもなにも、意味不明ですよ」

『ああ、すまん。……急で申し訳ないんだが、もし、もしも徹君が見つからなかった時に備えて、今からその二人をライブで歌って踊れるようにして欲しいんだ』

「!?」

『もちろん偽物とバレないように』

「今からなんて、そんな無茶な!」

『——————……』

何の前触れもなく電話が切れた。

俺はしばらく携帯を握り締めたままその場に立ち尽くす。

素性も分からないこいつらを、本物の添田と見分けが付かなくなるまで仕上げろ、と?
本番は明日だぞ?

「どうしました?」

着物の添田が俺を覗き込みながら問いかけてきた。

「何でもない」

携帯をしまいながら、平静を保って後ろを振り返る。


———ああ、練習室ってこんなに広かったのか。

今まで気付かなかった。

「悪い、ちょっと出る」

やばい。
少し考えないと、頭がはちきれそうだ。

戸惑う二人を置いて、俺は練習室を後にした。


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