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僕等は春を捜してる
日時: 2016/04/30 20:08
名前: Berry (ID: 10Uu3dBQ)


「僕等は春をさがしてる。

青い光に包まれた、恋い焦がれた春をさがしてる。

嗚呼、我に恋よ。」





こんにちは、Berryと申します。

「僕等は春を捜してる」を書きます。

どんな話かは読んでいただけると幸いです。

宜しくお願いします。







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Re: 僕等は春を捜してる ( No.2 )
日時: 2016/05/01 17:21
名前: Berry (ID: 10Uu3dBQ)


桜の花びらが散る踏切。

春風に誘われて、君は唐突にやってきた。

そして僕は唐突に君に恋をした。

それは、君に恋する五秒前・・・。

それは、僕の初恋が始まる五秒前。

僕と君が出会う五秒前は

ちょっとだけ、切ない匂いがした。


Re: 僕等は春を捜してる ( No.3 )
日時: 2016/05/02 17:08
名前: Berry (ID: 10Uu3dBQ)

てるてる522様


コメントありがとうございます。
タイトルは漢字にするかひらがなにするかかなり悩みました。
褒めてくださってうれしいです!
これからもよろしくお願いします。


Berry

Re: 僕等は春を捜してる ( No.4 )
日時: 2016/05/02 18:32
名前: Berry (ID: 10Uu3dBQ)

第一話  春よ来い


「カナトー!ナイスシュートっ!!」

放課後のグラウンドで山口監督の図太い声が響き渡る。
春の生暖かい風が気持ち悪い。

でも、なぜだかほっとするような、期待だとか、ワクワクだとか
そんな雰囲気を帯びている春風は別に嫌いじゃない。

「カナトー、ハイ、お茶。」

「ああ、サンキュ。」

部活専用のボトルを受け取る。
冷たい麦茶を飲むと、火照ったからだが潤うような感じがした。
マネージャーの石橋かおるは、僕のご近所さんであり、幼馴染である。
『お前、石橋とデキてるんじゃないの?』
こんなことをサッカー部の奴らから言われるのはしょっちゅうで
その度に『ははは、なわけねー』と言ってかわしてきた。
かおるは、『デキてる』と言われると顔を赤く染め、『なわけない』と僕が否定すると困ったように笑う。


なんでだろう?


なんて思わない。


そんなわかりやすい態度取られたら、気づいてしまう。

ちょっと素直すぎじゃないか?

僕はそこまで鈍感じゃないぞ。バカ。


でも、気づいたからといっても特に進展するわけでもなかった。

僕はかおるのことを女の子だとはわかっていたけれど、だからと言って
『好き』という感情があるわけではなかった。

かおる自身も思いを伝えようとは思っていないだろうし。

他にも告白されたことはある。

でも僕は、『好き』という感情が分からない。

女の子をかわいいとは思ったことはあっても、

恋にあこがれて誰かを好きになろうとしても、恋だと感じたことはなかった。


だから四月は変に期待して、春はなんとなくそういう出会いを探してる。

でも僕の四月に春が来たことはない。



Re: 僕等は春を捜してる ( No.5 )
日時: 2016/05/03 11:17
名前: Berry (ID: 10Uu3dBQ)


第二話  一緒に帰ろう


「はーい、今日は解散。あ、それでカナトは俺のところへ来い。石橋は片づけ頼んだぞ。」

「はい。」

監督が俺に何の用だろう?珍しいな。

そう思いながらベンチに腰掛ける監督のところに行く。

「おお、カナト。座れ座れ。」

監督は数学の教師でまだ若い。

でも、厳しくて、それでいてとっつきやすいオーラを持っている。

不思議な奴。


青い塗装が取れてしまっているベンチに腰掛けると、ギィギィと音がした。

「あの、唐突なんだけどさ、お前次の試合スタメンな。」

本当に唐突すぎてびっくりした。

「えっ?」

「えってなんだ。不満か?」

「いや・・・そうじゃなくて、先輩は・・・。」

そう、まだ僕は二年生で三年生はもうすぐ引退なのだ。

そんな時期にいきなり・・・。なんでだ?

「お前は、人を観察する力がすごく備わっている。それはサッカーでの相手の動きを見ることや、メンバーの調子を見て正確なパスを回せるってことだ。お前のそういう力はほかの先輩にはないな。今の先輩は・・・、ちょっとバカだから。」

監督がにかっと笑う。

黒くてごつい顔がかわいらしさをおびた。

「・・・そうですか。」

「ちょっと複雑か?」

「はい。」

そうだ。俺が入るってことは誰かが外されるってこと。

「それは先輩を気遣ってなのか?それともお前が怖いから?」

「・・・。」

どちらでもないような気がする。

別に怖いわけでもない。でも、先輩のことを気遣うわけでもなくって・・・。

ただ、俺がその外された人だったら、今の俺の立場をどう思うのか。

きっとすごく、悔しくて、むかついて、いらつくだろう。

それでいて、きっとつらい。

「うーん、そうだな。やっぱり先輩のことも考えないとな。
バカだけど、バカなりに一生懸命やってきてんだから。」

「はい・・・。」

監督が俺の顔を覗き込んで頭をぐしゃっと撫でた。

「ごめんなー、でも先輩が引退したらビシバシやるから覚悟しろよ。」

監督の目を見たとき、父親ってこんな感じなのかなって思った。

俺には父親がいないから、よくわからないけれど。

こういう大きい包み込んでくれる感じが、父親っぽかった。

まだまだ子供なんだな。僕も。



「ありがとうございました。失礼します。」

「おう・・・あ!それと石橋!お前も上がれ。カナトと一緒に帰れ。」



・・・・・・うん?


「え、なんで?」

「いやいやいや、お前もうこんな暗いんだぞ?送ってってやれや。」

「え・・・、まじか。」

かおるがこけた。

「まじだ。まあ、いろいろお前も気づいてるだろうけど、一応石橋にもご褒美をやらないとな!毎日頑張ってもらってるし。」


は???

え、こいつなんでも知ってんのか??

うっわ、プライバシーも何もあったもんじゃねえ。

「さよーならー・・・」

「さよならー!がんばれよ。」

何をだよ!

かおるに目をやると、こっちをみてにがわらいをした。

「一緒に、帰ろうか。」

「うん!」

かおるが満面の笑みを浮かべる。

桜がパッと咲いたような、あったかさがあった。

かおると肩を並べて門を出る。

こうやって帰るのはいつぶりだろう・・・?


なんだか少しだけ、心がゆらゆら揺れている。


Re: 僕等は春を捜してる ( No.6 )
日時: 2016/05/05 18:51
名前: Berry (ID: 10Uu3dBQ)




第三話  


「こ、こうやって帰るの久しぶりだね!」

かおるが意気込んだ声で沈黙を破る。

そういえば最近二人きりでしゃべってなかったな、と今更ながらに気づく。
なんだかぎこちなくなるのも当たり前だ。

「そうだね。」

「なんかちょっと、寂しかったりするなぁ。私は・・・。」

「やっぱり高校生ともなると・・・ね。」

高校生ともなると・・・なにがどうなるんだろうか。
きっとそんなのはただの後付け設定に過ぎない。
本当は、かおるの中での僕が変化して、僕の中での純粋さがなくなって・・・

そういったことが複雑に混じって、絡まって、溶け合ってできたのがこの状況だ。

自販機の前でかおるの足が止まる。

「あ・・・ちょっと待って。」

「なんか飲むの?」

「うん、のど乾いたー、部活の後だもん。」

「かおるは運動してないだろ」

「あーっ!なによ。マネージャーって結構疲れるんだからね。暑い中暑苦しい部員の面倒みてさ。あたしはお母さんか」

「あー、確かにお母さんっぽいかも。サッカー部の母!的な感じ」

げしっ。
足に軽くキックをされる。
かおるは頬を膨らませて、僕と目が合うと同時にプッと笑った。

こうやって軽口をたたくのはいつぶりだろう。意外だけど楽しい。
かおるはやっぱり可愛い幼馴染の女の子だ。

「あ、かおる。なっちゃんのぶどう、あるよ。」

「え・・・あぁ、そうだね・・・、何で知ってるの?」

「いや、昔遊んだときとかさ、いっつもなっちゃんのぶどう飲んでたろ?」

「よく覚えてるね・・・、しかもカナトに言ったことないような気がする。さすがだねぇ。」

本当に、僕はかおるのことをよく知っている。
かおるの好きな給食のメニューはポトフ。好きな色は薄いピンク。虫は苦手。
他にも、緊張するときはスカートの裾を握るとこや、笑いをこらえているときには鼻をすするところとか。

「さすがって・・・?」

「観察力すごいねってこと!」

「ありがとう」

自分でも気持ち悪いと思うくらい知っている。

でも、何でいちいち覚えていられるのか?


それって何か、特別なことが関係したりしている?

ひょっとしたら、そうなのかもしれないのかな。

そうなのかもしれないのか・・・。





「バイバイ、今日は一緒に帰れてうれしかったよ。」

「うん、僕も。久しぶりに話せてよかった。」

「ふふ、じゃあね。また明日。」

「また明日。」



そうやって手を振りあって、僕は走り出した。

僕はかおるに恋をしているのか。その疑問で心が飲み込まれないようにするために。




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