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   愛し愛され、騙しあう。   
日時: 2016/07/06 20:02
名前: あさぎの。 ◆TpS8HW42ks (ID: MwvvJcXZ)

私は愛し、君は愛され。
彼と彼女は、愛しあい、騙しあう。


——たった二文字のその言葉が、言えないだけなのに。



× ×




△ご挨拶

初めまして、あさぎの。と申します。
以前ここで書いていたこともあったのですが、完結させることができなかったので今回は頑張りたいと思います。
更新するペースはとても遅いですが、よろしくお願いします(´`**)

コメント大歓迎です。
ですが、荒らしなどはご遠慮ください。


△目次

1章:私と彼は共犯者、あの子と君は——、
>>001 >>004 >>005 >>008

2章:甘い毒と、危険な香り。
>>013 >>016 >>017 >>018

3章:彼と彼女が、似ている理由。
>>021 >>022


△人物

高槻 鏡 (たかつき きょう)
六条 洸 (ろくじょう ひかる)
一ノ瀬 絢都 (いちのせ あやと)
北見 なゆ (きたみ なゆ)


△お客様

いろはうたさん
こんさん
ヒトミさん



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私と彼は共犯者、あの子と君は——、 (1) ( No.1 )
日時: 2016/05/02 21:59
名前: あさぎの。 ◆TpS8HW42ks (ID: WeBG0ydb)



見えたのは、あの子とあいつの姿だった。



 「……何で、だろうね」



彼の隣。前は私の居場所だったのに、その場所にはいつの間にかあの子が立っていた。“そこ”から、突き落とされた訳じゃない。自分で進んで“そこ”から降りたのに、今になって惨めに手を伸ばしてる。


あの子にあるものは、全部私が持っていないもの。


喉から手が出そうなほど欲しいのに、私はあの子にあるものを何一つ持っていない。逆に、私にあるありふれたものなんて、あの子はすべて持っている。
だから憎らしい。世界で一番大好きで、世界で一番大嫌いなあの子。


欲しい。ほしい。ホシイ。

彼の隣が、優しい言葉が、明るい笑顔が、注がれる愛が。
何回も殺して、歪になった恋心がそう叫んでいる。汚い汚い私の恋心が、喚いて泣いて、彼を欲しがっていた。



 「鏡」



名前を呼ばれた。振り向けば、私と同じ感情を抱える“共犯者”がそこに立っていた。
彼は顎のところにあったマスクを鼻まで上げ、「帰ろう」とこもった声で呟く。私は大きく頷き、ひん曲がった恋心をまた殺した。



 「また見ちゃったよ」
 「……見ても、哀れになるだけじゃない?」
 「そうだね」



一ノ瀬絢都は、共犯者。
私と同じ劣情を、心の奥に隠している。




Re:    愛し愛され、騙しあう。    ( No.2 )
日時: 2016/05/01 21:10
名前: いろはうた (ID: b4ZHknAo)

はじめまして!!
いろはうたと申します。
どうぞお見知りおきを。


そしてこんな素敵な作品の1コメをいただきました!!
感動!!
感動であります!!( ;∀;)


複雑な恋愛関係が紡がれそうな予感の序章ですね。
共犯者って何!?
早く続き!!続き読みたい!!
と思わせる、こうなんというか焦らしプレイがお上手な
というか、読者の心を弄ぶなんと小悪魔な序章なんでしょうか……!!


……すいません黙ります。


更新がんばってくださいね!!

Re:    愛し愛され、騙しあう。    ( No.3 )
日時: 2016/05/02 20:47
名前: あさぎの。 ◆TpS8HW42ks (ID: WeBG0ydb)




 いろはうたさん


初めまして!初コメありがとうございます。
もしかして、「マーメイドウィッチ」を書かれているいろはうたさんでしょうか…?
実は読んでおりまして、先ほどコメントをしてきました。
それはさておき、私も貴方様にコメントをして頂いてとても感動です!

そうですね、どろっどろです。(´∀`)
焦らしプレイ…(笑)
読者様に続きを楽しみにされるのはとても嬉しいです。

これからも更新頑張ります。コメントありがとうございました!(´`**)


私と彼は共犯者、あの子と君は——、 (2) ( No.4 )
日時: 2016/05/02 22:39
名前: あさぎの。 ◆TpS8HW42ks (ID: WeBG0ydb)



私も絢都も、仮面を被っている。

猫被りなんて可愛いもんじゃなくて、自分の顔をすっぽり覆い隠すような、完璧な仮面。自らつけることを選んだその仮面は、もうすっかり馴染んで、剥がれ落ちることはないんだろうな、なんてぼんやり思う。
廊下を歩いていると、クラスメイトの女の子に会った。人当たりの良い彼女は、笑顔で「またねー」と手を振っている。



 「うん、またね」
 「今度の放送、楽しみにしてるよ」



絢都も手を振って、私はにっこりと彼女に笑いかけた。彼女は放送委員。褒めるといいポイントを、私はズバリと当てたみたいで、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせる。
私も絢都も、『真面目で優しい学級委員』。気配りができて頼りがいがあって、でも便利屋にはならずに、クラスの大体から好かれる、そんな人物。
この子の好感度アップは狙えたかな? と、笑顔を貼り付けたまま考える。


彼女と別れて、絢都と一緒に帰路を辿る。

私と絢都は、幼馴染。因みにあの子——北見なゆと、あいつ——六条洸もで、私たち四人はある意味呪いのように強力な、“幼馴染”という言葉で繋がれている。
小さいころからいつでも一緒。運命共同体のような存在だった私たちの関係が崩れたのは、中二のとき。洸が、「なゆと付き合っている」と、私たちに告げたからだった。



 「……鏡?」
 「ああ。ごめん、ちょっと思い出してた」
 「そう。……俺も」



あのときのことを、鮮明に思い出して、歩みが止まった。急に止まった私を心配そうに覗き込んだ絢都も、同じ気持ちだったらしい。
彼の切れ長の瞳に、ふっと影がよぎる。立ち止まった私たちを、少し肌寒い秋の風がそよそよと揺らす。そういえば、あの日もこんな風だった。

きっとあの二人は、“幼馴染”という関係が崩れたとは、思っていない。

また四人で笑いあえるって、思い出が作れるって。そう信じているのだろう。関係を壊したのはそっちのくせに、呑気に考えているのだろう。私たちの恋情なんて知らないで。



 「——私は、洸が、好きだよ」



ぽそりと、泣きそうな声で呟いたそれは、風にかき消えた。




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