コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 貴音の花—たかねのはな—[恋愛小説]
- 日時: 2016/05/15 17:13
- 名前: スイカズラ (ID: pFXOI/OC)
成績優秀で容姿もなかなか、ただ運動だけが少し苦手な中学一年生、貴音。
その優等生ぶりから、周囲の男子からはひそかに「高嶺の花」と呼ばれていた。
そんな貴音は、ある日ネットでひとつのブログを見つける。
そのブログ「天使と花束」を書いているミサキという少女と、ミサキの探す幻の花・「天使」に、貴音は興味を持ち始める———————
花を取り巻く人々が織り成す、恋愛小説です!!
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- Re: 貴音の花—たかねのはな— ( No.1 )
- 日時: 2016/05/15 17:13
- 名前: スイカズラ (ID: pFXOI/OC)
貴音たかねの花
プロローグ
春の終わりの風が、カーテンを揺らす。
舞い上がりかけた大量の書類を飛ばさないために、その人物は窓を閉めた。
あの花の事を知るまで、自分はただの空っぽな人間だった。
けど…今は、あの花に満たされている。
他には、何も要らない。
だから、あの花を、みつけたい。
「天使が…ほしい。あの子がほしい」
相談しましょ、そうしましょ—————
窓からかすかに聞こえる花いちもんめにあわせて、その人物は呟く。
「天使がほしい、あの花がほしい」
天使がこの手に入るなら、他には何も望まない。
- Re: 貴音の花—たかねのはな—[恋愛小説] ( No.2 )
- 日時: 2016/05/15 17:10
- 名前: スイカズラ (ID: pFXOI/OC)
「さて、今回の作文大会のグランプリを発表します」
国語の時間。
国語の林藤が、重々しく口を開いた。
桜庭中学校1年2組の生徒達は、ごくりとツバを飲んで発表を待つ。
作文大会——林藤が毎週テーマを決めて行う恒例の大会だ。
中学校に入って約1ヶ月が経ち、この作文大会も今回で6回目なのだが————1年2組には、毎回グランプリを獲得するチャンピオンがいたのである。
「今回は、いや…今回も———チャンピオン、林葉貴音さんです!」
「おぉー!またあいつかよ!」
「ホントすごいよねー、貴音ちゃん」
「作文大会始まってから、毎回林葉だよな」
次々上がる感嘆の声に、チャンピオンこと林葉貴音は照れ笑いをした。
「おめでとう、貴音さん」
「ありがとうございます、林藤先生」
林藤手作りの賞状を受け取って、賞賛の中席につく。
「貴音〜!相変わらず優等生だねー」
授業が終わって林藤が去ると、貴音の元にクラスメイトが集まる。
「い、いやいや…たまたまだよ」
「そのたまたまが毎回起こってんだから、たまたまとは言えないっしょー」
笑うクラスメイトの中から、不意に1人のクラスメイトが貴音に指を突きつけた。
「私だって負けやしないよ!——じゃあ貴音、さっきの体育でやったシャトルランいくつだった?」
勝ち気な表情でそうたずねるのは、貴音の親友・森本涼菜である。
「う………35だよ」
「やりぃ!私は62だもん。やっぱり体育は私の勝ちね!」
「はいはい。どーせ私は体育が苦手ですよー」
嬉しそうに笑う涼菜に、貴音はすねたように言うと、クラス中がどっと笑った。
「でも、それで丁度いいよ。貴音ちゃんが体育まで得意だったら、完璧になっちゃうじゃん」
「そーそー。完璧な人間なんていないんだし」
笑う女子達を、男子達は遠巻きに見ている。
「林葉ってさ、成績優秀で容姿もなかなか、友達もたくさんいるなんて、恵まれてるよな」
「確かに。俺ら何の為に生まれてきたんだろーな」
ぼそぼそと話し合う男子に、「でもさ」と1人が顔を赤らめて呟いた。
「可愛い顔してるよね…林葉さん」
「でもあんな完璧じゃ、俺らにはつりあわねーや」
「あれだよ、あれ。“高嶺の花”ってやつ…ってあれ、あいつの名前タカネじゃん」
「すげ!偶然ー」
“高嶺の花”。
男子も女子も、皆が憧れる優等生。
そんな貴音には、“高嶺の花”という称号が相応しかった。
- Re: 貴音の花—たかねのはな—[恋愛小説] ( No.3 )
- 日時: 2016/05/19 07:31
- 名前: スイカズラ (ID: 9wHf9u2B)
「貴音!今日、一緒に帰らない?」
「あ、涼菜!いいよ」
涼菜に誘われ、放課後の予定を考えていた貴音は立ち上がる。
2人で校門を出たとたん、涼菜が突然挙動不審になった。
「どうしたの、キョロキョロして」
「誰も…いない、よね。———よしっ!」
安心したようにうなずいたとたん、涼菜はカバンからスマートフォンを取り出した。
「あー、涼菜ったらダメなんだー。うちの中学校、電子機器持ってくるの禁止じゃん」
「学校出たからいいの、いいの!」
むちゃくちゃな理屈で電源を入れる涼菜に、貴音はため息をつく。
「そうでも、帰り道にいじるのは…」
「かたいねー貴音。優等生な親友を誘ったのは失敗だったかも…なーんてね!…あ、ほら。これよこれ」
「え?」
涼菜に言われて思わずのぞくと、「1月から12月の誕生花一覧」というサイトが表示されている。
「あ、これ!私がこの間、自分の誕生花知りたいって言ってた事…覚えてたの?」
「あったり前田の、なんだっけ…まぁとにかく当たり前よ!親友でしょ!」
親友の言動に胸を熱くしながら、9月8日をタップする。
「9月8日…へえ、ひとつじゃないんだ」
「どう、満足?」
「満足だよー!ありがとう涼菜!」
せめてものお礼のつもりで、涼菜の好きなアイドル画像を検索する。
涼菜が最近ハマっているグループはなんだっただろうか。ああ、そうだ———「ラヴ・花束」だ。
貴音はそういった世界に一切興味が無いので、涼菜の好みの「寺田くん」や「カズくん」などは理解できないが、なんとなく友人の好みは知っていた。
ラヴ・花束をウェブ検索して、それから画像に…
(……あれ?)
ウェブ検索の一覧の中に、明らかに場違いなサイトを発見し、貴音は指をとめた。
- Re: 貴音の花—たかねのはな—[恋愛小説] ( No.4 )
- 日時: 2016/05/19 07:34
- 名前: スイカズラ (ID: 9wHf9u2B)
〜貴音side〜
私からしたら、「高嶺の花」なんて買いかぶりだと思う。
高嶺の花っていうのは、何でも出来て美人な感じがるから。
私なんて、運動は苦手だし、美人でもないし…高嶺に、私が行ってみたいくらいだ。
つまらない日常だった。
テストでいい点をとることなんて、頑張れば結局できる。
運動も、多分習ったり鍛えたりすればできるんだろうな。
要は、私の日常は、誰でも手にできる日常だったんだ。
それが、つまらなかった。
頭がいいとか勉強出来るとかどうでもいい。他の誰にも真似できないような、特別な日々が欲しかった。
どんな才能を神様がくれたって、そのたったひとつにはかなわない。
神様は、一番欲しかったものだけを、私にくれなかったんだ。
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