コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- それを『自由』と人は呼ぶ
- 日時: 2016/06/03 14:30
- 名前: はるまきごはん (ID: ppKQBiWq)
初めまして、はるまきごはんと言う者ですυωυ
初めてで至らないところもあるかと思われますが、生暖かく優しい目で見て頂ければ嬉しいです
2016.6.3
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- Re: それを『自由』と人は呼ぶ ( No.1 )
- 日時: 2016/06/03 14:50
- 名前: はるまきごはん (ID: ppKQBiWq)
「自由とは何か。それは、己が思うままに事を成すことである。他のものには構わず、我が道を一心不乱に突き進んでいく……と、国語辞典は言っているがね、私はそのことに対して些か疑問を感じている。…思うがままに進んで行ったとしても、いずれ大きな壁にぶち当たる。そうしたら、ほとんどの人間はその『自由』を懐に仕舞い込んで、その大きな壁を越えることもせずに別の道を進んでいくわけだ。壁を気にせずに踏み越える!それこそが真の自由だと、私は思っているのだけどね。ところで青年、さっきから遠くを見つめているようだが、面白いものを見つけたのかね?………ふむ、鳥か。鳥は良いね。高き大空を飛び回っているから壁の心配をしなくて良い。あぁ、さっきから壁壁言っているがね、私の部屋と君の部屋を分かつ壁ではなくてね、私が今感じている、心の壁のことを……」
僕は、彼が苦手である。何故かと聞かれても、見ての通りとしか言いようが無い。どこの世界に、一方的に意味の分からないことを延々と喋り続ける奴を好く物好きがいると言うんだろうか。
「……なんだけどね。うん、本当に鳥は良いものだよ」
「…そうだね」
ようやく気が済んだようで、満足気に腕を組んで、1時間程前に出したお茶を、今ここで初めて口にした。「冷たい」等と不満そうに顔をしかめる彼を無視して、僕は3杯目となるお茶を、自分の湯飲みに注いだ。
彼の名前は神野 仁(じんの ひとし)。一度語り出すと中々止まらない、人間ガトリングガンである。嫌な例えではあるが、弾が尽きるまで撃ち続けるそれは、自分の気が済むまで喋り続ける彼には、ぴったりだと言える。
(……悪い人では、ないんだけどなぁ…)
湯飲みに口をつけながら、そう苦く笑いながら心の中で呟く。チラリと彼の方を見ると、お茶のおかわりをご所望のようで、湯飲みをこちらに突き出していた。
「おかわりくらい、自分で入れてよ…」
「いや、勝手に入れるのは悪いと思ってな。自分で入れても良かったんだけども」
「はいはい、分かったから置いて。入れにくい」
「すまんな」
そうくしゃりと笑う彼を見て、やはり悪い人ではないな、と一人笑った。
- Re: それを『自由』と人は呼ぶ ( No.2 )
- 日時: 2016/06/03 15:35
- 名前: はるまきごはん (ID: ppKQBiWq)
**********
それから数十分後、彼は用事があるだとか言って帰って言った。今は、キッチンに立って湯飲みを洗っている。
一人で住むには充分過ぎる、2LK。そんな寮を持つこの学校は、一体何なんだろうか。たまに疑問に思うことがある。
彼は度々遊びに来る、お隣さんで、遊びに来る理由は『暇だから』、だそうだ。僕といて暇潰しになるのかどうかは聞いてみないと分からないが、それを言ったら語り出される危険性もある為、心の内に秘めておくことにする。
飽きもせずに何回も訪れているんだから、暇潰しにはなっているらしいと適当に片付けると、自分がさっきまで座っていた椅子に腰掛け、そのまま倒れるように机に突っ伏す。
疲れた、とは口に出さない。
(1時間かぁ…長かった)
それだけの時間を途切れもせずに語り続けられるのは、ある意味才能だと思う。そんな才能いらないけど。てかあっても困るけど。
一人でそんなことを思いながら、何をするでなく、ただぼーっと外を眺めるのだった。
- Re: それを『自由』と人は呼ぶ ( No.3 )
- 日時: 2016/06/03 21:48
- 名前: はるまきごはん (ID: ppKQBiWq)
いつしか眠りに落ちていたようで、すっかり日も落ち、灯りの灯っていないこの部屋と中は、正に一寸先も闇、であった。
机に突っ伏したまま眠っていた為、体のあちこちは痛いし、足の感覚も痺れていて、動く気にはなれなかった。が、流石に暗いままなのはどうかと思って、痺れる足もすのままに、立ち上がる。
上手く立てなくて、少し時間がかかったが、ようやく立ち上がることができた。
スイッチのところまでよたよたと歩いて行って、それを押す。すると、当たり前ではあるが電気が点き、明るくなった。
(…そう言えば、今日は珍しく課題が出てたよな……)
ふと、そのことを思い出して、慌てて時計を見る。18:56。夕飯は19:30だから、それまでにさっさと終わらせてしまおうと、鞄から課題を引っ張り出して、それを机に広げる。
「ほぉ、こんな時間まで勉強とは…見直したよ青年」
「っ、?!じ、神野?!」
突然声が聞こえて、慌ててそっちを向くと、彼が立っていた。
まだ収まりそうにない心臓をそのままに、僕はどうかしたのかと声をかける。どうせ、暇潰しに来たのだろうが。
「あぁ、中本先生からの預かりものだ」
案の定、暇潰しだと………言わなかったので、差し出されたものを受け取る。
何の変哲も無い、小箱だった。何が入っているのか分からないが、今は開ける気にならないので、傍らに置く。
「ありがとう」
「いや良いんだよ。じゃあ私はこれで。また夕飯の頃に迎えに来るから、しっかり覚えていてくれ。忘れられては流石の私も悲しい。あ、忘れないようにメモをしてくれても構わない。寧ろそうしてくれ。さぁ、時間は私に合わせてもらうから、適当に夕飯、とぜも書いておいてくれ。…何を固まっている?早く書け」
不思議そうに首を傾げる彼に静かに首を振ると、ノートの隅に『夕飯』と書き込むんだ。
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