コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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【凜太郎一周年記念】ブレイブストーリー
日時: 2016/07/19 17:35
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

初めましてか何度目まして、凜太郎です
まぁ、一周年記念と書きましたが、実質僕が初めてカキコに来たのは6月20日くらい。
大体、一ヶ月前ですねw
さて、それでですね。僕が初めて小説を上げたジャンルが、このコメライ板だったわけでして
あれから月日がたち、最近では複雑だとか、二次創作だとかで活動することが多くなってきました
そこで、折角1年もたったんだし、初心に戻ってコメライに小説をあげてみようと思ったわけです
ワーワーパチパチ

ハイ、雑談はここまでです
さて、今日から書いていくのは、ブレイブストーリー。直訳すると勇気物語ですね
内容的には異世界物を書いていきたいと思っています
皆さんを楽しませられる小説を書いていこうと思っているので、応援してください
それでは、よろしくお願いします。

Page:1



Re: 【凜太郎一周年記念】ブレイブストーリー ( No.1 )
日時: 2016/07/20 14:07
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

プロローグ

「この世界に災厄訪れる時、別世界より選ばれし者現れたり。その者が伝説の剣を抜きし時、世界は救われるであろう」

 古びた巻物を読み終えた老人は、「これが、古くから伝わる伝説じゃ」と言い、腹の辺りまで生えた髭を撫でた。
 それを聞いた周りの人間たちは、顔を見合わせ苦い顔をした。
 すると、金髪の少年が手に、装飾が施された剣を持って舌打ちをした。

「じゃあ、俺が祠で見つけたこの剣が、その伝説の剣とやらってわけか」
「左様。しかし、問題はそれを抜ける者がこの場にいないというわけか。トウマ。村一番の力持ちであるお主ですら、剣を抜けないのであろう?」
「・・・・・・あぁ。ビクともしねぇよこの剣」

 トウマと呼ばれた少年は、そう言って剣を睨む。
 鞘に納まったままの剣は、それをあざ笑うかのようにそこに佇んでいる。

「しかし、伝説では別世界と書いてある。つまり、別世界の人間が、これを抜けるというわけじゃ」
「別世界・・・・・・」

 薄いレモン色の少女は老人の言葉を復唱する。
 老人は剣を手に取ると、少女に渡した。

「危険な任務だということは分かっておる。しかし、孫であるお主に、頼みたい。この剣を持って別世界に行き、この剣を抜ける者を探してきてはくれんか」
「おじいちゃん・・・・・・」

 少女は目を見開き、少し考えてうなずいた。

「うん。私、みんなのために頑張る」

−−−

「って、言ってみたのはいいけど・・・・・・」

 私は伝説の剣を手にため息をついた。

「誰が剣を抜けるかなんて知らないよ〜!それに、通りかかる人全員に剣抜いてみて、なんて頼めないし・・・・・・」
「確かにそうだよなぁ。そんなことしたら不審者だと思われちまう」
「うんうん。私たちの村じゃまだ許されるけど、この世界の価値観とか分からないし・・・・・・って、へ?」

 後ろを見ると、頭から小さな黒い羽をはやした男が立っていた。
 彼は私の顔と、手に持っている剣を見てニタァと笑った。
 私は剣を胸に抱き、ひたすら走った。

Re: 【凜太郎一周年記念】ブレイブストーリー ( No.2 )
日時: 2016/07/21 17:31
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

1:出会いは唐突に

「じゃあ、気を付けてね」
「うん。母さんも」

 僕が手を振ると、母さんも手を振り、車のエンジンをかけた。
 白い軽自動車が走り去っていくのを確認した僕は、軽く伸びをした。
 今日の修了式やらが終われば、明日からは夏休み。
 僕が所属する部活は文化部なので夏休み中の部活も大してないハズだし、宿題はあるが、運動部だった中学時代に比べればかなりのんびりできる休みが送れるに違いない。

「と言っても、よりによって今日は自転車がないというね・・・・・・」

 僕は肩を落とし呟いた。
 不運にも、昨日自転車の後輪がパンクしてしまい、現在修理に出しているのだ。
 学校からは自転車でも20分はかかる距離にあるため、今日は途中まで母に送ってもらったのだ。
 学校まで送ってもらってもいいのだが、学校の正門が開く時間と母さんの仕事の時間が合わないので、最終的には歩いていくことになる。
 朝の涼しさからか、暑くはない。セミの鳴き声や、風の音が妙によく聴こえる気がした。
 横断歩道を渡り少し急な下り坂を下りると、水が流れている場所があり、ちょっとした橋になっている場所からその水の部分が覗けた。
 覗き込むと、魚が泳いでいるのが見えた。

「へぇ、ここって結構自然多かったんだな」

 今までずっと通ってきたのに、全然気づけなかった。急いでいたから、だろうか。

「たまにはこういうのも、いいな」

 一人呟いてさらに歩くと、そこには陸上競技場があった。
 その周りを囲むように道路が沿っており、その端の方に自転車置き場があり、いくつか自転車が留まっていた。
 車も数台程度。こんな時間から、なんでそこそこの数が留まってるんだ?

「何か大会の準備とかでもやってるのかな?そろそろ県大会とかもあ・・・・・・」

 好奇心から会場を覗き込んだその時だった。

「きゃぁ!」

 足元に転がる、妙に装飾がちゃんと施された剣。その少し離れた所に転がる少女。
 少女の髪は綺麗なレモン色で、それを肩で揃えている。
 剣を拾って困っていると、少女に一人の男が近づいているのが分かった。

「ったく、手こずらせやがって・・・・・・だが、やっと追い詰めたぞ」

 少女に手を伸ばす男に、僕は咄嗟に剣を持ったまま体当たりをした。
 小柄な僕の体当たりなんて、あまり効かなかったようで、1、2歩後ずさった後で彼は僕の顔を睨む。
 僕はすぐに少女の前に立ち、両手を広げた。

「ぼ、暴力はいけないと、思います!」
「はぁ?」
「な・・・・・・ッ!?」

 男の呆れたような声と、少女の驚愕の声が聴こえた。
 僕はカラカラに乾いた喉に唾を飲み込み、まっすぐ男の顔を睨む。
 頭から生えた奇妙な黒い羽、赤と黒のボサボサした髪の奥で、赤い瞳が僕を睨む。
 僕は一歩後ずさり、剣を持ったまま視線だけはずらさない。

「何してるんですか!私のことは良いから、早く逃げてくださいよ!あ、剣はそこに置いて・・・・・・」
「そんなわけに、いくかよ・・・・・・」

 なんとか声を振り絞る。
 手から汗がジワジワと溢れだし、剣の鞘を濡らす。
 男はどこからか漆黒の剣を作り出し、僕の喉元に突き付ける。

「自殺志願者か?剣を置いてさっさと逃げればいいのになぁ」
「ぼ、僕は、逃げない!」
           ・・・・・
 僕は叫び、思い切り、剣を抜いた。

「えっ、嘘・・・・・・」
「うわ、何だこれ!?」

 赤く光る剣を見て、僕はつい驚いてしまった。だって、こんな風に光るなんて思わなかったんだもの。
 その光に目を細めた男は、「うおおおお!」と叫び、漆黒の剣を振り下ろしてくる。
 僕は咄嗟にその剣にタイミングを合わせて切り上げるように剣を振った。
 すると、漆黒の剣は根元から折れ、そのまま剣は男の額を掠めた。
 かすり傷だけで血が流れだし、男は驚いた様子でその傷の部分を押さえた。

「まさか・・・・・・お前が・・・・・・クッ!」

 なぜか悔しそうに顔を歪めると、男の姿は一瞬で消えた。
 僕はしばらく呆然とした後で、その場にへたりこんだ。

「あの・・・・・・」

 その時、おずおずと少女が話しかけてくる。
 あぁ、そういえばこの剣は話し方的に少女の所有物のようだったな。
 僕は剣を渡そうとして、その剣の刃が錆でボロボロになっていることに気付いた。

「わっ!?何これ、ボロボロじゃん・・・・・・よく分からないけど、ちゃんと手入れしないと・・・・・・」

 僕の言葉を遮るように、彼女は僕の肩に手を置いた。
 そして嬉しそうな、泣きそうな笑顔で言う。

「貴方が・・・・・・勇者様なんですね!」
「・・・・・・は?」

 ポカンとした僕は、間抜けな声を出してしまった。
 少女は嬉しそうに手をパチパチしている。

「あ、私の名前はユリです」
「あっ・・・・・・勇気です。えっと、勇者の勇に気持ちの気で・・・・・・」
「勇者!」

 ユリと名乗った少女は嬉しそうに言うと、手を胸の前で叩く。
 この子・・・・・・話聞いてる?

「じゃあ、勇気さん!とりあえず、私についてきてください!」
「いや、僕には学校と言うものが・・・・・・」

 強引に腕を引かれ連れていかれると、アスファルトの地面に魔法陣のようなものが描かれていた。

「あの、これってどういう・・・・・・」
「行きましょう!」

 手を掴まれたまま、少女は魔法陣に飛び込んだ。
 もちろん僕も引っ張られる形で連れていかれる。
 眩しい光に、僕は目を瞑った。

Re: 【凜太郎一周年記念】ブレイブストーリー ( No.3 )
日時: 2016/07/22 22:00
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

2:異世界

「付きましたよ!」

 聞き覚えのある少女の声に、僕は目を見開く。
 そこには、中世ヨーロッパ風の町が広がっていた。
 外国にでも来たのか?僕は。
 そう思いたいが、空を明らかにドラゴンが飛んでいる上にそれに誰も反応していない辺り、異世界か。

「あのぉ・・・・・・僕、そろそろ学校に行かないと、時間が・・・・・・」
「学校ならここにもありますから、ご安心を!」
「人の話聞け。僕は、僕がいた世界の学校に行きたいの!」
「え?勇者様でも学校に行くのですか?」
「だぁから・・・・・・うがぁッ!」

 生まれて初めて、人との、しかも女子との会話で声を荒げてしまう。
 この子は天然でも混じっているのかもしれない。

「お、落ち着いてください勇者様!とにかく、おじ・・・・・・長老に顔を出しに行かないと」
「僕は行かないぞ!」

 僕の言葉に、ユリはキョトンと首を傾げた。
 性格は変とは言え、顔はかなりの美少女。しかも結構タイプ。
 不覚にも僕の心臓はドキッとしてしまうが、とはいえここで流されるわけにはいかない。
 割とこれは命に関わる問題だ。

「と、とにかく!僕は、帰る!魔法陣はどこに・・・・・・」
「おー。ユリ、帰ったのかー。ん?ソイツは誰だ?」

 僕の言葉を遮るように現れたのは、金髪の少年だった。
 右肩には木材を担ぎ、左手には釘やらトンカチなどの工具が入った木のバケツを持っていた。
 彼は僕の顔を見ると、眉を潜めた。
 ユリは、僕の後ろまで走り込むと、ポンッと僕の肩を叩き、「彼が別世界の勇者様だよ!」と嬉しそうな声で言った。

「あ?この弱そうなのが?」
「いや、もう帰るので・・・・・・」
「だって、この人トウマでも抜けなかったあの剣抜いたんだよ!だから、勇者様」
「だからもう帰るって!」
「へぇー。じゃあ、今すぐお前の所の長老様に挨拶しに行かねぇと行けねぇな」
「お前ら人の話を聞けー!」

 僕の叫びは、虚しく響き渡った。

−−−

 結局、長老の所に連れていかれた。
 いや、逃げようとはしたよ?とはいえ、僕より背も高く、力持ちで、ついでに顔もそこそこカッコいいトウマとか言う少年に首根っこを掴まれ、まるで猫のように連れていかれた。
 そして、現在家のドアの前で彼は腕を組んでこちらを睨んでいる。
 恐らく、逃げることは不可能だろう。

「それで少年よ。名を名乗れ」
「いや、それより家に・・・・・・」

 帰らせて、と言うより前に、背筋に寒気がした。
 振り返ると、いつの間にか近くまできていたトウマとやらが、僕の首に農作業用の鎌のようなものを突き付けていた。
 それを見た長老?が、「トウマ!」と怒鳴った。

「止めなさい。彼は勇者様なのだぞ」
「ですが、長老様の言うことを聞かないなんて・・・・・・」
「なに、それならわしにだって方法は色々あったしのう」

 腹の辺りまで生えた髭を撫でながら、長老は笑う。
 その笑顔に、僕はさっき以上に寒気が走った。

「えっと、あ、雨宮 勇気です」
「ふむ。長い名前だな」
「え?いや、雨宮が苗字で、勇気が名前ですけど・・・・・・」
「苗字とは、なんだ?」
「もういいです。勇気で」

 説明が面倒だった。なんだ?この世界は。苗字という概念がないのか?
 やっぱり異世界ってのはよく分からないな。当たり前か。

「ユウキ君だね。わしの名前はギンゾウ。まぁ、名前で呼ばれるのは慣れておらんから、長老と呼んでくれ」
「えっと、じゃあ、長老様。あの、なんで僕はこの世界に呼ばれたんでしょうか?」
「ふむ・・・・・・少し、説明が長くなるか、ええかのう?」
「あぁ、ハイ・・・・・・」

 僕の肯定の言葉を聞いた長老は手元に古い巻物を持ってきて、口を開いた。

「この世界は今、魔王に支配されようとしている」

Re: 【凜太郎一周年記念】ブレイブストーリー ( No.4 )
日時: 2016/07/24 16:23
名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)

3:世界の災厄

「ま、魔王・・・・・・?」

 僕はポカンと口を開け固まってしまった。
 いや、思い切りファンタジーな設定がこれまた唐突にくるものだから、驚いたのだ。
 それを聞いた長老は、「うむ」と頷いた。

「そうじゃ。あぁ、話が長くなるから、足は崩してもよいぞ」

 長老の言葉に、僕は正座を崩し、胡坐を掻く。
 長老はそれを確認すると、静かに口を開いた。

「始まりは、100年前じゃ」

−−−100年前−−−

 燃え盛る炎の中、少年は一人走り続ける。
 振り返ると、炎の後ろには背中や頭から黒い翼を生やした化け物たちが追いかけてくる。
 少年が走り続けると、目の前に逞しい男が現れた。
 彼は装飾が施された剣を手に立っていて、少年が自分の方向に走ってくるのを確認すると、少年を優しく抱き止めた。

「ギンゾウ!大丈夫か?怪我はないか?」
「うん。大丈夫だよ。でも・・・・・・追われて・・・・・・」
「安心しろ。後は、ワシが片づけるから」

 ギンゾウを守るように前に立ちはだかった青年は、その装飾が施された剣を抜く。
 炎を反射し、赤く光る剣を構え、彼は叫んだ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」


 どれくらい経っただろうか。化け物は切り伏せられ、そこには一人の青年だけが立っていた。
 彼はオレンジ色の髪に付いた血を見て息を吐きつつ、剣に付いた血を払って落とす。
 そして、背後にある6割が破壊された建物の中で震えている少年に目を向けた。

「ギンゾウ、大丈夫か?」
「俺より・・・・・・リュウヤ兄の方が・・・・・・」
「はっはっは!ワシはこの通りピンピンしてらぁ!魔王軍だろうが何だろうが、ワシの大事な弟に傷一つ付けさせやしねぇ!」

 リュウヤはそう言って自分の胸を親指で差すと、ニカッと笑った。
 それを見て、ギンゾウの顔も少し綻ぶ。
 「しかし・・・・・・」とリュウヤは自分が生まれ育った故郷を見て舌打ちをした。

「これじゃあ、この村はもう無理じゃのう。まぁ、とりあえずお前が生きていただけマシではあるがのぉ」
「うん・・・・・・あっ、リュウヤ兄!」

 ギンゾウが叫ぶのと同時に、リュウヤの肩を火の球が抉る。
 振り返ると、そこには今までの敵よりも明らかに大きな漆黒の翼を持ち、額からは黒い角を生やした男が立っていた。
 彼は真っ赤な瞳で、まっすぐ、リュウヤとギンゾウを見ている。

「お前は・・・・・・魔王ッ!」
「四天王も、やられたか・・・・・・殺したのは、お前か・・・・・・」
「・・・・・・あぁ。ワシ等の村を奪ったからな。貴様だけは、例えこの命が尽きようとも、ワシが倒したるッ!」

−−−

「・・・・・・」

 ゴクリ、と。僕は生唾を飲み込んだ。
 ちょっとした歴史の話かと思えば、少年漫画のような、熱い戦いになっていたからだ。
 長老様は一度目を瞑り、また開く。

「激しい攻防の末、兄は魔王を追い込んだ・・・・・・」

−−−

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」

 肩で息をするリュウヤと、胸から血を流し崩れる魔王。
 魔王は赤い目でギロリとリュウヤを睨んだ。

「リュウヤ兄!早くしないと、やられちゃうよ!」
「分かってるッ!」

 リュウヤはギンゾウの言葉に頷くと、魔王にトドメの一撃で首を切り落とした。
 魔王の首からは、どす黒い血が噴水のように溢れだし、リュウヤの綺麗なオレンジ色の髪を黒く染める。
 その時、ドクンッとリュウヤの体が振動する。

「ぁぁ・・・・・・あ・・・・・・」
「リュウヤ兄!?」
「ククッ・・・・・・グハハハッ!愚かだなぁ人間は!」

 苦しみ、蹲るリュウヤの口から、魔王の声が聞こえてきた。
 ギンゾウが恐る恐るリュウヤの顔を覗き込むと、リュウヤの目は赤く染まっていた。

「うわぁ!?」
「俺様はなぁ。こうやって、倒した人間の体に、血が流れればその血をその者の体に付着させ、毒殺や遠方からの殺し方なら魔力を飛ばし、こうして今まで生きてきたのさッ!」

 体は苦しんでいるのに、声だけは慄然とした言い方。
 ギンゾウは目を見開き、愕然とした様子でそれを聞いていた。
 その時、リュウヤの腕が、ガクガクと震えながらも、剣を掴む。

「おいおい、コイツ意志がつえーな・・・・・・だが、もう少しで・・・・・・ッ!
 ・・・・・・ゴチャ、ゴチャ・・・・・・うるせぇんだよぉ!」

 突然、声がリュウヤのものに変わる。
 喉から大量の血を吐き出し。真っ赤な血が地面に大きな染みを作る。
 リュウヤは両手で空間を切り裂くと、ガクッと膝を付く。

「なんだ・・・・・・この裂け目は・・・・・・ッ!
 この剣は、魔法石を埋め込んで作った、特別製の剣なのさ・・・・・・ッ!どういう原理かはよー知らんが、魔力を込めて斬れば・・・・・・空間の狭間の中に特定のものを封印することができる。と言っても、ワシの魔力じゃ、100年が限界じゃがな・・・・・・ッ!」
「そんな・・・・・・ッ!リュウヤ兄!」
「へへッ!ギンゾウ!そんな顔すんな!」

 リュウヤはニカッと笑うと、剣を空に掲げた。

「残りの魔力は、この剣に・・・・・・コイツには、魔法を込めておく。ワシが魔王に支配され、100年後、解放された時・・・・・・強くなったワシを、殺せるほどの魔力を・・・・・・ッ!だが、それが悪しき者に渡らぬよう、心優しい、人の為に命を投げ出せる、優しい者にしか、抜けぬよう・・・・・・。
 そんな者が現れてたまるかぁッ!別世界の者じゃッ!ここではない、異世界の者にしか抜けぬッ!」

 目や口から血を流しながら、リュウヤはそう言って剣を鞘にしまった。いや、途中からは魔王か。
 すると、刃と鞘の隙間から赤い光が漏れ、それは地面に転がった。
 意識ももう、ほとんどが魔王に支配され、目は赤く染まり、流れ出す血は赤から黒になっていた。
 しかし、リュウヤは残った微かな意識を使って、身を空間の裂け目に投じた。
 呆然としていたギンゾウは、フラフラと剣まで歩き、拾う。

「リュウヤ兄の仇・・・・・・絶対取ってやる・・・・・・」

−−−

「・・・・・・と、言うわけじゃ」

 長老様の言葉に、僕はふぅーと息を吐いた。
 なんていうか、すごい話だった。緊張続きで口の中がカラカラだ。

「それで、僕じゃないとできないわけ、ですか?」
「そうじゃ。だから、頼む。この通りじゃ・・・・・・」

 長老様はそう言って頭を下げてきた。

「そ、そんなこと言われても、僕、ただの高校生ですし・・・・・・それに、異世界のことなんて・・・・・・」

 否定しようとしていた時、突然外から爆音が聴こえてきた。


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