コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 私、僕と
- 日時: 2016/08/20 20:45
- 名前: ゆきらん (ID: 4IM7Z4vJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=11477
『僕の中で、私って何かが渦巻いているんだ。』
初めまして、ゆきらんと申します。
性別の転換現象が起きた世界で、主人公、遥輝の友情や恋愛を書いた物語です。
シリアスや少しエッチなのもちょっと出てきます。
多分そこまででは無いと思いますが...
プロフィールに書いてある、小説家になろう様でも連載させていただいております。
そこに追いつくまでは毎日投稿予定です。
ではでは宜しければご覧くださいませ。
Page:1 2
- 始まりの日 1 ( No.1 )
- 日時: 2016/08/20 20:30
- 名前: ゆきらん (ID: 4IM7Z4vJ)
朝だ。いつも通りの朝。時計は6時の長針が下に行ったことを示している。11月の第二週、世間的にはハロウィンが終わり、商魂たくましい店はクリスマスを意識している。僕は起き上がり、昨晩の内に用意していた着替えに手を掛ける。
「遥輝!そろそろ起きなさい!」
一階から母の怒鳴り声。起きてるよー、等と適当にあしらい、着替えを続ける。まだ高校の制服では無く、ただの部屋着だからすぐ済むのだけど。
着替え終わった僕は階段を下り、洗面台に向かい顔を洗い歯を磨く。鏡に写る姿はいつも見慣れた自分の姿だ。高校二年生の後半男子。身長だけは伸び、体系も普通だが、顔も普通の男子だ。イケメンとは言い難い。
「父さんは?」
「いつもの通り、もう出かけた。」
「そっか。」
洗面台を離れ、リビングに言った僕は、母に姿の見えない父の所在を尋ねた。毎朝の決まりみたいな物だ。父は朝早くから仕事に行くことが多い。しかし、たまにまだ寝ている事もある。何の仕事をしているかは詳しく知らないけれど、興味も特に無い。父本人とも、会話をここ最近はしていない。こちらに無関心の相手に関心を持つことはそう容易ではないと思う。
『本日未明、身元不明の男性の遺体が発見されました。場所は…
と箱の中のアナウンサーが、毎日の様に増え続ける殺人事件の原稿を、無感情に読み進めている。このひとも飽きないのだろうか。
「ほんと、物騒な世の中ね。」
食パンを齧りながら、決まり文句のように母が呟く。そうだね。と僕も答える。寿命通りに生きることも難しいこの世界で、僕は惰性のみでいつまで生きられるのだろう。わかるはずも無い問いはしばらくの間胸の中で回り続けた。
- 始まりの日 2 ( No.2 )
- 日時: 2016/08/20 20:39
- 名前: ゆきらん (ID: 4IM7Z4vJ)
「いってきます。」
起きてから30分で支度を済ませた僕は、母にそう言い家を出、歩いて10分もかからない電車の最寄駅へと向かう。
耳に入れたウォークマンのイヤホンから流れる曲は、今流行りのアーティストの曲だとかアニソン、恋愛ソングとか。なんとなく聞く曲を増やしすぎた僕のプレーヤーは、世の中の縮図みたくごちゃまぜになっている。
「ドアがしまりまーす。」
いつもと変わらない時間の、いつもと変わらない車両。周りの人達も変わらない。スマホのアプリをしている女子高生、満員電車で器用に缶コーヒーを飲む会社員、私立小学校に通う小学生。他にも多数、毎日のメンバーは決まっている。向こう側も僕に同じことは思っているだろう。
『次はー…お出口は…』
電車が次の駅に着く。大多数の人はそこで降りるので、電車の中にはほぼ人はいなくなる。運が良ければ席にも座れる。僕の目の前の人が腰を上げる。今日は運が良かったみたいだ。
「ドアがしまりまーす。」
先ほどと変わらないイントネーションが電車内に聞こえる。誰か駆け込みをしたらしく一回開き、また閉まる。ここからまだしばらく電車に揺られる。
—世界に劇的な変化が欲しい。
僕はいつもそう思っている。初めに感じたのはいつだったか、よくある厨二病だろうけど、もう世界には飽きたのだ。死にたいとは思わない。人生が楽しくない訳では無いからだ。あくびを一つし、ウォークマンの設定をシャッフルにし、僕は目を閉じた。
- 始まりの日 3 ( No.3 )
- 日時: 2016/08/20 20:40
- 名前: ゆきらん (ID: 4IM7Z4vJ)
電車を降り、20分程度歩くと学校だ。特段優秀なわけでも、下の方でも無い学校。受験が面倒くさく、適当に行けるところを選んだ結果の場所だ。ちょっとした自慢だけど、それでも成績は上の方だったみたい。もっとも、入ってからも勉強をしなかったため中の下に落ち着いているが。
おはよー。おはー。最近寒いよねー。
なんて周りの女子が声を掛け合っている下駄箱を突っ切り、三階へ上がり、僕は自分の教室、二組に入る。くじ運だけは良い方なのか、僕は毎回後ろの方の席になる。羨ましいとは言われるが、友達とは離れることばかりだ。
そんな自分の席に座り、スマホをいじる。さっき話に出した通り、別に友達がいないわけでは無い。ただ、朝はテンションが上がらない。友達もそのことを理解している。ちらちらとこちらを見る三人の友達を無視し、アプリでモンスターを倒して行く。こんなことして何になるんだろう、とは何度も考えているけど、別に辞める理由も無い。
「おはよー。」
「よーう。」
チャイムが鳴る直前、隣の席の女子、日向が席に座りながら声をかけてくる。ローテンションってことを知りながらもほぼ毎日声をかけてくるのでもう慣れてしまった。
「またゲーム?」
「そうだよ。」
スマホから目を離さずに返事をする。それでも気にせず話を続ける日向。
「明とかとも話せばいいじゃん。」
「何回も言ってんじゃん?俺は朝テンションが上がんねーって。」
なんとなく人と話すときは一人称が変わる。周りに合わすため、浮きたくないからかも知れない。
「友達と話してれば上がらない?」
「上がらない。」
そっかなー…と呟くのを後目にダンジョンをクリアする。
誰にでも話しかける日向は男子からも人気が高い。しかし進級直後、僕はこの女子に告白をされ、二か月後振られた。理由を聞くと。
「いやねー?遥輝さ、遠くから見ている方が面白いなーって思って。」
なんだそれ、と笑いながら言った記憶がある。それからも変わらずこんな調子なのだ。付き合っていたことも誰にも言っていない。だからこの席も決まった時から妬まれている。また彼女を作る理由も無い。けど作らない理由も無い。席も変わろうと思えば変わってやれたけど、変わる理由も無い。つまり、そういう事かも知れない。
『キーンコーンカーンコーン…
チャイムの音と同時に立っていた生徒は一部を除いて一斉に席に座る。一部は先生に怒られ、席にしぶしぶ座る。これもいつもの光景。
「にっちょーく。挨拶。」
「きりーつ…
日直の号令は、一日の二回目の始まり。そんな気がする。戯言を考えながら、いつも通りの、飽きたゲームが始まるのを僕は後ろから眺めていた。
- 始まりの日 4 ( No.4 )
- 日時: 2016/08/20 20:42
- 名前: ゆきらん (ID: 4IM7Z4vJ)
放課後
「終わったー、帰ろうぜ遥輝。」
「今日は図書委員会の仕事無いべ?確か。」
一日のルーチンワークが終わり、友達が声をかけてくる。朝のこちらに目をかけていた奴らだ。日向の机に一人は座っている。机の所有者は先ほど部活に向かった。
「無い。帰るかー、名月は?」
「あいつもういなかったし生徒会だろ。多分な。」
「ふーん、明は野球部良いのか?」
「今日は定休日。火曜日じゃん?」
「あ、そうか。」
委員の仕事が無い日、僕は友達と帰る。さっきも言ったが別に毎日がつまらないわけでは無い。こいつらといる時は楽しい。明とは高一からの親友だ。趣味すらも何も共通点が無い。部活に縛られているからそう遊べるわけでも無い。だけど、不思議と仲が良い。
「昨日のカマオ見た?」
「見た見た。いつもすげーよな毒舌で。美冬は?」
「昨日早く寝ちゃったんだよねー。見れてないや。」
帰り道を歩く中、あくびをしながら言う。授業中も寝ていたのに、まだ眠そうだ。
名月と美冬は高二からの友達。クラス替えの時友達が別のクラスに散らばってしまった二人を、春夏秋冬全員揃ったじゃん!と言い、無理矢理引き込んだ形だ。
「一昨日アニメ見たからさー。バランスとったんよ。」
「あー、あれね。異能力バトルって、もう飽きない?」
「わかってないなー、遥輝は。」
美冬の影響でアニメを見始めた僕はなんとなく染まりつつあることに密かに恐怖している。染まっていない明は見ていない。どちらかというと流行りのドラマとかそんなのを見ている。
「じゃ、俺こっちだから。またー。」
「明日ー。」
駅のホームに着き、逆方向の美冬は少し早めに電車に乗り込む。僕達の方は、まだかかる。快速が止まらない駅なので、一本通過するのを待つ。
「遥輝、今日バイトは?」
「無い、けど遅くはなれない。」
「じゃ、今日は無理か。」
稀に僕達は夜中まで遊んで帰る。補導されたことは無いものの、注意されたことはある。夜中に海で遊んでいた時のみだ。母親がいない時しか行かない。今日はいる予定だ。
「ごめんなー。」
「別に、なんとなく、今日遊んでおきたい気がしただけ。」
快速電車が通過する。僕の髪がなびく。
「どういうことだよそれ。俺が死ぬみたいに。」
「わっかんねえ。なんとなくだって。」
笑いながら話す明に、釣られて僕も笑う。飽きてはいるけど、まだ死にたくはないな、と思いながら。その後、電車が来るまで僕達は一言も喋らなかった—いや、明が降りるまで。
「じゃ、また明日。」
「おう。」
「死ぬなよ?」
「死なねーよ。」
あいつが友達でいることが、満足できることかも知れない。無意識にそう思いながら、スマホを見る。
『今日出かけてます。遅くなります。』
母からのLINEだった。もう少し早く言ってくれていれば。どうにも噛み合わない。僕はため息をする。
こういう時は父親とホテルにでも行くのだろう。別にもうバレてるし、自分だってそうやって作られてしまったのだから、気になんかする必要無いのに、逆に嫌な感じだ。明日は父さんは休み、ってことだろう。
下車駅の名前がアナウンスで呼ばれた僕は席から立ち上がる。帰っても、やることは無い。早く寝よう。僕は誰にも知らせていないSNSに愚痴を書き、電車を降りた。
思えば、この時どれかの歯車が一個でも噛み合っていたならば、僕の運命は大きく変わっていただろうと、そう思う。
Page:1 2
この掲示板は過去ログ化されています。