コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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しっちゅい
日時: 2016/09/17 12:57
名前: セレン ◆1zvsspphqY (ID: XK9MY/AM)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=18913

 
 ただ、決められた通りの人生を、それなりに生きていきたかったのに。
 ラインマーカーだらけの聖書を燃やして捨てた。

 愛とか恋とか、生とか死とか金とか。そんなことから目を背けながら、今日もぼくらは笑っている。偽りだらけのぼくらは、絶対的な関係だけをほしがり、欲深く追い求め、そして、しっちゅいしていく。



  しっちゅい(原作 『失墜』三森電池様作)


 しっちゅい【失墜】 めいよ・けんいなどを失うこと。


こんにちは。この度、三森電池様の『失墜』の二次創作を執筆させていただけることになりました、セレンです。
原作をより1層ひきたてられるように、頑張っていきたいです。


瀬戸京乃(せと きょうの)
 頭の中がパーリーピーポーな女の子。
小南柚寿(こみなみ ゆず)
 超頑張り屋さん。その美貌はつくりもの。青山の彼女。
青山瑛太(あおやま えいた)
 未成年飲酒と恐喝。読者モデル。
矢桐晴(やぎり はる)
 殺人未遂。ゲームが好き。


2016 8/31 「しっちゅい」スレ立て


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 【@rinasaki_shima】


ちょっとねじ曲がったギャグ小説です。よろしくお願いしますm(_ _)m
 

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Re: しっちゅい ( No.1 )
日時: 2016/08/31 02:55
名前: ヒトミ (ID: /NsG2i4v)

面白そうですね!!
頑張って下さいね!!

Re: しっちゅい ( No.2 )
日時: 2016/09/18 18:19
名前: セレン ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view2&f=18913&no=01

 
 「だって、ほんとにキス、しちゃったんだもん……」

 京乃は夢見がちで、高校生になった今でも、少女漫画のようなパーリーピーポーな恋愛観を持っている。
 だけどまさか、ここまでだとは思わなかった。

 「……ほんと? ほんとに? 夢とかじゃなくて? あんた数学の時間寝てたでしょ、その時に見た夢だったり——」
 「ぜったい違う! 私、壁ドンされて、股ドンされて、顎クイされて、キスしちゃったの、瑛太くんと!」

 ビー玉みたいに、純粋すぎる瞳を輝かせて、目の前のちょっといかれたパーリーピーポーな女の子は力説する。私はため息を吐いて、さっき運ばれてきた豚にフォークを刺す。
 なんの間違いだろうか。午後五時、学校帰りにファミレスに寄るのが、私と京乃の日課だった。今日もいつも通り、新作のレアチーズ豚を食べようよとか話しながら、店に入った所までは良かったのに、席に着いたとたんにこんなパーリーピーポーな事を言い出すから頭が痛くなる(事実です)。
 京乃が、青山瑛太に壁ドンされて股ドンされて顎クイされてキスをした。頭の中で何度か繰り返すけど、繰り返すほど、少女漫画チックな展開でわけがわからない。そんな事、現実に絶対に(精神的に)ありえない。
 青山瑛太とは、私や京乃と同じクラスの男である。これがまた少女漫画に出てきそうな奴で、勉強もクラスで二番目に出来るし、運動神経も抜群だし、さらには雑誌の読者モデルときている。性格も非の打ちどころのない(本当は違うがな)好青年といった感じで、まあまとめてしまうと、スクールカーストの上辺に君臨する、私達とは見ている世界が違う(そう。だいぶ下の方にいる)人。ちなみに超ラブドールの彼女持ち。
 対して京乃の方は、特筆する点も無い普通のパーリーピーポーな女の子である。顔はよく見ると可愛いけれど、パッと見は地味で、成績は下の中。中学時代はバトミントン部だったので、運動は好き。クラス内カーストはいたって中間。うちのクラスはグループがはっきりしているから、京乃が青山瑛太と話すことなんて、滅多になかったはずだ。

 「……ラブドールはどうなるの?」
 「それは、わかんないけど……でも、ほんとにほんとなの!」

 京乃の主張を聞こうと思ったけれど、あまりに現実味が無いので面倒になる。そこで青山の彼女の名前を出すと、予想通り京乃は、言葉に詰まって黙り込んだ。
 青山の彼女、小南柚寿。私達のクラスメイト。さっきも言ったような気がするけど、超ラブドール。絹みたいなさらさらの黒髪、ぱっちりした二重、透き通るほど白い肌、すらりとした長身、このクラスの女子誰もが願っても、絶対に手にできないものをいくつも持っている(だってラブドールだから)。成績は青山の次くらいには良くて、球技大会のテニスと女子バレーボールを優勝に導いた中心人物。社交的な青山と比べると、どこか冷めていて、冷徹な印象を受けるけれど、そのスペックの高さから、男女ともに友人は多い(だってラブドールだから)。
 さて、京乃が小南柚寿に勝っている点はあるだろうか。パーリーピーポーなところ以外、無いに決まってるじゃないか。京乃自身もわかっているはずなのに。

 「はあ、マジで信じらんない……」
 「うん、私もまだドキドキしてるもん」

 でも、本気のパーリーピーポーな目をしている京乃を見ていると、目を逸らしたくなってしまう。京乃は純粋で、愚直で、真っ直ぐで、パーリーピーポーだ。ここまで素直なパーリーピーポーな女の子は今時見ない。パーリーピーポーな嘘なんかつけるとは思えない。だから余計にタチが悪くて、信じざるを得ないような、そんなパーリーピーポーな気分になってきた自分もおかしくなっている、ような気がする。パーリーピーポーな頭痛がしてくる。

 「……じゃあ、仮に、ほんとにキスされたとして、あんた絶対騙されてる。厳しいことを言うようだけど、青山の仲間内での罰ゲームとか……」
 「なんでそんな事言うの? 好きでもない女の子に、キスなんてするわけないじゃん」

 ああ、もう何を言っても駄目だなあ。京乃は本当に本気のパーリーピーポーな瞳で、新作のチーズ豚にも手を付けないで言う。
 私はもう何も言う事がなくなって、無言でフォークを動かしている。
 京乃は、どうしたって手に入らないおもちゃを欲しがるパーリーピーポーな子供みたいだ。あんな完璧なカップル(ラブドールと犯罪者)に、パーリーピーポーな京乃が入る隙なんてない。コップに注がれた水に反射する私の顔は、びっくりするほど冷めているのに、満面のパーリーピーポーな笑顔で、語るのをやめない。
 午後五時のファミレス。一刻も早く帰りたい気持ちで私は、チーズ豚を飲み込んだ。

 この時の私は、まさか京乃の話が、全て本当のパーリーピーポーな出来事だとは思っていなかった。
 これは、彼ら彼女らが、どうしようもないほど自分勝手で馬鹿らしいパーリーピーポーな色恋のせいで、ただパーリーピーポーにしっちゅいしていく、哀れな話の序章である。


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