コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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僕は美しい
日時: 2016/09/04 23:15
名前: ガッキー (ID: fhP2fUVm)

どうも、私はガッキーという者でございます。ふと思い付いたので、書いてみようと思います。
モタモタした投稿になるとは思いますが、付き合っていただけると嬉しいです。ニヤニヤします。

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僕は美しい 【旅立ち】 ( No.1 )
日時: 2016/09/04 23:21
名前: ガッキー (ID: fhP2fUVm)

「・・・ねぇ、もう止めにしないかな?」
「何だ、怖くなったか」
一見、女性が男性に話し掛けたようにも取れるこの会話。しかし、本当は逆。前者が男性で後者が女性。僕が目の前の彼女に話し掛けたのだ。
「怖い怖くない云々の話じゃなくて、単純に危険過ぎるよ。ましてやここは、学校だからね」
これからやる事が、先生なんかにバレた日には、僕達はかなりの厳罰を受けるだろう。
それ程リスクのある行動。
僕が幾ら言い聞かせても、目の前の彼女は一向に止める素振りを見せない。
「場所は関係無い。材料さえあれば私が完成させよう」
「ここは化学部の部室だよ?部長だからってやって良い事と悪い事がーー」
「よし、出来た」
「・・・・・・」
僕の話にはちっとも耳を傾けず、彼女は化学部の部室に持ち込んだ材料を一人で組み立てていた。僕の忠告には目も向けない。
参ったな、僕じゃ彼女を止められない。
諦めの混じった瞳で窓の外を見ようとする。しかし、外からバレないように窓には黒幕を張っていたのだと気付き、視線を目の前の彼女に戻した。暇潰しに彼女の顔を見る。
僕には及ばないのは公然の事実として、それにしても彼女はかなり顔立ちの整っている方だと思う。
面倒だから、という理由で手入れはあまりされていない真っ黒な髪は腰辺り迄伸び、蛍光灯の光をうっすら反射して不思議な光沢を放っている。
僕の視線に気付いたのか、彼女は眼鏡のブリッジを中指で押し上げてから口を開いた。
「心配するな。今度こそ上手くいく」
「もう何回失敗したんだろうね。しかも、被験体は全部僕。失敗した際に機材が壊れて僕の顔に傷でも付けたりしたらと思うと、僕は夜も眠れないよ」
「芝居は良いから」
「・・・・・・」
本当なんだけどなぁ。
因みに、彼女の『今度こそ上手くいく』は『行けたら行く』と同じニュアンスで受け取ってもらって構わない。
成功した試しが無い。
「実験に失敗は付き物だろうに」
「それは、失敗した本人を慰める言葉だよ。君が言う事じゃない」
「・・・出来たぞ」
あ、無視された。
「この中に入れば良いのかな?」
目の前には、左右非対称のガラクタのような物。美しさも何もあったものじゃない。
嫌だなぁ。入りたくないなぁ。
しかし、ここで抵抗しても許してもらえる筈がない。僕の今の気分を例えるならば、殺処分される仔犬だ。諦めてガラクタのドア(らしき物)を開けた。ギシギシと、もうこの時点で失敗を確信させる程の嫌な音が聞こえる。
「・・・今度こそ大丈夫なんだよね?」
「安心しろ、私を誰だと思っている」
科学者気取りの捻くれ女子高生。
とか言ったらそこら辺の電動ドリルで頭蓋骨を音楽室の壁みたいにされるので、黙っておく。
「あ、そうだ」
彼女が何かを思い出したように切り出した。
「携帯は持ったか?」
「携帯?必要無いだろう。この装置に入るだけなのに」
「向こうへ行ったら、私と連絡を取る手段が無くなってしまう。持っておけ」
「要らない要らない」
どうせ失敗するんだしな。僕は心の中でそう言った。
「今何か失礼な事を考えていなかったか?」
「・・・始めてもらえるかな」
彼女の問い掛けを聞き流しつつ、意を決してその言葉を口にした。僕の言葉を聞いた彼女は、溜め息を吐きながらもパソコンのキーボードを叩き始めた。このガラクタはどうやらパソコンと連動しているらしい。


パチリ。
バチッ。
耳元で不穏な音が発生し、その音は次第に大きくなる。

ーーバリバリ。

それにしても、本当に成功するのだろうか。僕は今更ながら不安に思う。

ーーバリ、バキ、ミシッ。

今迄、幾度となく彼女の実験に付き合って(付き合わされて)きたが、今回の実験は桁が違う。

ーーーーーーーープツッ。


異世界に行く装置なんて、高校生に作れるのか?

Re: 僕は美しい 【実験の行方】 ( No.2 )
日時: 2016/09/04 23:21
名前: ガッキー (ID: fhP2fUVm)

そう言えば、まだ僕の自己紹介をしていなかった気がするな。この場を借りて、話させてもらおう。
僕の名前は、朔山・颯太(さくやま・そうた)。高校2年生。周りからはナルシストだとか言われるけど、ナルシストだって良いじゃないか。誰だって自分が可愛いし、自分を優先するだろう?僕は自分が大好きなだけだし、それを表に出しているだけ。
なのに、何故か友達は離れていくんだよなぁ。あまり大っぴらに言いたくはないけど、僕はナルシストらしい。
そんな中、化学部の部長である彼女とはどうしてか気が合うので、よく話す仲だ。端から見れば異端者同士の、気味の悪い集まりに見えるのだろうけど。
特徴としては、毎日シャンプーで念入りにケアしているこの黒髪だろうか。そこらの女子高生には負けない、サラサラな自慢の髪だ。


「・・・・・・と、こんな感じに長々と自己紹介をしてみても」
僕は自己紹介をストップし、髪をかき上げながら空を見上げた。
「この現実は変わらないんだよなぁ」
見渡す限りの緑。数分前迄は化学部の部室に居たというのに、いつの間にか僕はどこかへ移動していた。
「・・・・・・認めない。認めないぞ!」
言いながら、360度周りを見渡す。目に入るのは、鬱蒼と木々が茂っている緑色の風景だけで。肌色ーーつまりは人ーーは誰も居なかった。
僕一人。
唯一人。
「・・・、そうだ!連絡を入れればーー」
制服のポケットを弄(まさぐ)る。しかし、指先にはポケットの裏地以外何も触れない。反対側のポケットを確認するも、結果は同じ。




『携帯は持ったか?』
『携帯?必要無いだろう。この装置に入るだけなのに』
『向こうへ行ったら、私と連絡を取る手段が無くなってしまう。持っておけ』
『要らない要らない』





こんな会話をしていた気がする・・・!
「僕の馬鹿!いつもはベタ褒めするけど、今回ばかりは言わせてもらうぞ!僕の馬鹿!!」
僕の叫び声で、鳥が何匹か空へと羽ばたいた。
「・・・・・・どうするんだ、コレ」
取り敢えず歩こう。水の音が聞こえれば何とかなる。立ち上がると、身体の節々からパキパキと音が鳴った。どうやら僕は、結構長い間寝ていたらしい。
「まさか、実験が成功するとは」
制服に付いた汚れを手で払いながら呟く。今迄の結果が結果だっただけに、衝撃だった。
実験を行ったのが化学部の部室だったので、僕は上履きだった。普段は室内で使う上履きの靴底が汚れるのは嫌だが、靴下が汚れるのはもっと嫌だ。凹凸を感じ易い上履きの薄い靴底に不快感を覚えながらも歩く。
美しい森だ。勿論、僕には劣るけど。
僕が住む地域ではまず見られない光景だろう。これがただの旅行だったなら、大いにリフレッシュ出来た筈だ。
しかし、忘れてはならない。僕は今、割と危機的な状況下に置かれているという事を。
歩く事数十分。喉の渇きを覚えた頃に、水の音が聞こえた。最初は幻聴とも疑ったが、歩けば歩く程大きくなる水の音に、僕は確信した。
「か、川だ・・・!」
まずは水を飲んで、それから下流を目指そう。
頭の中でこれからの計画を立てながら歩く。いや、いつの間にか僕は走っていた。
木と木の間隔が広くなっていき、その隙間から青空が見えてくる。
太陽光に一瞬目を焼かれる。光を遮っていた木が無くなったからだ。
「ーー・・・・・・は?」
僕のこれからの計画である、下流を目指すという計画は早くも頓挫された。
目の前には水があった。僕が望んでいた水が。綺麗な水が。
しかし、水が流れる数メートル先は見えなかった。洞窟に続いている訳ではない。鼓膜を揺さぶるこの音の正体。
滝である。
「・・・・・・ツイてないなぁ」
念の為、水が見えなくなるギリギリ迄近付いて下を覗いてみるが、そこには目が眩む程の景色が待ち受けていた。自分が今立っている場所が恐ろしい程の高所である事を認識したら、足が竦んだ。下を覗き込む前の『水に流されながら落ちれば何とかなるかもしれない』と考えていた自分が馬鹿らしい。
「と、取り敢えず、水だけでも飲もう」
止まった思考を強引に切り替え、渇いた喉を潤す。激流ではあれど、濁流ではなかったのがせめてもの救いか。水は透明で美味しかった。
「・・・・・・」
本当にどうしようか。

Re: 僕は美しい 【思わぬ救済】 ( No.3 )
日時: 2016/09/11 21:02
名前: ガッキー (ID: .uCwXdh9)

胡座をかいてこれからの事を考える。元来た道を戻っても良いが、周りは同じような景色ばかり。加えて、走ってここまで来たので大方の道筋は疎(おろ)か、方角さえも憶えていない。苦悩する僕も勿論格好良いが、いつまでもこうしては居られない。
考える事を一旦止めて、空を見上げた。今居る場所は川岸なので木が少ない。空が良く見えた。
「・・・・・・」
チュンチュン、と何処かから鳥の鳴き声が聞こえた。鳥は良いよね。空を飛べて。僕は飛べない。木々に邪魔され、ここが何処なのかを知る事さえも出来ない。
「・・・、そうか」
僕に空を飛ぶ事は出来ない。
しかし、高い所へ上る事は出来る。
木に登って、周りを見渡せば、もしかしたらーー
「喉も潤したし、行こう」
立ち上がる。日向から日陰へーー川岸から森の中へ戻り、大きな木を探した。しかしこうも茂られると、大きな木を探すというのも中々難しい。色んな木の枝が交差し、緑やら焦げ茶色やらが入り混じり、上が見えないのだ。
けれど、僕は馬鹿じゃない。目を凝らして木を探す等といった非効率的な事はしない。
「まぁ、だからと言って木に詳しいとかそういう設定は僕には無いんだけどね・・・」
高さを見るのではなく、太さを見よう。
上ばかりを見上げるのではなく、前を見よう。
・・・つまり、木の幹が太ければそれに比例して上に成長しているのではないか。という僕の予想。恥ずかしい位に失敗する可能性もある訳だけど。まぁ、恥ずかしがる僕も美しいので取り敢えずやってみよう。




「駄目だ、このままだと僕に『あたまのわるいナルシスト』というレッテルが貼られてしまう・・・」
愕然。格好良く木の幹について語って、幹の太い木を見付けた所迄は良かった。僕らしい完璧な手際だった。
だが、僕は失念していたのだ。『これからの事』という漠然とした大きな課題に気を取られて、目の前の事に気を配れなかったのだ。
・・・読者諸君に問おう。

子供の頃にやった木登りって、どうやって登っていた?

普通は、よじ登ったり、木を蹴ってから枝を掴んで登ったりするだろう。
でも、木の幹が太いと問題が幾つか。
・幹が太過ぎて、木を上手く掴めない。
・木の背が高くて、跳躍しても手が届く位置に枝が無い。
「馬鹿過ぎる・・・!数分前の自信満々な僕を消し去りたい!」
頭を抱えて絶叫。何だか、この世界に来てから自分へ罵倒する事が多くなっている気がする。あちらの世界での、稀少な僕自身への罵倒と言えば、

『おいおい、僕・・・。そんなに体育で活躍してしまったら、運動部の面目丸潰れじゃないか。少しは彼等にも花を持たせないと。な?』
『幾ら僕の頭が良過ぎて授業が退屈だからって、寝てしまうのは悪い事だぞ?』

といった、結局文の最後には『まぁ、そんな僕も美しい!!』という言葉が付くような可愛らしい感じのヤツなのに!こっちではガチの罵倒じゃないか!このままでは僕の威厳と誇りに関わる。考えろ、考えるんだ・・・!
「何やってんだ?」
「木に登ろうとしているんだよ」
「はぁ?」
「今僕は考える事で忙しいんだ。少し静かにしてもらえるかな?」
「別に良いけどよ。何でこんな森の奥で木登りを?見た感じ、そんなに腕白ボーイには見えねぇが」
「この森の周りに何があるのかを知っておきたかったんだ。目が覚めてから緑色と茶色と水色と白色と水面に映る超絶ビューティフォーな自分の顔しか見ていないモノでね」
「面白い奴だな、お前。はっはっはっは」
男の笑い声を聞き流しながら僕は考えた。
大きな木に登れないなら、小さな木に登って、それから頃合いを図って大きな木に飛び移れば良いのではないか?いやしかし、これで、仮にもしもーー万が一にも僕がそのスタントに失敗した場合、僕の格好悪さはもう取り返しのつかない域に行ってしまうのではないか。
時には命よりもプライドを取ってしまうのが僕達人間というモノでして。時には非効率的な事をしてしまうのが僕達人間というモノでして。
「・・・・・・って、うん?」
「どうした?」
「お前は誰だ」
顔を上げて、先程から極自然に会話していた相手に指を指す。
茶色をベースに、所々赤色が入った奇妙な髪色をした男。服の胸と腕と脛(すね)の部分には鎧のようなモノが付けられていて、何かのコスプレかと疑った。否、現在進行系で疑っている。ここは異世界ではなくて、コスプレイヤー達にとっての撮影の聖地なのではないかーーと。
しかし、僕の下らない予想は外れた。
「俺か?俺はヨウ。スクエアで傭兵をやってる」
「すくえあ?」
「この森を抜けた東にある国の事だよ。知らねぇのか?」
「スクエアと言ったら四角形か。そんな名前の国、聞いた事無いけど」
「じゃあお前、どこから来たんだ?スクエアの近くに国は無かった筈だぜ?そんなナリじゃあ、遠路遥々って訳でも無さそうだしな」
「僕は日本から来たんだ」
一縷の望みを懸けて、僕は言った。
ここは異世界ではなくて、偶々(たまたま)日本語が公用語の外国だったりしないだろうか。僕が無知なだけで、外国にはスクエアという国がある。僕は何らかの理由で、寝ている間にスクエアという国迄運ばれたーーそんな可能性。
ヨウと名乗る男は、首を傾げた。
「ニホン?何だそりゃ」
僕の望みが絶たれた瞬間である。
「それは本気で言っているのかな?日本だよ日本」
「二本なら分かるけどよ、何だその面白いイントネーション」
可笑しい。イントネーションとか英語は使えるのに、日本を知らないなんて。ケラケラと笑う目の前の男に、僕はうっすらと恐怖感すら感じていた。
「おいおい、本気で大丈夫か?汗もスゲェし、頭とか打ってんなら早く手当しねぇと」
「い、いや、大丈夫だ。少し混乱しただけで。問題無い。話を戻そうか」
頭を振って絶望を脳内から強引に押し出しつつ、ヨウに促した。ヨウも「大丈夫なら良いけどよ・・・」と頬を掻きながら話を戻してくれた。
「んで、お前はこの森の周りにある物を知りたいんだったっけか」
「そうだ」
「その後はどうすんだ?思い出を残す為に風景をスケッチとか?」
しないしない。僕は首を横に振った。
・・・でも、確かにそうだ。森の周りにある物を知って、その後をどうしたら良いのか考えていなかった。
つくづく僕は要領の悪い人間だ。美しくない。
「・・・取り敢えず、これでスクエア迄乗せてってやるから」
ヨウの脳内で、どんな思考が働いていたのかは分からない。ヨウは数秒程考えてから、顎をクイッと動かして僕の視線を誘導した。僕の視線の先には、いつのまにか馬が一頭。僕とヨウが話している間は、空気を読んで静かにしていてくれたらしい。お利口さんだ。
ヨウが馬に跨る。僕がその様子をボーっと見ていると、ヨウが言った。
「どうした?早く乗れよ」
嫌味ではなく、単純に疑問を含ませた声色で、自分の後ろのスペースーー僕が座るスペースをポンポンと叩く。
僕はそのジェスチャーに笑顔で応じ、口を開いた。
「まず、乗り方を教えてもらえるかな?」


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