コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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甘くて熱いところをどうぞ
日時: 2016/12/27 18:15
名前: 甘露煮 (ID: giYvI9uD)

恋愛の苦くて冷たいところは省いて、甘くて熱いところを堪能したい人へ。


いろんなシチュエーションでお届けします。




*ラブシーンや非現実的な描写が苦手な方はお気を付けください*
*たまにご都合主義も入ります(多分)*

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1 こたつとみかんと大人と子供 ( No.1 )
日時: 2016/12/27 21:58
名前: 甘露煮 (ID: giYvI9uD)

「あー、あったかい」

軽く体を揺すれば、こたつ布団がかさかさと小さな音を立てる。私はこの音が結構好き。


わこわこと、何個目かわからないみかんの皮をむく。爪の間はすでに黄色くなっていて、でも私はそれが気にならないタイプだった。

みかんの皮をむくのが好きな私は、みかんを食べることはさほど好きじゃない。だから必ず誰かに食べさせる。今日食べさせる相手は隣ですうすう静かに眠っている私の彼氏だ。

さっきまでは起きてお酒と一緒にみかんを食べていたけど、酔ってしまったのか、ほんのりと赤い顔をした彼はあっという間に眠ってしまった。



「おーい」

とんとん。

「……」


「お〜い?」

ぺちぺち。

「……」


「おぉ〜い」

ゆさゆさ。

「……」


え、お酒入ってガチ寝パターン?


「えぇ〜」


つまんないの。

ふぅ、と息をつきながらほんのりと赤みのかかったその顔を見つめる。
長い睫毛がそのきれいな肌に影を落としてる。きれいな形の唇に視線を向けると、



———あ、やばい。


堰を切ったように体の奥底から溢れ出るこの感覚は。


だって裕也はいつも年下でしかも未成年な私にそんな迂闊に手なんて出せないとか言い訳ばっかして、じゃあなんでそんな私と付き合うなんて暴挙に出たのって何回も不満を飲み込んで、誤魔化すようにたまに寄こすのはぎこちない抱擁と子供だましのキスで。

物足りないって駄々捏ねたくても結局嫌われたくないっていう思いがストッパーになって、でも優しくされるだけの触れ合いじゃどうしても足りなくて。


いつも胸の奥には小さな不安が張り付いてて、だからこうやって……隙を見ると安心する、裕也のことを独り占めできてるって。


それで魔が差す、裕也からできないなら私からしちゃえば、って。

でも小心者な私はそんな思いきったこと、いつだって結局出来ず仕舞いで。


今だってそんな大胆なことはできない、でもちょっとくらい何か、いつもできないことを一つくらい……。


ひとつ、くらい……——



「ゆ、うや、さん」

「……」

「ゆうや……裕也さん」


「……何?」


「!」


突然開いたその目と視線が交わって、私は反射的に目をそらした。悪戯が親にバレた時のような緊張感が、私の心臓に負担をかける。


「お、きてたの……?」

「今起きたの。……藍ちゃん、さっきなんて言った?」


お酒のせいか、寝起きのせいか、いつもの穏やかな声じゃなく熱の籠ったその声は……なんというか、艶やかで。そのせいで私の心臓は余計に落ち着かなくなる。


「別、に……名前を呼んだ、だけで」

「なんて?」

「だから藤本さんの、っっ!」


手首をつかまれて、顔を覗き込まれて。私はそれだけで言いようのない感覚に襲われる。


「藍ちゃん?」

「ふっ、藤本さん、何……!」

「藤本さん?」

「え、」

「なんで名前で呼ばないの?」


まっすぐ私を見つめる、瞳。

この人はいとも簡単に私を追い詰める。今だって、その視線一つで。


ずるい。悔しい。……私だって、


「藤本さんこそっ……藤本さんこそなんで、私に手出さないんですか!」

「は?」

「いや別に全く出してないわけじゃないけどっ……でも中途半端に……子供だましみたいなキスとかハグばっかりで、いつも子供扱いするじゃないですか!藤本さんがそうやって子供扱いするから、だから私だって子供なりに藤本さんを大人扱いしなきゃいけなくなって、名前なんて呼び捨てにできないんです!だって私子供だから、藤本さんみたいな大人じゃないから……」


徐々に小さくなる私の声。その声が完全に消えて部屋に沈黙が落ちてから、私の中の熱は次第に冷めていった。冷めるだけではとどまらず今度は体の奥が冷えていく。


やっちゃった———しかも派手に。
この沈黙が何よりの証拠だ、私は確実にやらかした。取り返しのつかないことを言いまくった。


怖い。怖い。恐い。


「ご、ごめんなさい……!」


……嫌わないで……


勢い任せな謝罪の後から口をついて出た呟き声をかき消すように、私の体は包み込まれた。

痛いくらいの力が籠った、彼の腕で。


「ごめん。不安にさせてごめん」


「っ」


「でも言い訳させて、子供扱いとかそんなつもりじゃなかったんだ。むしろその逆。……子供扱いできなくなるのが怖くて、必死に取り繕って大人ぶってただけ。ホントにごめん。でも信じて、絶対嫌いになんかならない。半端な気持なんかじゃないんだ」


ぎゅうっと、さらに強い力で締め付けられた体には微かな痛みが走って、でもそれですごく満たされた気分になったって言ったらおかしいかな。


私も彼に応えるようにぎゅっと、出せるだけの力で抱きしめ返す。


……こんな風に、余裕なんてない触れ合いをずっと求めてた。嘘偽りも我慢も手加減もない、本気の触れ合いを。


いつまでそうしていたのか、音を上げたのは私が先だった。


「……熱い」

「俺も」


何せこたつの中ですから。


私たちはゆっくりと離れて、こたつから足を出す。
外気に触れた足はほんのりしびれるような感覚に包まれた。


体を離して向き合うと、なんだか照れくさくて仕方なかった。……でも嬉しい。本音が言えて、何より本音が聞けて嬉しい。


「へへ」

「あーもう……」

隠しもせずに頬を緩めると、困ったような、ちょっと拗ねたような表情を浮かべる彼。


次の瞬間、チュッという軽い音と共に一瞬だけ唇に熱が落とされる。
それは本当に一瞬で、何なら気のせいかと錯覚するくらいのもの。

「え、」

「これだから子供扱いできなくて困るんだよ」

もう大人ぶらないよ?と挑発するかのように告げられて、私はそれに乗せられるように唇を寄せた。


「……上等です」


その直後、磁石が引き寄せられるようにそれは重なった。重なり合ったところからはこたつのようにじんわりとしたぬくもりと、ほんのりとみかんの味が感じられた。





「そういえば藍ちゃん」

「? はい」

「もう俺のこと“大人扱い”しないでね?」

「……?」

「………」

「……あっ」

「鈍い彼女で苦労するよ、ほんと」

「ふふふ、は〜い。……裕也さん」



fin


お酒どこ行ったし。みかんはおそらく放置プレイ。


なんだかタイトルと離れてしまってすみません……





Re: 甘くて熱いところをどうぞ ( No.2 )
日時: 2016/12/28 09:15
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

初めまして!!
題名が気になって読んでみました←

まだ1更新目でしたが、作者さんの文章力がとても伝わってきました(。´ノω・`)。

最初の方の藍ちゃんと藤本さんの距離感とか、そこからラストへの持っていき方とか……なんだかほんとすごいなぁって((ボキャブラリーが少なくてすみません(((;°▽°))


そばで見ているみかんもきっと、熱い思いになったんじゃないかなと思います笑

次の話も楽しみにしてます!

また来ますね。


急にすみませんm(*_ _)m
お邪魔しました。

byてるてる522

Re: 甘くて熱いところをどうぞ ( No.3 )
日時: 2016/12/28 16:07
名前: 甘露煮 (ID: .9bdtmDI)

てるてる522さん、コメントありがとうございます!

まさかこんなに早くコメントを頂けるとは思ってなかったのでびっくりしました。しかもこんなに褒めていただいて……感激です( *´艸`)


おかげで更新意欲も湧き出てきました!


頑張るので今後ともよろしくお願いします( `・∀・´)ノヨロシク




by甘露煮


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