コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 『Crystal』
- 日時: 2016/12/28 10:04
- 名前: 碧 (ID: RnkmdEze)
『Crystal』
どんなに些細なくだらないことも。
大人になったら、その一つ一つが思い出になるのかな。
もう二度と見ること、感じることが出来ないことを
私は、いつの間にか、思い出せないでいる。
それはまるで宝石のようで
光に当てないと、綺麗なところは中々見えないんだ。
あの道を貴方と通ったこと。
あの日、君と同じ忘れ物をしたこと。
あの人に初めて話しかけたこと。
あの日、窓から見上げた空に感動を覚えたこと。
あの子と同じ本を偶然読んだこと。
ある人に本を貸したこと。
あの場所で、あの人に偶々会ったこと。
ある人から、話しかけてくれたこと。
他愛の無い会話を繰り返して笑ったこと。
冬に、マフラーを買ってもらったこと。
お腹がいたくなるくらい、君と笑ったこと。
泣いていたあの子に、笑ってもらえたこと。
貴方に、初めて悩みを君に打ち明けたこと。
初めて、貴方の前で泣いたこと。
忘れられなかったはずのに、
それはバラバラになったジグソーパズルみたいで。
冬の、午後六時の教室。
「ぁ、」
あの日、誰かと見たようなグラデーションがかかった空に
ポツン、と宝石のような三日月が淡い色で輝いていた。
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初めまして、碧です。
自分の思ったこと、感じたことを 小説にしたいな、と思いました。
タイトルを決めた後、自分でも考えてしまいました。
皆さんにはどんな思い出がありましたか?
それは、覚えているでしょうか。
Page:1
- Re: 『Crystal』 ( No.1 )
- 日時: 2016/12/31 01:01
- 名前: 碧 (ID: w4lZuq26)
「由紀、時間大丈夫か?」
歯ブラシを片手に、洗面所からお父さんが顔を出していた。
時計のほうに振り向くと、七時二十五分に針が止まっていた。
おー、丁度ピッタリ。
片手に持っていたスーパーのチラシを置いて鞄に弁当と水筒を詰め込む。今日は晴れだね、あ、ゴミ出し今日だ。
「朝御飯温めてね、お父さん。洋介、鍵忘れちゃダメだよ!準備できたら行くんだよー」
はぁい、と二つ分の暢気な返事が聞こえたのを確認して玄関へ向かう。靴紐が緩んでいないかを見て、鏡の前に立つ。
スカートよし、髪よし、スカーフよし、手帳入れたよね。確認終了。
いってきます、とドアを開けると空が見える。曇っていた空はすっかり晴れていて、昨日までの天気は何だったのだと思う程の快晴。
雨が降ることを祈っていた友達の顔がポワンと思い浮かんだ。....きっと佳っちゃん、ショックうけてるだろうな。
家を出て、近所のおばさんに挨拶をする。曲がり角を曲がると、健太の家が見えてきて、案の定あの子が吠えていた。最近会えてないなぁ、今日は会えるかな。
公園の入り口に、ゴミ袋を置いていつもの場所へ向かう。坂道を登って神社前の歩道に到着する。神社前の交差点には何人か中学生が、ちらほら渡っていた。
まだ、来てない。
待っている間は夜ご飯の献立を考える。キャベツ残ってたもんなぁ、焼きそば?お味噌あったっけ。
自然に欠伸が出て、布団に入りたくなった。まだ五月だから、ポカポカしているこの季節。洗濯物を乾いてくれるし、春って良いなぁ。
ぁ、
遠くから人影が走りながら此方に手を振っている。家が近い佳っちゃんこと、佳苗とは一緒に登校している。
「、、おはよー」
暗い顔で歩み寄ってきた佳っちゃんは怖かった。
「ど、どしたのー。そんな顔して」
「そんな顔してー、じゃないよ。体育あるんだよ。晴れたんだよ」
「そんなに、ハードル嫌なの」
「嫌だ」
ですよね。
佳っちゃんは、私や健太以外には嫌がって全く話さない。いつもクールな佳っちゃんが、こんな感じになるのは体育だけ。
余程嫌いなのか、うん。まぁ慣れたけど。
「今日由紀早かったね、何かあったの?」
「あぁ、お父さんが久し振りにお仕事休みなんだ。疲れてそうだったけど」
「なるほど。合点がいった」
交差点を渡り終え、古くからやっているコインナンドリーが見えてくると、見慣れた後ろ姿が二つあった。
あ、やっぱり....健太と、章ちゃんだ。
「お、いた」
「いたね」
話し声は聞こえなかったが、健太が章ちゃんの脇腹を小突いていた。
佳っちゃんが私に目配せして、のそりのそりと前の二人に近付いていく。
あれ、止めた方が良いのだろうか?
小学五年生の時、佳っちゃんと知り合った。その時は健太とも同じクラスで、三人で仲良くなった。中学生になって、一年ぶりに三人供揃った。
佳っちゃんとは五年で知り合ってからクラスが変わったことがない。春の始業式でお互いの名前を見つけた時、唖然とした。....今までのお釣りがきているのかなと笑い合ったのを覚えている。
始業式からもう、五月。今は、もう一人友達が増えた。
木村章平君、健太が章ちゃんと呼んだから私も便乗して呼んでいる。(本人は嫌がっているが)頭が良く無口だけれど、同じく頭が良い佳っちゃんとは気が合うのだと思う。仲良いね、と健太が言うとしばらく章ちゃんは口を開いてくれなかったらしい。
数歩先から笑い声が聞こえた。佳っちゃんが章ちゃんの脇に手を突っ込んでいて、健太は修君のリアクションが余程面白かったのだろう。腹を抱えて大笑いしている。
「佳っちゃん....章ちゃん怒っちゃったよ」
「悪ノリが過ぎるぞ健太。章ちゃん泣いちゃうだろ」
「元凶、坂田だろ」
私が言ったすぐに佳っちゃんが付け足す。健太学校ツッコミを入れたが無駄だった。げんなりした顔で章ちゃんが佳っちゃんを睨む。
「それで呼ぶのやめろよ」
「いやー結構気に入ったから」
隣を歩く佳っちゃんが意地悪そうに章ちゃんの顔を覗いた。すぐに章ちゃんは反応して、そっぽを向く。ダメだよ章ちゃん、勝てないよ。
「じゃあメガネ君にしといてあげようか」
「断る」
クスクス笑う佳っちゃんに、章ちゃんは諦め半分なため息を吐いた。
田んぼが多い道に出ると、少し狭くなる。無口な章ちゃんに喋らせようと佳っちゃんは一生懸命だった。嫌々そうで、章ちゃんも嬉しそうだ。二人を見ていると微笑ましい。
ふと隣を見ると、健太も苦笑いで二人を見ていた。
元気良いな、と健太が呟いて、佳っちゃんだけね、と返すと笑った。あれ?何か言ってない気がする。えっと、あー、あれだ。
「健太おはよう」
「ぇ....お、ブッ」
しばらくフリーズしていた健太が、可笑しそうに笑い始めるので恥ずかしくなった。え、だって、言ってなかったから。そんな笑わなくても良いじゃない。さっきの健太の様に脇腹を小突くと、ごめんと返事が返ってきた。
「最近、健太のお母さんに会ってないなぁ。元気?」
「元気。うるさいくらい」
「ははっ、もみじは?」
「足がちょっと悪くなったけど、元気だよ」
もみじは、健太の家で飼っている雌の柴犬。怖そうだけどとても人懐っこくて、健太の家にピッタリな子。帰り道、あの子に会うのがいつも楽しみだ。
「また、会いに行っても良い?」
「良いよ、母ちゃんも喜ぶし。昨日も『由紀ちゃん元気ー?』って聞いてきたし」
健太が無理な裏声でお母さんの真似をしたので、笑ってしまった。
喜ぶし、と言ってくれたのが、正直、嬉しかった。
「洋介は?元気?お父さんは?」
健太のお母さんの顔を思い浮かべていると、健太の声で隣を見る。
「うん、洋介は元気。お父さんは大変そうだけど」
「仕事?」
「うん、最近遅くに帰ってくること多いから」
「....そっか」
しばらく健太が話さないので、ハッと我に返る。健太の心配性モードが始まる。
「ご、ごめっ、元気なんだよ?あ、今朝は久し振りの休みで嬉しそうだっだし」
何で謝るんの、と健太が笑って足元の小石を蹴った。小石は転がって電柱に当たって、私の数歩前に止まった。上手く健太の所に返して健太が蹴ると、ギリギリ....田んぼに落ちた。
「由紀が、家事一人で全部してるの?」
「え、うん。まぁなんとか」
「洋介の事だってあるんだろ?」
「いやー、あの子しっかりしてるから」
小学四年生の洋介は、物静かな子で、本当に私の弟なのだろうかと疑う。
洋介は、小さい頃はよく健太と遊んでいた。近所に住んでいる健太とは公園で知り合ったらしい。
洋介が幼稚園の年長の時だ。公園に遊びに行かせたら泥んこで帰ってきて。
聞いても『お兄ちゃんと、遊んでもらった』としか言わなかくて気になっていた。
ある日、中々帰ってこないので迎えに行った。公園に近づくごとに不安になったのを覚えている。でも、公園には地面に座り込んで楽しそうに何かをか書いている、洋介と健太がいた。
代田健太、健太とは幼稚園からの仲だった。でも幼稚園の頃は私が結構な人見知りだったから、仲といっても親同士仲が良いだけだった。
健太の家にはいつもお世話になっている。父子過程のうちを気遣ってくれて、優しい健太のお母さんが私は昔から好き。(いつもご飯のレシピを教えてくれる)
「あの時覚えてるか?」
「?」
「公園でバッタリ会ってさ」
「覚えてる!あれは驚いたもん」
あのバッタリ事件から洋介は健太になついていた。それから健太とも仲良くなって、公園でもみじの散歩に来ている健太に会うようになった。
「そっかー、洋介元気かー」
「もう四年生ですよー」
「ほんとかよ、へ〜、はやいもんだなぁ」
何処かのおじいちゃんみたいな言い方に、クスリと笑ってしまった。
- Re: 『Crystal』 ( No.2 )
- 日時: 2016/12/31 11:32
- 名前: 碧 (ID: IqVXZA8s)
学校に着くと、運が悪いことに朝から嶋田先生の授業だった。(滑舌が悪いのか、あまり何を言っているのか分からないのです)二時間目は体育。佳っちゃんは相変わらず機嫌が悪かったけど、それも別に何もなく終わった。
まだあまり理解できてない数学、理科を終えて昼食。佳っちゃんと机を合わせて、お弁当箱の蓋を開ける。後ろでは健太と章ちゃんがいて、もう食べ始めていた。
隣のハンター(佳っちゃん)は、目を光らせて健太のお弁当を睨んでいる。
「健太、そのつくね寄越せ」
「おまっ、喰う気だな」
必死になって弁当を守っている健太を横目に、章ちゃんは黙々と弁当を食べている。でも時々うるさそうに睨んでいる。
「ほら佳っちゃん、程々にしなさいよ」
そう言うと佳っちゃんも諦めたみたいで戻ってきた。
「チッ、ケチケチ爺」
ボソッと呟いて佳っちゃんが椅子に座る。誰がケチだ、と後ろで健太の声が飛んできた。
「佳っちゃん唐揚げ食べる?「食べたいです」
「返事速いね」
話を聞いていると、朝御飯を食べていなかったらしい。だからお腹空いてるのね。
美味しいと食べてくれて、少しなんか嬉しかった。今はね、ちょうど成長期だからね、うん。
いつもより多めに作って良かった。
心の中でガッツポーズをした。
「由紀はお弁当自分で作ってるんだよーって言ったらお母さんに『あんたも見習え』って言われた」
「はは、とんでもない....私は佳っちゃんの頭の良さが羨ましい」
教室はいつもより少し騒がしかった。男子達は牛乳の早飲み競争をやっていて、女子の一部は流れている曲に嬉しそうにしている。
確かに、まぁ佳っちゃんが嫌がるのも分かる。まぁ、先生が居ないから仕方ないのだけれど。
後ろの章ちゃんをからかっている佳っちゃんを見てふと思う。
ほんとに、羨ましい。塾に行ってもいないのに良いテストの点が取れる。勉強頑張ってるからだって分かっているけど、スゴいなぁ。
....ワタシは今の状態でダイジョウブなのだろうか。
「お、どしたの」
モヤモヤ考えていると、伏せている頭をワシャワシャと撫でられた。
「ちょっと....佳っちゃんすごいなーって」
「へ?何、どしたの。照れる」
「二年生になって、勉強難しくなって、ついていけなくなったら、怖いなーって」
「なーに言ってんの。良い点数キープしてるよ、由紀は」
佳っちゃんは、塾に通っている。
確かに習っていない子もいるけど、やっぱりそっちの方が学年が上がってくるにつれ、良いのだろうか。
「何だよ、勉強の話?」
弁当箱を片付けていると後ろからヒョッコリ健太が顔を出した。
「テストの話してたの」
「あー坂田は小学校の時から成績いーもんなー。羨ましいわ」
健太が自虐ぎみに笑って言う。
「まぁ健太より頭のできが違うから」
「お前の性格、ほんと尊敬するわ」
ガララ、と後ろで音がした。
ランチの箱を持って廊下に出ようとしている章ちゃんを健太がギリギリ引っ付かんだ。うわスゴい嫌そう。
「まぁ〜こっちには章ちゃんがいるからな」
「巻き添えにすんな」
「章ちゃん、こういう時だけ表情豊かだよね」
昼放課はゆっくりできる、学校で唯一の好きな時間。好きというのは図書室に行けるからだが。あまり人の来ない静かな図書室が私は好きだった。小説に一人で浸ることもあるし、佳っちゃんも来て話しながら過ごすこともある。
今日も行こうかな。
次の授業の用意をしたら、借りていた本を中から引っ張り出して四階へ向かう。今日は何を読もう、?歴史....それとも推理小説。
図書室が見えてくると、中には誰も居なさそうだった。まだ図書委員さんが来ていないのだろうか。
図書室前の階段に座って、借りていた本を開いた。有名な古い作家さんの推理小説。次から次へと犯人らしき人物が出てくるが結末は予想できない話だった。この人の書く小説、やっぱり面白い。
昨晩読み終えた、ラストの場面をまた読み返していると階段に誰かが上ってきた。
図書委員さんかな?
少しドキドキしながら立ち上がろうとすると、そこから上がってきた人物は図書委員の人でも知らない人でもなかった。
「よっ」
「っ、健太....」
「まだ開いてないの?」
「うん。まだ開いてないみたい。健太どうしたの?」
「俺?先週借りてた本返しに来たんだよ」
期限過ぎたから怒られる、とカラカラ笑って階段を上がってきた。
- Re: 『Crystal』 ( No.3 )
- 日時: 2017/01/01 17:18
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: 7mqCe5Fx)
- 参照: http://From iPad@
初めまして、こんにちは!
てるてる522と申します(o´艸`)
かっこいい題名だな、と思いタップしてみたら題名のようにキラキラした素敵な文章ですごく読みやすかったです!
その場にいるかのような感覚で、本当にすごくて……ボキャブラリーが乏しくてすみません(((;°▽°))
私は健太くんが好きです(*´▽`*)
まだ色々と気になる部分がありますし、登場人物との関係も気になるので目が離せません笑
これからも読みに来ます!←
無理ない程度に頑張ってくださいー(o´艸`)
素敵な作品をありがとうございましたm(*_ _)m
それではお邪魔しました!
byてるてる522
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