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- 潔壁
- 日時: 2017/01/28 00:27
- 名前: とうき (ID: frNsUPKP)
「ねぇ、俺が今好きって言ったらどうする?」
桜の花弁を踏みつけた私の靴がピタリと止まった。びっくりだ。
告白された。
「え?ちょっと待って。嘘。」
私は彼が好きだ。つまり両思い。どうする私。血液という血液が体中を巡り、だんだん暑くなってきた。
「やっぱりだめ……「ちょっ!お、お願い致します!」
あ、言っちゃった。
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実はど田舎に住んでいる私と彼は小学生からずっと一緒の仲だ。というか、ほとんどの友達はそうだ。クラスも1クラスしかなく気も知れている。告白なんてさらさら思っていなかった。
「彼、少しカッコつけてるよねぇ、最近。」「それな」
どちらかというと苦手な方だった。スポーツは万能で頭もそこそこ良いがどこか鼻に付く。よくいるタイプのいわゆるナルシストボーイだ。さらにここがど田舎だということがさらに彼の鼻に付く雰囲気を浮き彫りにする。
「あ、またなんか悩んでる。ほら。最近あいつ病み期入ったらしいよ」
「へぇー……」さっきから水素のような軽い返事しかできない。昨日のことが頭から離れない。 ……気持ち悪い。
聞いたところによると前から想いを寄せていたらしい。なんとそれも7年間の片想いだったとか。なんだ一途じゃないか。
キーンコーンカーンコーン
そうこう考えているとあっという間に時が過ぎ気づけばもう下校時刻だ。機械のようにさっさと支度を整えて昇降口を出ようとすると…いた。
一瞬のうちになんでもないタネから悩みのタネにめでたく早変わりしたナルシストボーイ。
「帰ろ。」
私は彼が差し出した手を返事の代わりに握った。一応私も彼のことが好きなのは忘れないでほしい。
「君って意外と手冷たいね。俺の方がドキドキしてるからかな?」
「そうかな?友達からはあったかい方だって言われるけど」
そんな季節限定のリア充会話を交わしながら歩いているととうとう2人の物理的な分岐点に差し掛かった。
「じゃあ、また明日ね」
私は精一杯の笑顔を作り手を控えめに振った。
「ちょっと待って」
彼は私の努力をかき消すようにずんずんと近寄ってきて、キスをした。
………が。
「気持ち悪い!!!」大きな声をあげて彼を突き放してしまった。
確かに彼を私は想っていて彼も私を想っているが口づけされた瞬間細菌が繁殖するような感覚に陥った。
そう。私はいわゆる【潔癖】なのだ。
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- Re: 潔壁 ( No.1 )
- 日時: 2017/01/28 20:03
- 名前: とうき (ID: frNsUPKP)
「え?……あ、ごめん。じゃあね。」
彼はびっくりとした面持ちとともに苦笑いをして自分の自宅までの帰路をそそくさと歩いていってしまった。
嫌われた。いや、嫌われて当然か。好きな人にましてや両思いの人に「あなたのことが嫌いです。別れてください。」と言われたのも同然のことを彼に私はしてしまったのだ。
明日、別れようなどと言われるのだろうか?少しの心配と罪悪感に襲われながら長くも感じる慣れた帰路を歩いていった。
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「おはよ。」
びっくりだ。
「え、おはよう……」
話しかけてきた。昨日あんなことをされたのを彼は忘れているのだろうか。
「あの、昨日はごめん。あんなこと言って。」
彼の目を私は見れなかった。
「ん?別に気にしてないよ。そっちこそ大丈夫?具合悪かったんじゃないの?」
「うん……全然大丈夫。ありがと。」
本当に心配してくれているのだろうか?それとも嫌味を言っているのだろうか?それは今の私では見当がつかない。もともと私の潔癖は凄まじく、どんなに小さなほこりでも見つけてしまえば気持ちが悪くて仕方がなくなる。キスなんて考えてみればもってのほかだ。
「何ぃー?あんた彼とできてんのぉー?」
やばい。めんどくさい奴が来たと彼との距離を少しばかり開ける。
「んー……まぁ……「まじで!?!?」
まじの他に何がある。
「恥ずかしいから…」
「だって彼ずっとあんたのこと好きだったんだよ!?よかったじゃん!」
バシバシと肩を叩かれ彼は冗談混じりに痛い痛いと言いながら相手の手をどかす
「何?そんなに有名なの?」
「当たり前じゃん」
まじか。知らなかった。罪悪感がますます大きくなる。
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