コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 君に贈るトラウマ物語
- 日時: 2017/07/06 22:58
- 名前: 玉村(仮) (ID: sTI2nhaJ)
やはり、やめておけば良かった。
その映像を見た時、相模宗太はそう思った。
それと同時に10分前の自身の行動の愚かさを呪った。
だいたい、よく考えればおかしな点はいくつかあった。いかにも怪しな外見をした店であったし、それに店主であろう女性も人によっては未成年と見間違えるくらいに若かったのだ。
そんな簡単なことも考えられず、店主の女性の不敵な笑みに誘われ、
僕は今
自身のトラウマであろう映像を見させられている。
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- Re: 君に贈るトラウマ物語 ( No.1 )
- 日時: 2017/07/06 23:00
- 名前: 玉村(仮) (ID: sTI2nhaJ)
あろう という表現を使ったのには理由がある。
今僕が見ている映像は、全く見たことも、ましてや体験すらしていない事象が、僕という主人公を使って繰り広げられていたからだ。
何故こんなにも奇想天外な状況になってしまっているのか。
時は15分前に遡る
時刻は夜の11時くらいであろうか。僕はバイトからの帰りに近道をしようと、いつもは通らない道を通って家に向かっていた。家からバイト先であるカラオケ店までは徒歩10分ほどなので運動も兼ねて僕は徒歩を選択していた。
朝の天気予報でも言っていたが、外はすでに雨がザーザーと降っており、いつも通っている道を通っていては傘をさしているとはいえ雨を防ぎきれず、びしょ濡れになってしまう。だから僕は、普段通る大通りではなく、カラオケ店裏の小道から行くことにした。
その小道は大通りと比べて薄暗く、道に沿って並ぶ店も随分と寂しい様子だった。時間も時間のため、並ぶ店に明かりはなく、街灯だけが道を照らしていた。
しかし、そんななか、一つの店だけが一際光を放っていた。
「いやいや待って、今6月だぞ?なんでこの店はイルミネーションなんて飾っているんだ...。」
明らかに他の店とは違う外見に雨も忘れ僕は立ち尽くしてしまった。
その店はどうやら写真屋らしく外にあるショーケースにはたくさんの写真がならんでいた。いや、写真屋だとしてもこの外見はいささかおかしいものがあるんだが...。
今考えれば、そんなところ通り過ぎてしまえば良かった。例え6月なのにイルミネーションを飾っていたとしても僕はそこに止まることなく真っ直ぐに家に帰るべきだった。
僕が店を眺めていると、その店の正面にあるドアが開くのが見えた。
しまった、客だと思われてしまったか。今のところ写真屋に用はないし、店員と会って気まずい状況になるのも非常に面倒臭い。
そう思い僕は足早にその店をあとにしようとした。しかし、
「あー待って、そこのお兄さん!そこのお兄さん!ちょっ 待って、あーなーたーでーすーよ!」
後ろの方から若い女性の声が聞こえた。きっと店の店員だろう。面倒事は避けたいから僕は無視をしていたが、どうやら彼女は僕に近付いているようだった。
「あー!もうー!待ってって言ってるじゃないですかー。無視なんて酷いですよー。」
そう言って彼女は僕の肩を掴んだ。
「いや、すいません。僕は別に写真とか撮るつもりないんで。ちょっと離してもらえますか?」
彼女の手を振り払おうと後ろを振りかえった時、僕は気がついた。
彼女は傘をさしていなかったのだ。
「...?私の店は写真屋さんなんかじゃないですよー?ここは...えーと、えーと...そうですね...言うなれば!トラウマ名鑑です!」
- Re: 君に贈るトラウマ物語 ( No.2 )
- 日時: 2017/07/06 23:06
- 名前: 玉村(仮) (ID: sTI2nhaJ)
「まあ名鑑っていうほどトラウマが揃っているわけではないんですけどね...えへへ」
彼女はそう言うと恥ずかしそうに頭を掻いた。
「いや...意味が分からないんですが...」
「あっれぇー?もしかしてダサかったりしました?いやーお恥ずかしながら最近店を構えたもんで、名前とか正直決めてなかったんですよねー。我ながらいい名前だと思ったんですけどねぇ。」
違う、そうじゃない
「違います!そういう意味で言ったんじゃないですから!」
「あれ...じゃあもしかしてトラウマ博物館とかの方が良かったですか?それは流石にダサいんじゃ...」
「だから違いますってば!」
一体なんなんだこの女は...
最初に言っておこう、彼女とは正真正銘、初対面である。まだ出会って数十秒しか経っていないというのに、彼女はどうしてこんなにも馴れ馴れしいのだろうか。
「? じゃあ一体何の意味が分からないっていうんですか?」
「逆に聞きます、この状況、あなたの言動のどこがおかしくないと思いますか?」
彼女はその問いに少し考えてから言った。
「あっ!すいません、お話はお店の中でって意味でしたかぁ!いやはや、私とあろうものがお客様に大変失礼なことを!」
「だーかーら!ちっがーーう!」
念のため...念のためもう一度言おう。彼女と僕とは初対面であると!
彼女と話してまだ1分も経っていない、なのにどうしてこんなにも僕は疲れなければならないのか...。
「いいですか!?まず!」
そう言って僕は自分で持っている傘を少し前にだして彼女に降る雨を防いだ。いまさら防いでも手遅れなくらいに彼女は濡れていたが。
「こんなにも雨が降っているというのに、どうしてあなたは傘をさすなりカッパを着るなりしていないんですか?」
「うーん、どうしてと聞かれてましても自分の店が近くにありますし、濡れてもいいかなぁと」
これはあれだ、ガサツな女というやつだろう。
「はぁ...。理由になってないですけど、まあそこはもういいです。じゃあ次、トラウマ名鑑ってなんなんですか?」
 
僕がそう聞くと彼女はパァーっと顔を明るくし興奮した様子で話し始めた。
「よくぞ聞いてくれました!トラウマ名鑑ってのはですねぇー...あーいや、これは長くなりそうなんで、とりあえず店内に!さぁ!」
まずい... こんないかにも怪しそうな店だというのに店員がいかにも頭がおかしそうなこの女という時点でこの店に入ったら厄介事に巻き込まれるに違いない...。入ったら最後、怪しげな壺を押し付けて高額な値段で買わせるに違いない。うん、間違いない。
そう考えた僕は「結構です。」と一言残して身を翻して帰ろうとした。
しかし、
「ちょいちょいちょい!待ってください!待ってください!あーそうだ!麦茶!麦茶だしますから!だから待ってくださいぃー!」
「うわあぁ!?ちょっと抱きつかないでください!あなた、ただでもびしょ濡れなんですから僕が濡れちゃうじゃないですか!麦茶もいりませんから!」
やばい、本格的にやばい。この女はどうやら僕を逃がすつもりはないらしい。このままだと服が濡れて僕まで風邪をひくはめになってしまう。それはそれで厄介だ。
「分かりましたから離してください!これ以上抱きついてるようなら少し痛い目にあわせますよ!?」
「うわあぁぁ!それだけはご勘弁をぉ...。と、とりあえず店の中へどうぞ。」
全く...今日はついていないなぁ...
そう思いながら僕は怪しげな店のドアを開けた。
「1名様ごあんなーーい!!」
「帰りますよ?」
「ごめんなさい」
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