コメディ・ライト小説(新)

Re: まほがく! ー魔界のおかしな仲間達ー ( No.6 )
日時: 2016/04/03 01:49
名前: ささみ ◆dRwnnMDWyQ (ID: bJHwv4jv)



夕暮れ。
リュートとフィオラは帰り道が同じなので、生徒会活動などの時にはいつも2人で帰っている。

「文化祭、楽しそうだぜ!でも出店って一体何すればいいか分かんないぜ…」
「あ、理事長から資料貰ったよ。ほら、人間界での文化祭の写真」
「ありがと」

フィオラは綺麗にまとめられた、写真と文章が載せられた紙束を受け取り目を通す。

「理事長がパソコンを駆使して作ったって。意外と努力家だよねあの人」
「へぇ…パソコンかぁ。私パソコン使ったこと無いぜ。携帯だけで精一杯」
「僕もだよ」

人間界の先端技術はまだ普及したばかりで、使いこなせる人は少ない。

「この…メイド喫茶ってのは定番なのか?」
「みたいだね。理事長がさせたいって言ってたよ」
「リンとローゼにだろ?ったくあの変態は…」
「フィオラとセラも巻き添え食らうかもね」
「こんなフリルばっかの派手な服着たくないぜ」

不満を漏らしながら次々と資料を見る。
その中に、目が留まったものがあった。

「ん、おばけやしき…って、何だ?」
「日本って国のね、妖怪とかお化けとかに仮装して、人を驚かすアトラクションだって」
「お化けってあれだろ?死神に連れていかれなくて、この世に残った魂…だろ?」
「多分そうだと思う。あんまり想像できないけど、人間にとっては怖いみたいだね」

人間は死ぬと、体と魂に分かれる。
魂は普通、冥界―死後の世界―に連れていかれ、中身が無くなった体は、腐って骨だけ残る。

魔界の生き物は死ぬと、黒か紫のもやを空へ昇らせながら、消える。
消えた後は、ニュークリアス(通称クリア)と呼ばれる、人によって色や大きさが違う宝石のようなものだけが残る。
その宝石が、生き物の魔力の源で、生きていくために必要な、いわば心臓のようなものだ。

だから、魔界には“魂”という概念が無いので、お化けというのも存在しないのだ。

「お化けは聞いたことあるんだけど…妖怪って何?」
「さぁ?僕も分からないな。理事長は魔獣みたいなものって言ってたけど」

魔獣は、魔界に住む、人を襲ったりする獣である。
中には知能が高いものもおり、魔術を使える個体もいる。

「ふぅん…じゃあ、魔界の人達が怖がるもので、魔界版お化け屋敷を作ればいいんだな!」
「そうだね。フィオラはお化け屋敷をやりたいの?」
「うん。人を脅かすの、楽しそうだからな」
「あはは。確かに、フィオラはそういうの好きそうだよね」
「リュートは何がしたいとかあるのか?」
「僕は特に何も…希望を言うなら、何かを作りたい、かな」
「作りたい?」

フィオラは段ボールとかを組み立てるリュートを想像して少し笑った。
こんな優男でも、やっぱり男子だから工作的なことが好きなのかな…と。

「あ、今笑ったでしょ。もしかして工作だと思ってる?」
「え?そうじゃないの?」

目を真ん丸にして見つめるフィオラに、困ったように笑う。

「まぁ工作も嫌いではないけどね」
「じゃあリュートが本当に作りたいものって何だぜ?」
「料理だよ。僕、お菓子作り好きなんだよね」

リュートの男子とは思えない意外な発言に、フィオラは驚いた。
そして、お腹を抱えて笑う。

「あははは!お前女々しいな!ちょっとその女子力欲しいぜ!」
「そんなに笑うことないじゃん…ま、自分でも女々しいとは思うよ」

フィオラは笑いすぎて出てきた涙を指で拭った。

「んじゃ、メイド喫茶をやりたいのか?」
「厨房に回れるんだったら何でも」
「んー。こりゃ意見が割れたぜ。勝負だな、リュート!」
「そうだね。明日皆にも意見を聞いてみよっか。新しい意見とも勝負することになるかもね」
「うん。いやぁ、ほんと、文化祭楽しみ~!」

両手を真上に伸ばし、沈みゆく橙色の太陽に向かって叫ぶ。
その様子を、リュートは微笑みながら見つめていた。

右と左の分かれ道に突き当たった。
2人が一緒に帰るのはここまで。

「それじゃ、またな。リュート」
「また明日ね」

2人は手を振って、それぞれの家へと歩いていった。


――――


一週間後…。

クラスごとやグループごとに話し合いが進み、出店が決まってきた。
ストックでは激しい論争の末、メイド喫茶に決まったようだ。
半分程、理事長の権限により決まったようなものだが…それは置いといて。

ステージで出し物をしたい人もぼちぼち現れ、文化祭の準備は徐々に進んでいる。

校内の雰囲気も浮かれたものになってきた。

文化祭まで後1か月。