コメディ・ライト小説(新)
- Re: まほがく! ー魔界のおかしな仲間達ー ( No.7 )
- 日時: 2016/04/03 02:28
- 名前: ささみ ◆dRwnnMDWyQ (ID: bJHwv4jv)
中庭。
大きな木が中央に葉を広げ、周りには色とりどりの花が咲いている。
石畳が整備され、ベンチもあるので、生徒達のくつろぎスポットになっていた。
ちなみに、美化委員会が花の世話をしている。
「リリーねーちゃんは、なにするの?おみせ」
「私達はメイド喫茶なんだ。グループの子がメイド服着てみたいって言ったから」
プランターに生えた雑草をちまちまと取りながら、リリーとリンは話をしていた。
2人は放課後、毎日花の世話をしている。
「リンたちとおんなじだね!リンもメイドさんするの」
「見に行くねー」
「うん!リンもリリーねーちゃんのとこ、くるからね」
「楽しみだねえ」
「うん」
2人の間には和やかな時間が流れていた。
木と花が柔らかい風に揺れ、さわさわと音を立てた。
「あのね、お花、もっとたくさんうえたいね」
「町の人たちも来るからね。正門周りもお花飾りたいよねー」
「りじちょにおねがいしよ。お花の苗、かってくれるかも」
リンがお願いしたら一発でOKしてくれるだろうなと思いながら、リリーは「今から行く?」と言った。
「うん!早くお花うえたい!」
リンは目をきらきらと輝かせた。
――――
2人が理事長室に入ると、イヴァはソファーの上でぐったりと倒れていた。
死んでいるのかと思いびっくりしたが、どうやら仮眠をとっているようだ。
「りじちょ、つかれてるのかな…」
「やっぱり理事長の仕事って過酷なのかなあ」
「今日はもうかえる?」
「そうしよっか」
2人がイヴァに背を向け扉に向かおうとした時、イヴァがぼそっと呟いた。
「ロリの匂いがする…」
イヴァは目をカッと開き、バッと飛び起き、2人に(特にリンに)笑顔を向けた。
「どうしたの2人共?」
「りじちょ、おこしちゃった…?」
「いや全然起きてたよ!うん!それで用件は何かな?」
テンションが異様な理事長を前に、リリーは苦笑いをしながら用件を伝えた。
花の苗を買ってほしいこと、学校内外を綺麗に彩りたいこと。
イヴァは笑顔でうんうんと頷きながら聞いていた。
「君達熱心だね。感心するよ。明日までに買って置いておくから、取りに来てね」
「ありがとうございます!」
「りじちょありがとー!」
にこにこと満面の笑みを浮かべながらお礼を言う2人に、イヴァも微笑んだ。
まるで2人からマイナスイオンが出ているようだ。
穏やかな雰囲気が続く。
そんな雰囲気を壊したのは、『バーン!』という扉が壊れる音だった。
木製の扉の残骸を踏みしめて、リンと自分の鞄を持ったローゼが入ってきた。
「何これデジャヴ…?つい最近直したばっかりなのに…」
肩をがっくり落とすイヴァには目もくれず、ローゼはリンの元へ歩みを進める。
「おねーちゃん、ドアは足じゃなくて手であけなくちゃだめだよ」
「次からそうする。…美化委員長も一緒に、何で理事長室にいるんだ?」
「お花の苗を買ってくれるようお願いしてたんだよー。それにしても、リンのお姉さん、凄い脚力だねぇ…」
「どうも。美化委員の仕事は終わったのか?」
「うん。今から帰ろうとしてたところだよー」
ローゼの冷えた目が自分ではなくリンに向いて、リリーは緊張が解けた。
目つきの悪いローゼと面と向かって喋ると、何だか怖くなるのだ。
ローゼ自身に悪気は無いと思うが。
「おねーちゃん、としょいいんちょのおしごとおわったの?」
「終わったよ。だから帰ろう」
「ローゼちゃん…何か言うことは?」
「ん?」
わなわなと震えているイヴァに、首を傾げるローゼ。
何を言っているか分からないとでも言いたげに、イヴァを見つめた。
イヴァはそんなローゼに、扉としての機能を失った扉だったものを指差した。
「何か言うべきことは?」
「This was door. This was broken by me.」(これはドアでした。これは私によって壊されました。)
「とてもネイティブ100点満点!でもそういうことではない!」
「ドア壊してごめんなさい」
「結構素直だった!可愛いから許す!」
「じゃ、帰る。リン、帰ろう」
「はーい。リリーねーちゃん、りじちょ、またねー」
笑顔で手を振るリンにリリーは手を振り返す。
「あ、じゃあ私も帰りますねー。さよならー」
「気を付けて帰ってね~」
――――
美化委員の活動により、校内も校外も花で色鮮やかになった。
放課後に残って準備する人が増えてきた。
人々は、言葉に表せない胸の高鳴りを感じていた。
初の学校行事。授業にも身が入らなくなる。
皆の騒めいた雰囲気を感じ取ったのか、中庭の木や花もざわざわと揺れる。
文化祭まで後2週間。