コメディ・ライト小説(新)
- ソファーから落ちて(4) ( No.4 )
- 日時: 2017/01/08 09:53
- 名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: F69kHN5O)
「俺のこと、ちゃんと好きなのかなって、そう、考えたりしない?」
「考えたりしない」
私の部屋のソファー、隣に一人の幼馴染み。
スマホを手に持ってずっと画面とにらめっこ。
「でもさ、こうメールが来ないだけで不安になったりとか」
「しない」
私の方を見ずに、ずっとスマホの中の恋人を見る彼に私は不満を隠せない。
恋人ができたくせに、まだ私の部屋にくるこいつの神経も分かんないし、私もまだこんな無神経な男のことが好きなんだと、あぁ後悔ばっかだ。
「お前も好きな人いるんだから、そういうことくらい考えろよー」
幼馴染みは机の上にあったお菓子の籠から飴玉をとって口の中にぽいっと放り入れた。
何も知らない幼馴染に、抱く感情を気づかれてはいけない。
ころころと口の中で転がす飴は、何味なんだろう。
考えちゃう自分が怖かった。
私のことを好きになって、とか、そんなこと言えない。
略奪なんてできない。
私は「悪者」になる覚悟がまだできないのだ。
「好きな人には、別に好きになってもらわなくてもいいんだ」
幼馴染は私の言葉にきょとんとした表情を見せた。
「どうして?」
やっぱり何にも知らない、何にも気づいてない、
そのままでいてほしいから、だから私は本当のことを言えないんだ。
このままでいたい。このままで、
この関係を壊したくなくて、私はまた何も言えなくなる。
クッションをぎゅっと抱きしめて、俯いて、そっと彼の目を見た。
真剣な瞳。きっと、自分が幸せだから私にも幸せになってもらいたいとか、そんなこと考えちゃってるんだろうな。馬鹿だ、ほんとう。
「きっと、報われない恋だから」
言葉にしたら、何だか現実味が増してきた。
やっぱり、言霊って本当なのかもしれない。
私は、この男の隣にはいられない。
ソファーに一緒に座るだけ、それだけで精一杯なのだ。