コメディ・ライト小説(新)
- 死神さんは殺したくない(5) ( No.5 )
- 日時: 2017/01/07 23:46
- 名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: F69kHN5O)
「死んじゃうの、君」
屋上で、出会ったのは死神でした。
大好きだった人に振られて、何だか生きている意味も分からなくなって、それくらい夢中に恋をしてた自分がくだらなくて、馬鹿らしくて。
振られた理由が「妹にしか見えない」なんてそんなお決まりの台詞、解せん。
死にたい。くっそ死にたい。
学校の屋上に忍び込んで、裸足になって下を見てみた。
人なんて凄く小さくて、まるで点のよううだ。
「宇宙のチリとなりたい」
ぼそっと呟いた言葉に、何故か口元が緩んだ。
死ぬ覚悟もないくせに、ばーか。自問自答を繰り返し、私は底なし沼にちていく。
「死んじゃうの、君」
不意に聞こえた声、それは男の声だった。
よく見ると、私の視界の反対側、屋上の隅っこでクッション持参で寝転んでいる男子がいた。
「だ、だれ」
驚いて足を滑らして、べしゃんと私は前に転んでしまった。
視界にとどまったその男はニコリと微笑んで答える。
――僕は、死神だよ
は、冗談は顔だけにしろよボケ。
と、言いたかったが死神と名乗った男はいかにもモテそうなイケメンだったために、私の口は動かなかった。
ゆっくりと起き上った死神は、私のもとにやって来て「死にたいの?」と笑顔で聞いてきた。「そんなわけない」と答えると今度は腹を抱えて笑い出す。
「で、どうしたの?」
「好きな人に振られた」
「辛いの?」
「辛いよ」
死神は死神のくせに優しかった。
新しい人なんてすぐできるよ、その人には見る目がなかったんだよ、
そんなお決まりテンプレートの励ましをくれる。
最初はムカついたけど、それが優しさに感じるんだから、私もそうとうしんどいんだ。
「じゃあ、僕と付き合う?」
会話中の台詞にはそんな冗談が混じっていた。
うん、って言えばこの気持ち忘れられるのかな。
心の中の大事なものを閉じ込める為の錘がストンと音を立てて落ちた。
「私、まだ死にたくないや」
死神はくしゃくしゃの顔で笑った。
「僕もまだ、君を殺したくないよ」