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コメディ・ライト小説(新)
- 本音とキス(7) ( No.7 )
- 日時: 2017/01/08 12:20
- 名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: F69kHN5O)
「キスしたい」
冷房ガンガンの部屋で、ぽつりとあいつが漏らした本音。
聞き逃すことはなかったが、あえて聞こえなかったフリをした。
雑誌をぺらぺら捲る私に、寝そべりながら漫画を読む彼。
面白いの? と尋ねると「面白いよ」と返され、
面白いの? と聞かれると「面白いよ」としか返せない。
夏のはずなのに寒いのはかれがあいつが暑がりのせいだ。
「なぁー、キスしようぜー」
今度は大声で彼は言った。
不満げな表情は、ここ二週間、ずっとこんな感じでお互い別々のことを楽しんでいるせいなのだろうか。
夏なのだから花火大会とかお祭りとか、外に出かけていれば彼の望む「恋人ごっこ」が出来るって、ちゃんと分かってる。
「いやだ」
私は「夏! 彼氏とデート 水着特集」というページをちらりと見て、何とも大胆なビキニに正直引きながら答えた。
「何で、俺のこと嫌い?」
犬のように、純朴に目を潤ませて尋ねてくる彼に私は深いため息をついた。
彼の白い肌は今年の夏私が外にあまり出たくないというのに付き合ってくれた証だ。
わがままな彼女に付き合えるくらいなら、もっといい子を見つければいいのに。
「好きだよ」
ぽろっとこぼれた本音に、私もびっくり。彼もびっくり。
近づいた顔、見つめ合う瞳。
唇はゆっくり触れた。
「お前が俺のこと好きとか、嘘っぽい」
私の唇を軽く舐めて、彼は私の頭にぽんと手を置いた。
私はギュッと彼を抱きしめて、自分の今の表情を気づかれないように隠した。
キス一つで真っ赤になる自分が嫌いだ。
自分が思っているより私はこいつのことが好きだと、まだ気づきたくない。
「今日、暑くない?」
冷え切った彼の手が私の頬に触れた。
「うん、暑いね」
また、私たちはゆっくり唇を重ねた。
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