コメディ・ライト小説(新)

1-2 ( No.4 )
日時: 2016/11/24 20:14
名前: 森川智錦 ◆SWgybbCCyQ (ID: L7cEcAm0)




放課後、私は教室で勉強をして、帰る事にしました。
英語や日本史は難しくって、一人だとあまり捗りません。でも、なんとか毎回上位を取っています。

「……い……ん!」

部活と両立出来ててすごいねってよく言われますが、最近は軽音部の方が疎かになってしまってなかなか曲が覚えられなくて……

「怜………ん!」

バンドメンバーの方達には最近勉強を教える位しかしてなくて本当に申し訳無くて……

「怜ちゃん!」
「きゃあああああ!?」

突然、一ノ瀬さんが出入り口の方から走って来て私に抱きついてきました!当然私は一ノ瀬さんに押されるようにして倒れてしまいました。

「一ノ瀬……さん」
「怜ちゃんったら、何回も名前呼んだのにー」

ぷくーと元からふっくらしている頬をさらにぷっくり膨らませる一ノ瀬さん。

「気付きませんでした。すみません」
「いいよー。 そんな事より、金見駅まで行くんだったら一緒に帰ろうよ」

……お昼に頭に浮かんだ、楽しい時間をもう一度という願いは今果たされるみたいです。
私は微笑んでこう答えます。

「はい、是非」




上は青色で、下はオレンジ。そんな空を背景にして私達は金見駅へと向かう道を歩きながらお話をしていました。

「一ノ瀬さんはどうしてこんな時間まで学校にいらしたんですか?」
「部活だよ。吹奏楽。トランペットやってるんだ」

一ノ瀬さんは大会で吹くらしき曲を歌いながら指を動かしました。その指は複雑すぎて、頭がおかしくなりそう……

「柄じゃ無いって思ったかな」
「はい。思いの外意外でした。一ノ瀬さんならもっとスポーツとか出来そうなのに、どうして吹奏楽なんですか?」

少し間が空く。

「……あんまり体育系の部活はときめかなくって。音楽の方が好きだったから吹奏楽に入ったんだ」

だったら、軽音部に入って下されば良かったのに……少し残念です。

「怜ちゃんは何してたの?」
「勉強をしていました」
「偉いよー、偉すぎるよー。怜ちゃんが眩しく見えるよ」

ううぅ、と手で目を隠す一ノ瀬さんに私は笑ってしまいました。

「それじゃあ部活はやってない?」
「いえ、部活は……」

その直後、駅の分かれ道で私達は別々の道を歩こうとしていました。

「あ……」
「あ……っと、怜ちゃんそっちの線なんだ」
「乗る電車、違うんですね」

電車でももっともっとお話ししたかったのに。
そう思った直後、一ノ瀬さんは突然私の手を掴みました!

「ひゃっ」
「また明日屋上で会おうね!」

ニコッと笑って私を見つめる一ノ瀬さん。その冷たい手を離したく無いほど、私は別れたくありませんでした。
けれど、でも、明日も会えるのなら。

「……はい。また、明日、屋上で。必ず、会いましょう」

一つ一つの言葉を区切って気持ちをを一ノ瀬さんに伝えました。
一ノ瀬さんはまた笑い、またねと手を離して去って行きました。

「……またね、か」

私の、新しい友達。まだ誰にも教えてない友達。秘密の友達。

明日はどんな事を話そうか考えながら、そして話しているところを想像しながら。私は電車に乗りました。