コメディ・ライト小説(新)
- Re: フリーバトラーズ ( No.1 )
- 日時: 2017/04/02 16:59
- 名前: MESHI (ID: /uXIwxRd)
【前奏曲】
おかしい・・・。
資料片手に首をひねる少女。サラリと白金の長い髪が動く。
蝋燭の火が、ライラック色の瞳を照らす。
ほんの500年前までは、やる気に満ち溢れた武士や侍共が集まっていたはずだ。
しかし、今となっては。
◇ ◇ ◇
三日月の、夜だった。
リン・・・
鈴の音がどこからともなく鳴り響く。
男たちは、その音の元を探すが見つからない。
錆びついた工場跡地。
男たち——―街を騒がす銀行強盗のグループだった。
リン・・・
「誰だ、出てきやがれ!」
20人を超える男たちは一か所に集まって武器を持つ。
一瞬の静寂。
「〈祇園精舎の鐘の声〉」
ひとりの声が響く。男たちはすぐさま、その声の主を探そうとするが、その必要はなかった。
「〈諸行無常の響きあり〉」
先ほどとは別の声がする。
「〈沙羅双樹の花の色〉・・・」
反対方向からの声。
「〈盛者必衰の理をあらは(わ)す〉」
ザッ!!
建物の中に、一陣の風が吹いた。
埃が舞う。
「〈おごれる人も久しからず〉」
「〈ただ春の夜の夢のごとし〉」
「〈たけき者も遂にはほろびぬ〉」
薄暗い建物内が、一気に光に溢れた。
思わず目を覆う男たち。
「———〈ひとへ(え)に風の前の塵に同じ〉」
次に男たちが目の当たりにしたのは、光と、そして、長く伸びた8人の影。
「お前たちは・・・!!」
爆発したような悲鳴が広がる。一目散に逃げてゆく男たち。
しかし、誰一人として逃げ延びることができた者はいなかった。
8人は、風の如き動きで男たちの動きを封じる。
5分もしないうちに、あたりは再び静寂に包まれた。
「安心して、僕たちは殺しはしないよ。」
影の一人が言った。
「それが私たちのモットーだからねえ。」
マシンガンを持った腕は、ゆっくりとおろされた。
「あなたたちは、在るべき居場所に帰るだけです。よい監獄ライフを。」
一言も喋れない男たちは、力なくうなだれた。
この街には、得体の知れない化け物がいる。
その化け物達は、ただ「たたかう」ために集まる。なぜ戦うのか?
そんなことは誰も知りはしない。
◇ ◇ ◇
少女はため息をついた。
どこで間違えたのだろう・・・?
私はこんなびっくり人間コンテスト出場メンバーガチ勢みたいなのを集めたかったわけではないのに。
化け物達は、集う。
「たたかう」ために。
でも、世界を救うとか、そんな大層な集団でもない。
正義を気取っているわけでもない。
しかし悪でもない。
街に溶け込んでいるように見えても、完全に溶けきってはいない。
街の底に溜まっているようなそんな集団。
何をしているのかもわからない、謎の8人は。
神出鬼没の、しかし暇そうな8人の化け物たちは。
街の人々はこう呼ぶ、
「自由戦士」