コメディ・ライト小説(新)

Re: フリーバトラーズ ( No.30 )
日時: 2017/06/03 16:39
名前: MESHI (ID: wHTCUiXd)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no



世界には、通常の人間には使うことのできない異能を操る者がいる。

その異能を操る___異能力者と呼ばれる者は、何百年、何前年とその血を確かに受け継いでいったらしい。

20世紀ごろには全く人々には馴染みのない言葉だったが、ここ数世紀で異能力者という言葉は世界中の人々に伝わり、存在が確認されるようになった。

今ではテレビや新聞で紹介されることも珍しくはないし、異能力者に憧れる者も少なからずいる。


しかし人間というものは自分と違う異質なものを受け入れるのに抵抗を覚える生き物である。

世界の約5%しか存在しないと言われる異能力者は当然少数派で、人々は基本的にその者たちからは距離を置いている。

何も知らない者からは、異能力者は人間たちを陥れる恐ろしい力を持った怪異な物、と一括りにされ、恐れられる。

異能力者同士でも、その力の強さの差で恐れられる者、差別される者も少なくない。

数百年前には、魔女狩りのように異能力者を無差別に攻撃する事件が多発したそうだ。

そうして異能力者はやがて危険なものとされ、より一層恐れられ、隔離された。

異能力者は息を潜め、人間に気付かれないように生きていかなくてはならなくなった。

人間に対抗意識を燃やし、自分の異能をもってして反撃に出た者もいた。

その結果、元々囁かれていた異能力者=危険というものがより一層強固なものになる。

国は対異能力者の組織を立ち上げた。

悪循環が続き、今ではすっかり異能力者の居場所はほとんどなくなり、彼らは肩身の狭い思いをしている。

街に溢れかえる人間に紛れ込み、こそこそと生きていくしか方法がなかった。


そんな中、異能力者が集う街があると聞く。
それも、『化物』と呼ばれるに相応しい者たちが集う街。

化け物達は、集う。
「たたかう」ために。

世界を救うとか、そんな大層な集団でもない。
正義を気取っているわけでもない。
しかし悪でもない。


街に溶け込んでいるように見えても、完全に溶けきってはいない。
街の底に溜まっているようなそんな集団。


何をしているのかもわからない、謎の8人。
神出鬼没の、しかし暇そうな8人の化け物たちを、


街の人々はこう呼ぶ、




自由戦士フリーバトラーズ















【#002】










空は茜色に染まり、シロツメクサが緩やかな風に揺れる。

小高い丘で、膝に顔を埋めて泣いている幼い少年がいた。

「ねえ、なんで泣いてるの?」

少年は答えない。静かに鼻をすする音が聞こえた。

幼い女の子は桜色のワンピースを揺らしながら少年の傍へ歩み寄った。

「泣きたいときはね、お空を見上げたらいいんだよ」

女の子が少年の隣に座った。肩の長さの色素の薄い髪が風にふわりと広がった。

おっとりとした雰囲気を漂わせる女の子。髪と同じ色の瞳がRを見る。

「何かの歌で聞いたの。涙がこぼれないようにって。」

「…何それ」

嗚咽を無理矢理飲み込んで声を絞り出す少年。

「えっとね、確か、えい…」

「わあああああああああ」

パチパチと瞬きをする女の子。

「あのね、えいろく…」

「うわああああああああ」

長い静寂。

女の子は不思議そうな顔をした。

「なぁに?」

「…いや、口が勝手に」

依然不思議そうな顔のまま空を見上げる女の子。

「それにね、空見上げてたらアイシュウっていうのがただようイイ男に見えるんだって。」

「…」

少年は返す言葉が見つからなかったので、無言で空を見上げた。

空の上の方はもう群青色になり始めていた。

「だから、お空を見上げて。それでから笑って。」

女の子は唇の端を指で持ち上げてニコッと笑ってみせた。

その笑顔は、小さな花が咲いたようだった。

少年もつられて空を見上げたまま微笑んだ。

「ねえねえ、なんでそんな変なお面つけてるの?」

少年は女の子に顔を向けた。顔の上半分を隠す固そうな面。

女の子はその仮面に、目の穴が開いていないことに気が付いた。

「そんなんじゃお空見えないじゃない」

おもむろに少年の仮面に手を掛ける女の子。

少年は慌てて仮面を押さえようとしたが、動くことができなかった。

仮面が外され、暖かい風が髪を揺らす。

女の子が見たのは、少年の眼。そしてその眼にくっきりと映る、自分自身の目。

少年の眼は、鏡のように空を映して茜色に光り、少女の色素の薄い髪や肌、夜空のような瞳の細部まで映していた。

じっと少年の眼を見つめる女の子。

「…気持ち悪いでしょ?」

目を伏せる少年。

「ううん」

女の子はとびきりの笑顔で返した。

「宝石みたいでとっても綺麗。」




















作者コメ:どうも、MESHI・6月号です。

前置きだけで1回分になっちゃいました。フリーバトラーズです。別の小説が始まったとかじゃありません。

なんか登場人物達だけが勝手に突っ走っていたので、舞台設定をちゃんとしておこうと思いましてですね…(ごにょごにょ)

…というか何月号とか…雑誌じゃあるまいし…。ごほん。



それではまた~!