コメディ・ライト小説(新)
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.12 )
- 日時: 2017/01/20 21:47
- 名前: SAKUYA (ID: 5YaOdPeQ)
〜第10話 ヒーロー〜
私は、『ヒーロー』という存在を信じていない。
味方のピンチに、都合よく現れては御都合主義の必殺技やらなんかで敵を倒してしまう。
そんな必殺技など、この世には存在しないのに。
ピンチに駆けつけてくれるヒーローなんて、この世界にはいないのに。
『公園前駅。公園前駅です。』
アナウンスが流れたと同時に、私は電車から降りた。
急いで改札を通り、駅を出た。
こっからどこへ向かえば良いんだろう?
私はneonを離れた。理由は分かっている。『嫉妬』だ。
嫉妬という感情に、私は今日初めて出会った。
いや、久しぶりに、と言った方が正解だ。
久しぶりに会ったその感情は、とても禍々しく、醜いものだった。
人には醜く汚い感情がいくつか存在している。その中でも最も醜いと思うのが、『嫉妬』だ。
私は、竜胆さんに『嫉妬』した。
友達と言ってくれたやよいちゃんと、会ったばかりなのにとても仲良くしている姿に、妬ましくなったにだろう。
そして、羨ましかったんだろう。
自分には持っていないものを、竜胆さんは持っている、やよいちゃんもだ。
そんな彼女たちに憧れ、それと同時に妬ましくなってしまった。
その感情が最高潮に達した時、私はneonから離れてしまった。
家にも、帰るわけにはいかない。
今日はお母さんが休みの日だ。帰ったら、またお母さんと喧嘩になってしまうに違いない。
行き場を失い、公園のシーソーに私は一人でぶら下がった。
どうしてこんなに、うまくいかないのかなぁ…。
知らずのうちに、涙を流していた。
また、居場所を失った。
自らの手で、居場所を失わせた。
これからどうすれば良いかが一切わからない。
…どうすれば良いの?
「水原さん?水原さん!!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
耳障りな声。だったはずの声。なぜか今は、全く気にならない声。
「どうしたの?こんなところに一人で。竜胆達と一緒じゃなかったの?」
葉山…。
もういい、今は私に話しかけないで…。
「加納、ちょっと待ってろ。」
「言われなくても離れてるよ…。」
相変わらず加納はムカつくな…。目測でも半径5メートルは離れている。
普段ならムカついていたはずのこの光景。なぜか今は、安心している。
安心しているのに、話しかけないでほしいという感情もある。
自分でも、自分の事が分からなくなってきてしまっている。
苦しい。
ひたすら苦しい。
「加納、竜胆と連絡取れた?」
「今取れた。メール来た。今から公園まで来るって。あと僕達が来るの遅いって怒ってた。」
…やよいちゃん達が、ここに来る?
…いやだ。今は、彼女達と合わせる顔もない。
まだ、自分の中で気持ちが整理しきれていない。
感情を、押さえつけられていない。
「まさか道路が事故だとは思わないだろ。電車で行くのがいやだってお前が駄々こねなければすぐ来れたのに…って水原さん?どこ行くの!?」
考えるよりも先に、体が動いていた。
どこへ?どこへ向かえばいい?
こんな私が、どこへ向かえばいい?
「待って、水原さん!!」
何を、すれば良い?
何を…すれば…。
「水原さ…。」
何かとぶつかったのだろう。
私は倒れていた。何が起きたかすら、把握できていない。
今、何が起こったの?
目を開くと、そこには…。
「あれ?水原。どうしたんだ?」
…須原がいた。