コメディ・ライト小説(新)

Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.18 )
日時: 2017/02/27 21:06
名前: ラッテ(SAKUYA) (ID: 5YaOdPeQ)

〜第13話 成長〜

私は本当にバカです。

さぐりんが誘ってくれたのに、ついつい自分だけ楽しんでしまいました。

『友達』なのに。

私は、自分がやられていた事を、自分でやってしまいました。

友達に、無視される。放置される。

それがどれだけ辛い事か。私がよく知っているはずなのに。

恐らくさぐりんはとても傷ついています。私のせいです。

支えになるって言ったのに、このざまです。

ごめんなさい、さぐりん。

私は謝罪してもしきれません。でも、謝罪するしかありません。

こんな私に残された道は、それしかありません。

****

「ごめん!やよいちゃん!竜胆さん!勝手にいなくなって迷惑かけちゃって…。」

謝罪しようと思っていたのに、先にさぐりんがしてしまいました。

「さぐりんが謝る事無いですよ…。私がさぐりんのこと考えていなかったから…。」

「うん、私も悪かった。私の方から誘っておいたのに…。ごめんね、水原さん。」

こんな謝罪でさぐりんは許してくれるのでしょうか?

あの時の私だったら、謝られても絶対に許さなかったはずです…。

…さぐりん…。

****

「何で謝るの!?私が悪いのに…。本当にごめんなさい!」

やよいちゃんと竜胆さんは何も悪くない。悪いのは、私の方。

勝手にいなくなって、勝手に迷惑かけて。

全部自業自得なんだ。

この2人が謝るの必要なんて、一切ない。

「私が勝手に嫉妬してただけなの…。やよいちゃんも竜胆さんも楽しくしてただけなのに、勝手に私が変な感情抱いてただけなの…。」

この事を言ったら引かれると思った。

でも、言った。言ってみせた。

これを言わなきゃ、『友達』には戻れないから。

****

…さぐりんが嫉妬したのは、私のせいです。

さぐりんが責任を感じる必要性はないんです…。

なのに…。責任を感じさせてしまっている…。

こんな私は、もう…。

『友達』としてさぐりんと接する事は出来ない…。

「いいんです…。さぐりん。もう…。本当にごめんなさい…。」

****

多分この状況を見ている須原なら、何で謝罪ばっかしてるんだ?会話が進まないじゃないか、とか言うだろうな、きっと。

須原の方をチラッと見たら、そう言いたげな表情をしていた。

分かってるよ。

今、踏み出す時なんだ。

成長するときは、今なんだ!!

「もう謝罪はやめよ?私たちは…。」


ずっと、拒んでいた事。

トラウマに二度と触れたくなくて自分の中で封印していた事。

言いたくなかった言葉。

今は言いたい言葉。

なりたくなかった関係。

心の奥底ではなりたいと願っていた関係。



【これからどんな高校生活が待ち受けているかは私は分からなかった。また現実から逃げてしまうかもしれない。いや、絶対そうなるに違いない。


でも、もし。奇跡が起きるのだとしたら。こんな私にでも運命の女神様は微笑んでくれるのだとしたら


『友達』を作りたい。楽しい時間を、過ごしたい。】



運命の女神様なんて、いなかったんだ。

奇跡なんて、起きないんだ。

自分が変わらなければ、いけなかったんだ。

もう現実からは逃げない。あの頃の私には戻らない。

楽しい時間を過ごしたいんだろう?私。

『友達』を、作りたかったんだろう?私。



『お前が変わればそれで周りも変わるだろ?』


過去に須原に言われた言葉が頭の中で蘇った。

あのときは、違う意味で受け取ってしまった。

でも、今ならその言葉の意味がよく分かる。

変わるんだ、私!



「私たちは、『友達』でしょ?私とやよいちゃんは、友達。」

言えた!

長い間言えなかった言葉を、ようやく口に出すことが出来た。

…少しは成長したかな、私。

****

…さぐりん。

あなたがどれだけその言葉を口に出すのが辛かったか、どれだけ頑張ったか。身にしみて分かります。

さぐりんは、勇気を出して言ってくれた。

私たちは『友達』だ、と。

こんな私が友達でいていいはずがない。また同じ過ちを繰り返してしまうかもしれません。

でも、『友達』を失う『過ち』は、もう二度と繰り返したくないです。

それに、せっかくさぐりんと友達になれたんです。

友達じゃなくなるなんて…。とても出来ません。


優しくて、一緒に話してると楽しくて、自分の役割をしっかりと果たしてて、何より笑顔がとてもいい顔をしている…。一緒にいると自然に笑顔になる、そんな不思議な人です。

初めて会って抱きついたとき、さぐりんの奥深くにある暗い暗い感情に気がつきました。

私が抱えていた、感情と同じものでした。

この人となら友達になれるかもしれない!直感でした。

それからの毎日は楽しかったです。

一緒に登校してくだらない事を毎日話した日常は、心に深く刻まれています。

友達を失って、悲しかった、寂しかった私の、心の支えとなってくれました。

一度は失敗を犯してしまいました。

もう。失敗はしません。


だから、私は…。


「…そうですね!私たちは、友達です!!」


これからもずっとずっと友達でいられるよう、頑張ります。

私にとってさぐりんが最高の友達であるように、さぐりんのとって私が最高の友達になれるように…。




****




「よーし、仲直り完了だね!!」

竜胆さんが元気よく言った。

「じゃあ、再び戻りますか。neon!!」

そうだった。今日はneonに行ってたんだ。すっかり忘れていた。

「じゃあ行こっか。もう途中で帰ったりしないから!」

やよいちゃんは笑顔で私の方を向いていた。

なんだか、元に戻れたような感じだ。

竜胆さんは遠くで見ていた加納と葉山の元へ行き、話しかけた。

「ほら、あんた達も行こ!」

「…電車は嫌だよ?女とぶつかる可能性が通常の5倍に、いや、10倍に…。」

「散々遅れておいてそれはないだろう!ほら、さっさと行くぞ!水原さんと七原さんが待ってるぞ!」

そう言って文句を言ってる加納を連れて私たちの元へ葉山が来た。

なんか嫌な予感がする…。

そう思った時にはもう遅かった。

「初めまして、葉山さん、加納さん〜!」

やよいちゃんは笑顔で葉山と加納を抱きしめていた。

そうだった。やよいちゃんは初めての人には抱きつかないと落ち着かないという厄介な性分の持ち主だったんだ。

葉山は

「え、ちょ、あの、な、七原さん!?でいいですよね!?ど、どういう…。」

と普通の男子みたいな反応を起こした。

加納は

「活動限界…。この世の終わりを通り越してビッグバンの再来…。宇宙は再び無と化す…。」

と意味不明な事を言って顔を青くしている。

やよいちゃんは御構い無しに2人を抱きしめていた。

あれ?でもやよいちゃん、竜胆さんには抱きついていなかったような…。

「ねえ、竜胆さん。もしかしてやよいちゃんと会った事あるの?」

「うん、少し前にね。廊下ですれ違いざまに抱きしめられたの。その後チャイムが鳴ったからすぐに離れて教室帰ってったけど、ってか同じクラスなんだけど。まあそれで私はやよいの事知ったわけ。向こうは覚えていなかったんだろうけど。」

…やよいちゃんの性分は無差別で発動するのか。要注意だな。

やよいちゃんの気が済んだところで私たちは電車に乗ろうとした。加納は意気消沈していたため葉山が引っ張っていった。

私は須原の元へ行き別れの挨拶をしにいった。

「須原、今日はありがと。私たちもう行くね。」

「おう。ってかやよいのあの癖、まだ治ってなかったんだな。葉山と加納はご愁傷様です。」

須原は手を合わせてそう言った。

やっぱり昔から初対面の人には抱きついていたんだな。

とすると須原も…。須原もご愁傷様でした。

「明後日からは学校来れるでしょ?」

「ああ、妹の様子もいい感じだしな。久しぶりの学校だな。」

「あんたが来てなかった分の学級委員の仕事溜まってるから頑張ってね〜。」

「え、俺1人でやる系ですか?」

「俺1人でやる系です。」

最高の笑顔でそう言った。

須原はこの世の終わりみたいな顔をした。まあ、ちょっとは手伝ってあげてもいいけど。

…色々今日はお世話になったしね。

「さぐりーん。もう電車来ますよ〜!!」

「わかった〜!!今行く〜!!じゃあ、また今度!」

「おう!また月曜日学校でな。」

私は須原に手を振った。そして、駅の方へ走っていった。

今日は、まだまだこれからだ!

****

…変わったな、あいつも。

中学の時の事も、今日で吹っ切れてればいいんだけどな。

さてと、さっさと夕飯の買い物済ませるか。

あ、そういえばあれも買っておかなきゃな、シャーペン。

教師に怒られたんだよなぁ、ちょっと柄が入っているからって。

そんなもんテストじゃ使えんぞ、買い換えろ!ってな。

まったく、シャーペン一本買うのにどんだけお金がかかることか。

まあ仕方ないか。

2週間後には、中間テストがあるしな。

勉強も頑張りますか〜。