コメディ・ライト小説(新)
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.2 )
- 日時: 2016/12/17 21:20
- 名前: SAKUYA (ID: 6lLQchPF)
〜第2話 須原レイ〜
「あともう少しでつくからな〜。」
「う、うん…。」
この男の名は須原レイ。中学の時一緒のクラスだった男。
この男は、私に中学の頃あることをして来た。その時の光景は今も忘れられない。何をして来たかは、私の口からはちょっと言えないが。
とりあえず、この男は私の人生を大きく変えた男だ。いい意味でも、悪い意味でも。
そんな男がまさか同じ高校とは思いもしなかった。
この男は勘が鋭く、何か隠し事をしていてもすぐ勘付かれてしまう。中学の頃も、そうだった。道に迷ってしまったという恥ずかしい事実も、見抜かれてしまった。
この男も私と同じ三組で、 入学式の時は来ていたと言う理由で 先生が探して来いと須原に頼んだらしい。私の事を知っているのは同じ中学だったこいつしかいないから。
「それにしても、水原お前。」
「あ、え、う、うん。何…?」
なぜこの男は前置きもなく突然喋りかけてくるのだろう。とてもびっくりしてしまう。
「お前って突然不登校になったよな〜。元気に登校してたくせに。」
「う、うん…。」
私はクラス内の出来事で不登校になったのではない。おそらく、クラスのみんなからは突然なんの理由もなく不登校になったという風にしか見えていないのだろう。
でも、それで良かった。誰か理由を知っていたらそれが学校中に広まる恐れがあったから。人知れず不登校になるということは、不登校になるという方法の中で一番いい方法なのかも知れない。まあ、不登校自体が悪い行為であるのだけど。
でも、突然いなくなっても誰もが理由を知ろうとは思わなかったのだろう。一番の親友ですら、心配しなかったのだから…。
あんなに仲良かったあの子ですら…。
その時、私は涙を流していたのだろう。須原は、心配そうな声で私に声をかけてきた。
「どうした水原?俺なんか気にする事言っちまったか?そうだとしたら謝るゴメン!」
気にする事言ったなんて言ってないのに、もう謝ってきた。私は少し可笑しくなりフフ、と涙を拭きながら笑った。そして、なんでも無いよ、と言った。
なんでも無いんだ。誰の力も借りず独りで生きて行くと決めたあの日から、しばらくの時間が経った。もう、誰にも心配されなかった悲しみなんて、どうでも良くなっていたのだ。
どうでも、良く…。
「心配したんだぜ?俺。あんなに元気だったお前が突然休み始めたんだから。」
「え?」
突然の言葉に、びっくりしてしまった。この男は、相変わらず前置きもせずにそういうこと言うんだから…。
でも…。
「お前の家に行ったんだぜ?なのにお前、お母さんに誰にも会いたく無いって言ったらしいな。あんときゃ傷ついたんだからな。」
確かに不登校になってから少し経って誰かが尋ねてきたという記憶はある。その時は、追い返してしまったけど、まさか須原だったなんて…。
「ま、でも。高校は来る気になったんだな!正直言って同じ中学出身クラスに一人もいなかったから少し心細かったんだよな…。お前が同じクラスでよかったよ。」
誰にも心配されていない。
そうやって決めつけて、勝手にふてくされていた私。
でも、私を心配してくれていた人は、いたんだ。
家にまで来てくれる人が、いたんだ。
私がいてくれて良かったと言ってくれる人が、今目の前にいるんだ。
止まっていた涙がもう一度溢れ出て来た。さっき流した悲しみの涙とは違う。嬉しさ、喜び。忘れかけていた感情が、一気に押し寄せて来ては涙として流れて行った。
「ちょ、俺本当になんか泣かせるようなこと言ってんの?もしそうだったら謝るって!」
もう、罪な男。
「謝りなさいよ、女子こんなに泣かせておいて。ただじゃ済まないからね。」
須原はゴメンゴメンと言って私の機嫌を直そうとして来た。私は歩幅を大きくして歩き出した。須原は私に追いつこうとして必死に謝りながらついてきた。
正直言って、まだ不安はある。
またいじめられるかもしれない。嫌われるかもしれない。
でも、もう私は心を閉ざさない。不登校になんて、ならない。
私を必要としてくれている人が、この世界にいるって分かったから、ね。