コメディ・ライト小説(新)
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.23 )
- 日時: 2017/03/15 18:34
- 名前: ラッテ(SAKUYA) (ID: 5YaOdPeQ)
〜第17話 姫野 サクヤ〜
姫野サクヤ。
イケメンで、しかも性格が良く、更に面倒見も良い。おまけに運動面ではテニス部エースとして全国大会に出場した程の実力を持っている。
この人物を一言で言い表しなさい。
そう聞かれたら、誰だって『勝ち組』と答えるだろう。
彼は仲間にも恵まれている。足りないところなんてどこを探しても無い。
私とはまるで正反対の世界で生きてきた人間なんだな、と勝手に思っていた。
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その人物に!今!この瞬間!
転びそうになったところを助けられた。
相当目立ったらしく、ゾロゾロと野次馬が周りを囲んだ。
私は恥ずかしくて声も出せそうになかったが、そんなことを気にもせず姫野は言ってきた。
「大丈夫?さぐりさん。怪我はない?」
イケメン!!
まずは他人の心配をしてくれる。
すごいぞ。どこぞの顔だけイケメンも見習ってほしいものですな。
「いや、大丈夫。ありがと。」
起き上がろうとすると、なんと姫野は手を差し出してくれた。
世界が認めるイケメン!!
ああ、この状況を須原が見たらなんて言うかな?
なんてフラグ建てたらあいつ来ちゃうか。
「…み、水原?」
ほら、来た。
何だろう、なんて表現すれば良いかは分からないけど、とりあえず怖い。特に、目が。
「あ、おはよう。レイ。」
「…おい。水原。」
姫野の挨拶を華麗にスルーして、須原は私の元に寄ってきた。
そして、怒りと軽蔑に満ちた顔で私に吐き捨てた。
「お前は良いやつだと思ってたんだがな。こんな青春チートに手を出すなんてな。見損なったぞ!」
とりあえず須原は何か勘違いをしているらしい。
なんか無性に腹が立つ。何とか怒りを堪え、須原に状況を説明しようとしたが、それより先に須原が話し始めた。
「おい、今思い出したけどな、このクラスの図書委員ってこいつなんだよ。」
「え?そうだったの?」
そうか、姫野が図書委員かー。もっとクラスのリーダーとかやってそうな気がしたんだけどな。
あ、それは須原か。なんかこの2人全然似てないな〜。
「いいか?こいつはチート能力をたくさん持ってるくせに、それを出し惜しみしている草食系男子なんだ。」
ただの謙虚な人だと思うんですが。
「更に、こいつはモテる。モテまくる。俺とは違ってな。こいつは人類の敵なんだ!」
ただのイケメンだと思うんですが。あとあんたがモテないのは仕方ないと思うんですが。
「こんなロクでもない奴に関係したらどうなるかわかんねーぞ!?図書委員の件は、やよいのクラスの図書委員に頼もう。そうしよう。異論は認めん。」
ただの非リアの悲痛な叫びだと思うんですが。
わざわざ他のクラスの図書委員に頼むのも時間がかかるため、姫野で良いと言ったのだが、須原は怒り狂ったような顔でこっちを向いてきた。
その瞬間、非リアの空気が支配していた教室の空気が、一気に浄化されたような気がした。
後ろを向くと、姫野が肩をトン、と叩いていた。
「図書委員が何とか、って聞こえたけど、何か困っている事でもあるの?僕でよかったら、手伝ってあげるよ。」
超絶イケメン!!
須原が怒りの矛先を私から姫野に変更した。
須原は姫野の元へ行き、次々と言葉を並べた。
「あー、いーですよねー、リア充様はー。そうやって非リアを見捨てていけば良いんですよー。あ、もしかして視界に入ってませんー?俺の事消しかすを丸めて捨てた奴としか見てませんー?安心してくださいー。俺もあんたのこと眩しすぎてハゲにしか見えてないからー。いやー、さすがリア充様だわー。」
姫野はさすがイケメン。須原の話になる事なく、冷静に返している。
目立っているため早くこの場から逃げ出そうとして教室から出ようとした時、ちょうど登校してきた葉山と加納に出くわした。
「何の騒ぎ?水原さん。」
あ、やっぱ同じイケメンでもなんか違うわ。
姫野は純度100%イケメン。葉山は、混合中途半端イケメン。
何なんだろうね、この違い。
「転びそうになった私を姫野が助けてくれたんだけど、その状況を須原が勘違いして、姫野に突っかかってるの。」
葉山は、うわー、くだらねー、という目をしていた。
加納は、手に持っていた鞄を地面に落とし、倒れた。
「助けた?つまり、女子に触った?しかも、助けたということはいつもよりも密着度が高い?あ、ダメだ。他人のことでも想像したらめまいが…。」
こいつ一発ぶん殴ろうかな、とも思ったけど、その必要はなかった。
「おはようっございます〜!!」
豪快な挨拶と共に教室に飛び込んできたのは竜胆さん。
着地地点には加納がいたため、加納は黙った。
ギャーギャー言っていた須原も竜胆さんの声にビックリしたのか、話すことをやめた。
やっと静かになった、と思い先に行こうとした時、後ろから姫野が私に声をかけた。
「なんか図書室で困ってることあるんでしょ?昼休み、一緒に行こうか。」
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昼休み。
ここは図書室。
【ある少女は成長することを拒むのです。】を探してもらっている。
一応須原もついて来た。
ずーっと何かぐちぐち言っているけど。
なんてことを考えてたら、捜索が終わったらしい。
「その本は、確かにこの学校に置いてあった。でも、今は生徒が借りている。僕からも声をかけておくから、さぐりさんも見かけたら言ってみたらどう?えーと、2年生の、金神さんだね。」
「ありがと、姫野。」
「どういたしまして。これからも何か困った事があったら頼って良いからね。」
「うん、本当にありがと。」
2年、金神…。
その人が、私が今探している本を持っている。
ようやく、ようやくあの本を見つける第一歩を踏み出す事ができた。
さて、本の件は解決したし、放課後教える事をまとめておこう。
あとテストまで、2日か〜。
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やっと終わったか。
まったく、水原の奴も、あんな奴に頼るなんて…。
ん?あいつこっちに向かって来てる?
何だろ。
俺のところまで来た姫野は、ボソッと呟いた。
「水原さぐり。面白い人だね。大分変わってたけど。」
俺が姫野の方を向くと、姫野はクルッと体を回転させて帰ろうとした。
そして、帰り際に言い放ってきた。
「七原やよいが勉強出来ないのは、お前のせいだ、レイ。」
俺はその場で固まっていた。
あいつとはあまり話した事がなかったけど、どこか懐かしい気がしてたんだ。
そうだ。あいつは…。
あいつは…。
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そして時は過ぎ、遂にテスト当日ー。