コメディ・ライト小説(新)
- Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.3 )
- 日時: 2017/02/11 11:24
- 名前: SAKUYA (ID: 5YaOdPeQ)
〜第3話 七原やよい〜
突然だが、私は今窮地に立たされている。
遅れて教室に入ったまでは良かった。問題はそこから起こった。
「おー、お前が水原か。早く席につけ。須原もありがとな。」
「おーっす、先生。これであの件も無しって方向で…。ダメ?」
あの件?私は席に着きながら思った。相当不思議そうな顔をしていたのだろう。隣に座っていた男子が話しかけてきた。
「君が水原さんね。ヨロシク。僕の名前は葉山トオル。その顔は今何が起こっているか分からないっていう顔だね?」
葉山は、一言で言ってしまえばイケメンであった。整った顔立ちをしていて、雰囲気も爽やかだ。
しかし分かる。こういう男は大体腹黒いのだ。大方、困っている私に話しかけて好感度をアップさせようという魂胆だろう。まったく、私はそんな手には引っかからないぞ。
「あ、うん…。あの件って何かあったの…?」
…心で思っていても言葉は正直だった。結局素直にこの男に頼ってしまった。
葉山は笑い、私に説明しようとしたところで先生が須原に話しかけた。
「ダメだ。一度やるって言っただろう?学級委員。お前が手を挙げたんだろう。やらなきゃダメだ。」
「そ、そんな〜…。俺は軽い気持ちで手を挙げたのであって本心で挙げたわけでは…。」
なるほど。大体事情は理解した。さて、私はどういう状況なのか分かってスッキリしたが、葉山はどうだろうか…。
隣を見ると案の定、悔しそうな顔をしている葉山がいた。
「…せ、先生が言ってくれたのでもう良いだろう。困った事があったらなんでも聞くと良いよ…。」
そう言って葉山は何事もなかったかのように前を向いた。
葉山トオル…。変わった人だな…。
まあ、これまでだったら須原が学級委員をやらされて須原だけがデッドエンドで終わりだったのだろう。悲劇は、ここから起こった。
「何と言おうと、お前が学級委員だ。」
「うぅ…。」
どうやら学級委員は須原に決まったようだ。しかし、男子の学級委員はいいとして女子は誰がやるのだろう?もう決まっているのだろうか?そんなことを思っていたら、とんでもない言葉が聞こえてきた。
「まあ、お前に無理矢理やらせたわけだからな。女子も無理矢理やらせてやろうじゃないか。須原。一人女子決めろ。そいつを学級委員にする。」
……………。
須原が指名する女子…。
何となく予想はついた。
ああ、神様…。どうか私を救って下さいまし…。
「え?良いんすか!?よ〜し、じゃあ…。」
「信じらんない!」
私は怒りながらズカズカと廊下を歩いていた。後ろには、オドオドしながらついてきている須原の姿があった。
「散々女子を泣かしておいてその上学級委員に指名?フフ。バカじゃないの!?」
「ご、ごめんよ〜…。」
まあ、予想はついていたから覚悟はしていたが。それでも無理矢理学級委員をやらされるというのは嫌な気分だ。なんか、こういう事前にもあったような気がするな…。
って、そんなことはどうでもいい!今は学年主任に学級委員になったと報告しにいかなければならない。まったく、メンドくさい…。
「それにしても、お前変わってないな。」
「え?」
安定の不意打ち。急に意味不明な事を言われ頭の整理が追いつかなかったが、それを御構い無しに須原は話を続ける。
「なんか、不登校になってたからもうちょっと気分的に沈んでんのかなぁ、って思ってたけど、昔そのまんまだ。元気で、明るいお前そのまんま。」
…確かに。実は私も意外だ。学校に来るまではどうせまた不登校になるさ、とネガティブな事ばっかり考えていた。
でも、今はそんな事ない。なんか、昔の私そのままなような気がする。もうちょっと、暗い感じになってしまうと思っていたのに。
それもこれも全部、こいつのおかげなのかな…。
って!!そんな訳ないない。まさかこんな奴のおかげだなんて…。
でも、こいつには感謝しないといけないのかな。なんかこれから楽しい学校生活がまってそうな気がする。
「…あんたのおかげよ、ありがと。」
「え?何て?声小さくて聞き取れないよ?」
「ううん、何でもない!」
こいつに面向かってお礼が言える日は来るのかな…?
そんな事を思いながら、私は学年主任の元へ向かった。
「じゃあな、水原〜。」
「うん。お疲れ。」
私達は学年主任への報告を終え、ちょうど下校時刻になったので解散した。
今日は入学式なので午前授業で終わる。今は11時だ。最終下校時刻は12時なので、もうちょっと学校を見て行こうかと思い足を運ばせ始めたその時、誰かとぶつかったような感じがした。どうやら後ろに誰かいるようだ。
私が後ろを見ようとしたその瞬間、後ろにいるであろう何者かが突然抱きしめてきたのだ。
「〜〜〜っ!?」
まさかあの葉山か!?と思ったが、背中に二つの柔らかい感触を感じたので、女子か、と思い安心した。しかし、それでもなぜ抱きつかれたかはわからない。話しかけようとしたその時、抱きついている女の子は私にある言葉を発した。
「何だか、あなた私と同じような感じがします。名前教えてください!!私の名前は七原やよいです。あなたは?」
私と似ている?この子は、何者なんだろう。でも、悪い子ではなさそうだな。
名前を尋ねられたので、私は自分の名前を彼女に教えた。
「私は水原さぐりだよ。」
「ほう!さぐりちゃんか〜。いい名前だと思います。」
私は、彼女に一番の疑問をぶつけた。
「あの、やよい…ちゃんはどうして私に抱きついてきたの?」
すると、想定外の答えが返ってきた。
「あ、わたし、初対面の人には抱きつかないと落ち着かない性分なんです!!」
…。
えっと、つまり…。
「じゃ、じゃあもしかして…。だ、男子にも抱きついたりしてんの…?」
「当然ですよ。なぜか嫌がられちゃいますけどね…。わたし悲しいですよ…。」
いきなり女子に抱きつかれて動揺しない男子なんていないだろう…。
七原やよい…。何なんだこの子は!?