コメディ・ライト小説(新)

Re: ある少女は、成長する事を拒むのです。 ( No.4 )
日時: 2016/12/21 17:42
名前: SAKUYA (ID: 5YaOdPeQ)

〜第4話 友達〜

初対面の人には抱きつかないと落ち着かない性分。

いまだかつてこんなにメンドくさい性分を持ち合わせた人間がいたのだろうか?私が不登校になっている間にこんなにも世界は変わってしまっていたのか…。

いや、それは無い。いくらなんでも、二年半の間に初対面の挨拶がハグしあうだなんて、そんな世界にはなっていないはずだ。そう願いたい。

「ねえねえ、さぐりんは何組なんですか?」

「ええっと、ってさぐりん!?」

さぐりん。これは恐らくあだ名なんだろう。 しかし、こんなあだ名で呼ばれたのは初めてだ。なんか、もっと他に、さぐりっちとかそんな感じで呼ばれていたような気がするが…。

『さぐりっち!今日一緒に帰ろ!』

『宿題やるの忘れてた!さぐりっち、見せてくんない?』

『いつまでも一緒にいようね、さぐりっち!』


『…さようなら、水原さん。』


「…たの?どうしたの?さぐりん。」

やよいちゃんの声のおかげで私は現実に引き戻された。何よ、あんな事もうとうの昔に忘れたじゃない。忘れた…はずだ。

「何でもないよ。あ、ちなみに私は三組。やよいちゃんは?」

「私は四組!隣同士ですね!」

やよいちゃんはなぜか敬語を使っているが、明るく元気な声で話しているため喋っていると楽しくなるような気がする。

こんな気持ちにさせてくれる人が、昔いたはずだけど…思い出せないや。

「…ところで、なんでやよいちゃんは私に話しかけてきたの?」

抱きついてきたの?と聞いてもよかったのだが、さすがに抱きつくというワードを口に出すのが恥ずかしくなってきたのでこう質問した。

「私ですね。友達をいっぱい作りたいんです!!でですね、この人なら良い友達になれる!と思ってあなたに接触したわけですよ〜。」

…友達。この言葉を聞いたとき、私の体に何かが走った。少なくとも、良いモノでは無いようだ。

作りたいと願った友達。でも、いざ友達という言葉を聞くと、過去の事を思い出してしまう。

「というわけでさぐりん!友達になってくれますよね?」

やよいちゃんは明るい声で私を誘った。

友達。確かにできたら楽しいだろう。

でも、私は知っている。知ってしまっている。

友達が出来た時の喜びをはるかに上回る…。







『裏切られた』時の悲しさ、寂しさを。そして、怒りを。