コメディ・ライト小説(新)
- Re: ハツコイ【コメント募集中(o´罒`o)】 ( No.808 )
- 日時: 2017/07/28 00:13
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
~夏海サイド~
昔、私はツェルニーが嫌いだった。
数ある楽譜から、曲が何曲か毎週宿題に出されたけれどツェルニーはその出された曲の中でも毎回後回しにしていた。
曲、と呼ぶにはあまりにもつまらないなぁ──とその頃は感じていたし、だからと言って指の体操の曲のように常に同じことの繰り返しというわけでもない。
中間に位置するツェルニーは、簡単そうであって実は一番難しいと感じていたように記憶する。
「今弾いてみたら、こんなに楽しめるなんて不思議」
あの頃に、今みたいな楽しみ方を知っていたらもっと練習が苦じゃなかったかもしれない。
後回しになんて、しないで良かったかもしれない……。
今の私が後回しにしているのは、「悲愴」だ。
気づかないフリをしていた。──実際はそのことに気づかないようにしていただけだったのに。
「逃げてたって、いつかその逃げる足を止めなきゃ行けなくなるんだ。それを今にすればいいんだよね」
独り言。……自分に言い聞かせるようにして言った。
「ツェルニー30」を閉じて、悲愴を開いた。
──その瞬間、ツェルニーの軽快な音とは似ても似つかない、悲愴のメロディーが脳内に流れ始める。
あぁ、これが私が今逃げていたことだ。これこそ、今の私が一番向かい合って行かなくてはならないこと。
ずっと引き続けて、若干削れて滑らかじゃなくなってきた鍵盤に指を乗せる。
最初の部分は、「歌いたくなるような旋律」だ。
先生が言うには、悲愴のここの部分は「歌いやすい音域が広がっている」のだとか。
メインで聞こえる音と共に、私は内声部分にも気を使う。
一音間違えると、メロディーが……歌が途切れてしまうから──。
雰囲気が一転する。
つい気持ちが高まって、走ってしまいそうになるが必死に抑えた。
敢えて落ち着いて、最初よりも滑らかに弾こう……くらいな気持ちを私は持たなきゃいけない。
この曲はすごくいい曲だ。
今まで弾いていて何度も感じたけれど、良くも悪くも私にとって思い入れのある一曲になることだろう。
苦しみや悲しみ、辛さを乗り越えた先に何があるのかなんて乗り越えない限りは分からない。
そこに辿り着くまで、まずは想像で良いからどんな感じかを思い描いて練習するしかない。
まだ断言するのは難しいけれど、私は「練習し続けて良かった」と思えると信じている。
最後の音を弾き終える。
──今の私の演奏は、これまでと比べてどうだっただろうか。
思い描く想像に一歩だけでも近づけてたら、いいな……。
【続く】
本当に私もツェルニー苦手です←
何だろう、無意識に後回しにしちゃってます( '-' )←
byてるてる522