コメディ・ライト小説(新)
- Re: ハツコイ【コメント募集中( ᐛ )و】 ( No.827 )
- 日時: 2018/01/18 19:36
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://久々の自宅PC←
~第19話 私が奏でたい本当の「悲愴」 夏海サイド~
この前、テレビでパイプオルガンの特集番組がやっていた。
ほぼピアノと同じような演奏方法だけど、足でも音を奏でるという部分と独特な音色が明らかに違うということくらいしか私には知識がなかった「パイプオルガン」は一瞬で私を虜にした。
──ピアノは演奏者によって音色が変わってくる。
同じ曲でも10人が弾いたら10の曲に……100人が弾いたら100の曲に変わると言われているが、パイプオルガンは違う。
誰が弾こうと基本は同じ音が鳴る。
テレビから流れるパイプオルガンの音色に私はとても夢中になってしまっていた。
気がついたらご飯を食べていた手さえも止めて齧るように食いついていたのだ。
*
一昨日にあったピアノのレッスンでも、先生にそんなような事を言われた。
「私が弾く悲愴と夏海が弾く悲愴、全然違うのわかる?」
「はい」
私は先生のピアノの音色が大好きでずっと目標にしてきた音色だ。上達への近道は憧れの人を真似ること。
──その言葉を聞いてから、私はずっとずっと先生を真似てきた。
どんなにやっても同じような音色は奏でられないのだけれど……。
「真似ることで得られる事はもちろんたくさんあるけれど、真似ることから最終的には自分の弾き方を見つけていかなきゃいけない。 最終形は夏海と私とで異なっている筈よ」
「最終形……」
そういうものなのか。
──自分の弾き方。 そう聞くと今までも少なかった自信がさらに失せていく。 完全消滅も気持ちの持ち方次第で傾く。
「この曲は、きっちりかっちりが最終形じゃなくて自分のアレンジを加えてかっこよくまとめることでやっと曲と呼べるまでになる。 たくさんのピアニストが弾いている曲だと思うけれど彼らは彼らでそれぞれ曲に込めている思いは違うと思う。 それを読み取れとまでは行かなくても違うな、くらいは感じていて欲しいっていうのが私の願いかな」
先生の言ったことは、すぐにすんなりと頭には入ってこなくて……。
「少しずつでも、何となくでもいいから頭の端の方にでも常に入れておいて」
私の戸惑いを感じたのか、先生は笑ってそう言った。
「分かりました」
パイプオルガンと、ピアノは違う。
──自己表現をするのには……今の自分の思いを訴えるなら、ピアノで演奏する方がずっと伝わる。
*
テレビを消して、テーブルを片付ける。
手を洗ってからピアノのある方へと向かった。
「私の悲愴を見つけたい」
見つける、なんて言い方普通はしないだろう。
けれどなんだか、すごくぴったり当てはまる気がするのだ。
そっと鍵盤の上に指を乗せた──。
【続く】
PCから参上です←
iPadが故障しました(´・ω・`)
直り次第まだそっちで更新ですが、しばらくはこっちかな……。
またのんびりになります←
byてるてる522