コメディ・ライト小説(新)

Re: 空に輝く二つの月。【イラスト掲載(*´꒳`*)】 ( No.109 )
日時: 2017/08/10 19:14
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

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「ただいまより、開会式を始めます。選手の皆さんは各学校1列で並んでください……」
アナウンスの声と共に、ランニングの足やパスをして上にふわっと上がっていたボールが一瞬でなくなる。

いよいよ開会式だ。──これが私の中学校で最初の部活の公式戦だ。

「開会式は選手じゃない私達も客席から座って見てるんじゃなくて選手と同じように立って参加してください!」
2年生の先輩の指示に、私達は声を揃える。


あ、七瀬先輩だ。
遠くからでも七瀬先輩のオーラが伝わってくる。

「かっこいいね、先輩達」
隣にいたようちゃんも、私と同じことを思っていたようで……

「うん! こうして見るとここから選手の人達ってかなり離れてる気がするけどばっちり声が届くくらい大きい声で応援しよ!」
「そうだね! サポートも頑張らないと」


*

開会式が終わり、アップの続きを選手メンバーが終えて──いよいよ1セット目が間近に迫った。

「1セット目の相手は、過去に何度か練習試合をした相手でお互い癖とかも分かっている状態だと思うからミスを抑えて丁寧に1本1本決めていきましょう!」
七瀬先輩の言葉に、選手メンバーの人達がさっきのように「よし!」と返事をした。

「ふうちゃん、みのちゃんも頑張ってね! 上から声がうるさいくらい聞こえるように応援頑張るから!」
「わかった」
「ありがとう」
初めての大会、っていうのは同じなのに応援と選手でこんなにも大会の関わりが変わるんだな。



1セット目、最初はサーブからだ。
コートにはふうちゃんが入っている。

「ナイスサーブです!」
スッとトスが上がって、そこから全く想像できないくらい速いサーブが放たれた。
無回転サーブで、ぶれた球のまま相手のコートに入る。

「乱れた!」
横にいた2年生の先輩が声を出した!
その先輩が言った通りで、相手からはチャンスボールが返ってくる──。

「チャンスです」
「打てます!」
レシーブしたボールはセッターから七瀬先輩の方へと上がった。

「七瀬先輩!」
思わず私は誰よりも叫んでしまった。

より真剣な顔になった七瀬先輩はそのまま相手の穴を狙って、スパイクを……決めた。

最初の1点は、私達のチームから始まった。


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Re: 空に輝く二つの月。【イラスト掲載(*´꒳`*)】 ( No.110 )
日時: 2017/08/14 02:09
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

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1セット目をとった私たち、相手校も次は取らせない……という強い気持ちが離れていても伝わってくる。

「なんだか、相手校の人達1セット目とは別のチームみたいだね」
「うん……先輩とかふうちゃんたち、大丈夫かな」
ようちゃんの言葉に私は、不安を隠せなかった。

1セット目は25-15という結果だったが、2セット目はここに来て16-15となかなか接戦でそれぞれ点の取り合いになっているのだ。

「このまま勝ってあとの試合のことを考えたら、できればこのセットはとっておかないと辛くなってくると思うから精一杯応援しよ」
2年生の先輩が私たちに声をかけてきた。

「はい!」

相手のサーブからだ。
1セット目ではサーブを打っていない人だ。……一体どんなサーブを打つ人だろう。

「1本で切りましょう!」
「攻撃まで繋いで!」
私たちの声がコートに届いてるかは分からない。けれど、届くまで声を出し続ける。


……ビュン、という効果音が付きそうな──ジャンプサーブだった。
ボールはふうちゃんの方へいったが、うまく上がらず後ろへ弾かれてしまった。

「ふうちゃん、次上がるよ!」
「ナイスファイト!」
ミスをした時、応援は1番盛り上げる……先生に言われたことだ。
もちろんコートの中が暗くなってはいけないが、暗くならないわけがないのだから……という先生の考えだ。

外から見ている私たちが盛り上げる。──雰囲気づくりは重要な役目だ。

相手のサーバーが、再び強烈なサーブを放ってきた。
完全にふうちゃんを狙った鋭い角度の球だ。

……自分が次は狙われる、とある程度心構えしていたのかふうちゃんもさっきよりしっかりとしたポジションでサーブレシーブをした。

「あがった!」
その球をセッターがあげる……少しネットにに近い。

「七瀬先輩!」
そのボールは七瀬先輩の方へ。横にいた2年生の先輩が名前を呼んだ。

フェイントで七瀬先輩は相手にボールを返して──決めた。

流れが相手校からこっちへと変わってきている。


ふうちゃんのサーブだ。
「落ち着いて!」
「いつも通りで!」
離れた場所から見たふうちゃんの表情はすごく落ち着いて見える。
主審の笛がなったのを聞いてから、ふうちゃんはサーブトスをあげた。

ネットすれすれを通ったそのサーブは、相手コートの真ん中に落ちた。
サービスエースだ。

私たちは、わぁっと盛り上がった。
ただ1番プレッシャーを感じているのはやっぱりふうちゃんだと思う──。


私はそっと手を組んで、目を閉じて祈った。

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