コメディ・ライト小説(新)

Re: 空に輝く二つの月。【コメント募集中!】 ( No.65 )
日時: 2017/02/22 18:34
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

*

「なー、小貫さーん」
俺はすかさず、前にいた小貫さんに話しかけた。
本気だとゆいの前で──断言、宣言した日から何かが俺の中で吹っ切れた気がする。

「……何?」
普段、井筒さんやゆい……他の人と話している声と違ってトゲがある。
冷たい小貫さんの視線をビシビシ感じながら、俺は尋ねた。

「次って移動教室ー?」
……ん、何聞いてんだ俺。

いきなり過ぎて──あぁ、ほらやっぱり小貫さんも汚いものを見るかのような視線変えて俺を見てくる。

「そのくらい自分で分かるでしょ。なんでわざわざ私に聞くの……?」
「いやー、なんとなく」
小貫さんと話がしたかったんです……なんて言ったら引かれて話しかけることさえ許されなくなってしまうかもしれない。

「なんとなくって、数学で移動教室なんて滅多にないでしょう……?」
不満に思いながらもしっかり俺のふざけた質問に答えてくれる──やっぱり何だかんだで優しいのだ。

「ありがとー」
俺がそういうと同時に小貫さんは全くの反対方向へとつかつか歩いていった。

やっぱり嫌われてる、というかうざがられてるかもしれないけど……。


きっといつか、振り向いて欲しい。
──そんなストーカーとか、そういうのじゃなくて。

俺は遠くにいるゆいに向かってガッツポーズをした。

ゆいは苦笑しながらこっちを見ている。


……時間が近づいて、お互い席に着いた。先生が入ってくる──でも俺は小貫さんの横顔を少し見つめていた。


俺だってきっと全部分かっているわけじゃない。
まだ知らないことばかりだろうし、色々と間違う。

でもきっと、ゆいにも俺と同じ「恋心」があるはずだから……嘘をつかないで、自分に正直になってそれに気づいて欲しい。

後ろにいるゆいに届くはずなんてないのに、強く願った。

空回りして、バカやって……。
傍から見れば変人だけど、俺なりに考えてる。


──人は見かけじゃなくて、親しくなってから決めて欲しい。


あとで、ゆいにサッカーしようって言ってみよっかな。
ゆいの気持ちを教えたいけど、自分で気づいて欲しい。


……絶対にゆいにとって、井筒さんは大切な人、存在だと思うから。


**

Re: 空に輝く二つの月。【コメント募集中!】 ( No.66 )
日時: 2017/03/12 13:44
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

*


「……だから違うって。そんな星の思い込み過ぎだろー?」
休み時間。
怒ってるのか、冗談っぽく言っているのか、いまいち区別がつけづらいトーンでゆいは言った。

本当に無自覚だというこの現実から、1歩……0.5歩でも構わないから進めようと俺はしつこいくらいゆいに聞きまくっている。

──その度に、ゆいから返ってくる返事は決まっているが、俺が思っていた以上に「うっとうしそう」ではないのだ。


返ってそっちの方が助かるのだが……。
そう思いながらまた席に座った。ため息をつきながら座るゆいを横目に俺も頬杖をついていたら……

「高天くん」
と名前を呼ばれた。

「ん?」
と顔をあげると、そこに立っていたのは他でもない小貫さんだった。

なかなか信じられない光景を目の当たりにし、光速まばたきと強く目をこするのを繰り返した。

……が、 見ているものは依然として変化しない。
少しずつ俺の脳が現実だと判断し始めているようだ。

「その、今までの私への態度でずっと気になっていたんだけれど──」
もしかして、その言い方は勘づかれただろうか。

……鈍い小貫さんにそんなことは有り得ない、と自分に言い聞かせつつもソワソワしながら続きの言葉を待った。

俺がそんな風に思っているとは知らない小貫さんは、一呼吸置いてから続けた。

「私にそんなになにか聞いてくるってことは、何かで怪しんでいたり……するの?」
きっと何かのコメディー舞台だったら、大胆に椅子からひっくり返っていただろう。

今の発言は、衝撃的だった。

「……なんで、その結果に至るの?」
思った事を口に出してみる。

「私なりに色々と考えてみた結果、もしかしたら高天くんにマズいことをしてしまったのかなと思って……違った?」

ものすごく真面目に考えているのが分かるから、変に笑えずに反応に困る。

「そんなんじゃないよ」
……「じゃあ?」と小貫さんは聞きたい様子だったが、俺は無理やり「あ、今のって先生?」と廊下を指さしてごまかそうと試みた。

引っかかって小貫さんは「え!?」と廊下を見てから、パタパタと自席に戻っていった。


──この鈍さ。ゆいとは違って小貫さんの考えていることは分からない。
だから「気づいて」とは言えないし……それでもし気づいて俺じゃない他の人に思いを寄せていたら……なんて考えたら恐ろしくて「気づかなくていい」と思っている自分がいる。

似ている、ゆいと小貫さんなのにこうも極端に思っていることが違うと心もなかなか追い付きづらくて困ってしまうなぁ……。


**