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*prologue


──「井筒 月」……。
漢字だけを並べると、全く読み方が分からないという人もいるかもしれない。
仮に苗字に当たる「井筒:いづつ」が読めても「月」という名前を読む人にはあまり出会ったことがない。

「お前が出会った人なんて、ほんとうにほんとうの一握りだけに過ぎないだろ」
というかもしれない。
それを言われたら何も言い返せなくなるじゃない──。


私は、「いづつ ゆえ」という。


自分の名前が特別嫌いなわけでもなければ、もちろん好きなわけでもない。
ちょっと特徴がある名前、というだけで目立ってしまうのが嫌なのだ……。



今日から、私は中学校という新しい感興での生活を始める。
また、一から出会う人に「珍しい名前だねー」とか「それって最近流行りのキラキラネームみたいなの？」と聞かれるのだろうか。


そう思うとほんの少しだけ気が重くなってきた。



──