コメディ・ライト小説(新)
- Re: 空に輝く二つの月。【コメント募集中!】 ( No.84 )
- 日時: 2017/03/26 21:43
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
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学級委員を決める日がやってきた。
──誰か、立候補してくれる人がいますように……と強く願ってばかりいた私は、前にいるゆえの話を半分以上聞き流してしまっていた。
「……大丈夫? ようちゃん、具合悪いの?」
昨日に引き続き、ボーッとしてばかりの私をゆえは優しく心配してくれる。
本当に優しくて自分がこの優しさに甘えているのが嫌になってしまう──。
「ううん。ごめんね、ゆえ。私は大丈夫」
本当に大丈夫なのにうまく笑えなくて、わざとらしい笑顔になってしまう。
そっか、とゆえは言って前に向き直した。
ゆえの背中を見つめながら、私はまた考え始めた。
……自分が学級委員としてクラスをまとめているところ、指示を出しているところ、先生に頼み事をされているところ──。
駄目だ。きっと私が学級委員になったら、逆にクラスに迷惑をかけてしまう。
──誰か立候補する人はいないだろうか。
「それでは男女1名ずつ、学級委員を出します。誰か立候補する人はいますか?」
先生の声と同時にぎゅっと目を閉じた。
「はい」
少し離れたところから、声が聞こえる。
──ハッと声のした方へ視線を向けると、眼鏡をかけた子が手を挙げていた。
自己紹介の時の印象では、大人しそうな子だなぁと思っていたが、こういうところで立候補をする子だと思わなかった。
「それでは、皆さん異論はありませんか?」
先生の言葉に私を含めクラスの全員が頷いて拍手をした。
その子は嬉しそうに笑いながら、頑張ります……と言って着席した。
女子はすんなり決まったが、男子はなかなか立候補する者が現れず若干「めんどくさい」という空気が広がりかけている中で漸く1人の男子がやります、と手を挙げた。
男子はクラスでもかなりふざけている印象が強い男子だったが、皆に囃し立てられ手を挙げた。
そっとさっき立候補した眼鏡をかけている女子の方を見ると、不安そうな表情を浮かべていた。
──あとで、「頑張ってね」とか「出来ることは手伝う」と伝えようか。
先生に前に来て、一言言うように言われて2人の立候補者……我がクラスの学級委員は前に出てきた。
「中学校に入ったら、立候補したいなと思っていました。頑張って皆をまとめられるように頑張ります!」
自己紹介の時に感じた、大人しそうという印象とは打って変わって……頼れる委員長オーラがその子から発せられた。
……やっぱり駄目だ。クラスをまとめられないと他の人がやってくれるのを黙って願っていた汚い私が偉そうに彼女にかける言葉なんてないだろう。
さっきまで自分、そして今の自分を私は嫌った。
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- Re: 空に輝く二つの月。【コメント募集中!】 ( No.85 )
- 日時: 2017/03/30 10:15
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
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「今日さ、バレー部見学一緒に行かない?」
朝からあまりスッキリした表情とは言い難い様子のゆえに、私は思い切ってそう切り出してみた。
「確か、ゆえもバレー部希望だったよね……? 私も気になってて」
まだあまりうかない様子のゆえに私はさらに言葉を続けた。
恥ずかしくなってきて、視線があちらこちらに飛んでしまう。
……まともに、ゆえの顔も見れていない。
と、少し笑う声が聞こえた……と思ったら、ゆえが私の手を掴んで
「もちろん行こう!」
と言った。
元気を出してもらえたみたいで、何よりだ。
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放課後、私とゆえは体育館へ向かったものの……なかなか入るタイミングが掴めず、どうしようかと話していた。
急に入って邪魔してしまったら、どうしよう──。
「あなた達、1年生よね? バレーに興味ある?」
部長さんらしい人がそう言って、中に招き入れてくれた。
笑顔がすごく似合う、頼りになりそうな先輩だった。
ゆえと私は、声を合わせて……
「「バレー部希望です!」」
と言った。
「それじゃあ早速、中に入って体操服に着替えてもらってから──あっちにいる先輩と一緒に準備体操して!……他の1年生もいるから!」
深く頷いて、早速中に入る。
急いで着替えた後に私は色々と体育館内を見た。
改めてバレーのネットを間近で見ると、かなり高い。
それに先輩達も背が高くて、かっこいい。
……私もバレー部に入部したらあんなふうになれるのだろうか。
と、キョロキョロ辺りを見回していると、見た事のある子がバレー部の中にいた。
「ゆえ、あそこにいるのって、先輩に見えるけど高階さんじゃない?」
と言った。
ゆえもそっちに視線を移して、驚いたような表情を私に向けた。
同じクラスにいる時から、一際背の高い人がいるなぁとは思っていたが……まさか同じバレー部に入るとは思ってもみなかったが、改めて考えると高さを求められるバレーにあの身長を活かさないでどこに活かすのだろうか。
「1年生ー! 準備体操始めるよー」
少し離れたところから先輩声が聞こえる。
急いでそっちへ走った。
──初の部活。どんな風なのか不安も期待もたくさんある。
横で一緒に準備体操をしている、ゆえの真剣そうな顔つきを見て、私は気を引き締めた。
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