コメディ・ライト小説(新)

Re: 空に輝く二つの月。【コメント募集中!】 ( No.86 )
日時: 2017/04/04 16:45
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

~part5 高階楓夏~

──中学校に入ったらバレー部に入ろう。

ずっとやって来たスポーツ……それに、私が行くであろう中学校のバレー部はなかなか強いという噂を耳にするし、実際私もその中学校の試合を見たことがある。

学校名の入ったユニホームを着て……相手から来たボールが自分のコートに入れば、落とさないように必死になって繋ぐ姿に、強い憧れを抱いた。


私は身長が高い方だ。
──……それまでは、身長が高くたってみんな羨ましがるけれど、得した事なんて何もないと思っていた。

その気持ちで、ずっとバレーをやっていたから上達しないまま……ズルズルと時ばかりが過ぎていったのだ。


けれど気持ちが変わり、この身長を活かしたいと思うようになり、それまでなるべく高く見えないようにと猫背になっていた背中が自然に伸びるようになった。


「あなた、バレー部希望?」
そっと体育館の扉から、練習風景を覗いていたら声をかけられた。

試合をしている姿だけじゃない、間近で見たバレー部の先輩達はすごくカッコよくて……──。

「はい!」
と返事をしたら、招き入れてくれて練習に混ぜてもらった。


「もしかして、小学校でバレーとかやってた? すごく上手」
「やってました。その時からここのバレー部が憧れでした」
私がそう言うと、照れたような表情を浮かべた先輩は「そっかそっか~!」と私の肩を軽く叩きながら笑っていた。

「楓夏、ポジションどこ?」
名前を先輩に呼ばれ、胸が高なった。

「ミドルブロッカーです!」
「じゃあ、ここ空いてるから入ってもらってもいい?」
頷いてコートに入る。


──ネット高いなぁ……手を思い切り伸ばして高さを確認しようとしていたら、

「声かけるから、息合わせて飛ぼう!……先輩後輩は関係ないから遠慮はだめ! 本気でボール止めよう!」
「はい!」


少し緩めのボールが私の近くに来た。

「楓夏! こっち!」
セッターの先輩が手を挙げて私の名前を呼んだ。

レシーブをしてそっちへボールを送る──。

「ナイスカット! ……オープン!」
私のカットしたボールを、レフト側に正確にあげる先輩がカッコいい。


コートでボールを追いかけていると、少し聞き覚えのある声が聞こえた──誰だろう、とそっちに視線を移したら同じクラスの井筒さんと小貫さんがいた。

井筒さんは、スポーツ出来そうな雰囲気だけど小貫さんはちょっとだけ意外だな……。

でもあぁいう人って、何でも出来てしまうのだろうか。


──と、自分の気が緩んでいることに気づき慌てて引き締め直した。

……あの2人も同じ仲間になるのかな。
私はちょっとしたワクワク感と共に、不安と恐怖を感じていた。

目つきが悪いとよく言われる。
……そのせいで、怖がらせてしまったりしたらどうすればいいんだろう。

目つきの悪さ、直す。

私が強く心に決めたことだった。


**

Re: 空に輝く二つの月。【コメント募集中!】 ( No.87 )
日時: 2017/04/07 17:50
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

*

「はい、じゃあ1年生はここまで!」
先輩が私や井筒さん達にそう言った。

「明日もあるから、来てね!」
帰り際にそう言われ、迷わずに首を縦に振り頷く──もっとここでバレーボールを追いかけていたい。

練習だけじゃない……何か大きい大会に出る時に多くボールを追いかけられるのは、強いチームだ。

強くなるためには、とにかく先輩達との練習についていけるようにする。
──出来るようになるまで、それ以上のことは言えない。


帰りは私と井筒さんと小貫さんで帰ることになった。
人に誘われることがあまりない私からすると、それだけで嬉しいことなのだ。

「ぶっちゃけ、月は今日の練習どうだった?」
高階さんも……と小貫さんが付け足した。

「私はバレー部に入るよ。他に出来ることないし──」
私は2人に小学校からバレーをやっていたことを伝えた。

「私もバレー部にしたいけど、練習キツかったなぁ……。レシーブ痛くて腕が上がらないよー」
井筒さんが落ち込んだ様子で言う。小貫さんも同じ意見らしい。


バレーは1人で出来るスポーツではない。だから、チームメイトが必要だ。

「──でも、今なら結構1年生の人数も私達だけで少ないし、先輩からなにか教えてもらえたりする時間もあると思う。もちろん、無くても学ぶ時間も多いんじゃない? うちの学校のバレー部強いんだよ?」

言い終えてから、少し自分の息が切れていることに気づく。

一気に言い過ぎちゃって……2人とも引いてるよね。

このまま一緒にいるのはちょっと気まずいなぁ──その場の空気に耐えられなくなった私は、無理やり家の方向ではない道を曲がった。

……こっちからだと、遠回りだ──。


私の言ったことで、2人の心に少しでも決心がついてくれたらいいなぁと願うばかりだった。

バレーボールは私を強くしてくれる──人と人との繋がりを感じられるスポーツ。
見ている人を感動させられるスポーツ。

「一緒にバレーやりたいなぁ……」
2人はいない、けれど口に出して言っていた。


**