コメディ・ライト小説(新)
- Re: 【短編集】この一杯を貴方と。【開店中】 ( No.28 )
- 日時: 2017/03/26 22:26
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
■番外編1 「過去の記憶から。」
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──私はクラスの皆と同じじゃない。そう気づいたのは小学生の時。
本当はもっと早く気づいていたかもしれない。……けれどまだ感じていただけでそう強く感じたのは小学生の頃だ。
友達が家にきた。
まだお客さんがいない時だったから、「chestnut」のメニューをお父さんが作って私と友達の前に出してくれた。
その時だ。──その友達が言った。
「あきちゃんのママは?」
別に深い意味は無かったはずだ。まだ小学生、そりゃあ私にその子の気持ちは分からないが、単純に「ママはどこ?」という気持ちで聞いたのだと思う。
私もお父さんも黙ってしまった。
「……ママは、いないよ」
小さいながら私が口にした、その時の精一杯の言葉だった。
その子は「なんでママがいないの?」と聞いた。
「……ママは、おうちを出ていっちゃったの」
私は友達に泣きながらそう言った。
そうしたら、その友達も泣きながら「ごめんなさい」と言った。
小さいながらに感じた、他の子との違い。
──それを知った時にものすごく切なくなった。
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- Re: 【短編集】この一杯を貴方と。【開店中】 ( No.29 )
- 日時: 2017/03/30 09:48
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
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──ママが出ていった、というワンフレーズだけでたくさんの意味に捉えられるだろう。
その子がどんな風に捉えたのかは、その子自身に聞くしかないのだけれど、私は今こうして何年も経った中でも少なからずある後悔の一つだ。
これからどんどん年月が過ぎていく中でもこれだけは……直接聞かないと解決する術がない。
──その子は、小学校卒業と同時に遠く離れた進学校を受験して引っ越してしまった。
今はきっと、私のことなんて忘れてしまっているだろう。
「もしまた会えたなら、私は最初に何を問う?」
私は自分自身にそう言った。
自分の事なんて何一つ分かっていないんじゃないか、そんな風に最近は考えてしまう。
……と、ノートの上で走らせていたシャーペンを止めた。
まるで勉強に身が入らない。
明日が課題提出日だと言うのに、半分も終わっていないのだ──。
このまま続けていても、何も集中出来ないだろう。
パーカーを羽織り、下に降りると……お父さんが店の席に座ってコーヒーを飲んでいた。
「おぉ、まだ起きてたのか」
お父さんは私の姿を目にするなりそう言って立ち上がった。
「課題やってたんだけど、集中出来ないから……あったかい飲み物でも飲もうかなって」
「そうか。じゃあ、ちょっと待ってろ」
お父さんは、慣れた手つきでコーヒーを入れ始める。
部屋に漂うコーヒーの香りが何ともいい香りで、心を落ち着かせてくれる──。
「ありがとう」
明日も学校なんだから、あんまり夜ふかしするなよ……とお父さんは言い、またさっきの席へと戻った。
カフェオレを持って私は階段を上がった──。
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ショート過ぎましたが、番外編は終了です。
……もしかしたら、この番外編が次の本編と繋がるかもしれませんが、この番外編を読まずに飛ばして頂いた方にも楽しんで頂けるようにしたいと思います。