コメディ・ライト小説(新)
- Re: キミの隣に。『コメント募集中(。>ω<)ノ』 ( No.106 )
- 日時: 2017/06/11 19:19
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
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本音を言って貰えると、こんなにすっきりするんだなぁ――清々しい気分で、そんなことを思っていた。よく分からないけれど、どこか晴れやかな気分だったのだ。
今日は週明け、12日――あと13日間だけ。
この2ヶ月を無駄にしない――ずっと前に思えるけれど、それほど前じゃない……いつかに思ったこと。
いつでも初心に返るのは大切だ。
……正直楽しめるかどうかなんて、自分にも分からないけれど。
心の中に押し込むのは、いつか迷惑になる。
「楽しみたいっ…!」
誰にも聞こえないような呟きを、教室で静かにこぼした。
文化祭15日前からは、細かい準備に取りかかる。毎年、絶対15日前から始まる。
出店の場所取り、ポスター貼り。放課後には学校外へポスターを貼りに行ったり、配りに行ったりする。
3年生――3回目である私たちは手際よく準備を進めていった。また、1年生の手伝いなども行う。
私とゆかちゃんは、作ったポスターをあちこちに貼っていった。男子たちは出店の場所取り、作った店を建てて補強している。
- Re: キミの隣に。『コメント募集中(。>ω<)ノ』 ( No.107 )
- 日時: 2017/06/11 19:09
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
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そんな光景を見ると、いよいよ文化祭が迫ってきたんだなぁ――そんな実感が湧く。毎年のことながら、文化祭は本当に楽しみだ。
「芽衣、何か嬉しそうだね」
「……だって、文化祭もうすぐだよ?1年に一回なんだから、楽しみ」
麻奈は私にそう言うけれど、麻奈だって相当嬉しそうだ。
「私もすっごい楽しみ!今年でこのメンバーは最後だしね~」
「私も今回は結構楽しみかな」
最近は、私と麻奈、咲恵ちゃん、ゆかちゃん。この4人で話すことが多くなった。麻奈は私と話すとき以外はあまり口数が多い、元気なタイプではないけれど、時が進むにつれて誰とでも話せるようになっている。
呼び方も名前になっているし。
見ている方も楽しくなるくらいだ。
「そうだ、この4人で文化祭回ろうよ~」
咲恵ちゃんが提案する。……でも私は、すぐに頷けなかった。
――どこかで、青石くんと回りたい……そんな気持ちが渦巻いているのだろう。
「……芽衣ちゃん」
突然、ゆかちゃんに呼ばれる。ゆかちゃんはちょっとごめんね、と言って麻奈と咲恵ちゃんから遠ざかった。
そして、私に「こっち来て」と手で合図を送っている。
私は疑問を隠せないままゆかちゃんの方へ行くと、
「本当は、青石と回りたいんでしょ?」
見事に図星をつかれ、私は黙り込む。
……そうだけど。合ってるんだけど……でも。
「うん……まぁね、でも多分無理」
「何でよ…?」
ゆかちゃんは突然、力なく私に問いかけた。
「……え?」
「――芽衣ちゃんって本当、鈍感だよね……。私が告白して振られた時点で気付かないの?」
「どういうこと……?鈍感?」
私の問いかけを完全無視してゆかちゃんは、じゃあ、と。
「青石誘ってみなよ?絶対、了承してくれるから」
どこか寂しげに、ゆかちゃんは言う。
……何で。
「何で……ゆかちゃんは青石くんのことが……」
「言ったでしょ?私、芽衣ちゃんの恋を応援するって!だから、誘ってみなよ。正直、了承してくれる気しかしない」
どうしてそんなに、自信満々なのかは分からない。
けれど。
「……ゆかちゃん、ありがとう……」
自分の気持ちを押し殺してまで私を応援してくれるゆかちゃんに、素直に甘えることしか私は出来なかった。
――私の頬に一筋、冷たいものが流れた。
- Re: キミの隣に。『コメント募集中(。>ω<)ノ』 ( No.108 )
- 日時: 2017/07/02 16:59
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
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ゆかちゃんに『青石誘ってみなよ』と言われてから小一時間。私は落ち着かない気持ちで青石くんの方をチラリと流し見る。
いつもと変わらず明るい笑みを浮かべている青石くんは、まるで自分の運命を知らないみたいだ。……なにが青石くんの原動力なのか……そう思えるくらい。
(一緒に文化祭まわろう!……とか?良かったら文化祭一緒にまわらない?……とか?どう言えばいいんだろ……)
心の中で深いため息をついても、どうしようもなかった。
『天国に引き渡します……』
不意に、アニタの言葉が脳裏をよぎる。
私はふと思い出す。――あと、13日間なんだ―――……。
告白しても、しなくても――どうせ砕け散る恋なんだから。
私はすぅっと息を吸う。
何回か深呼吸をする。
青石くんが友達から離れ、自分の席へと戻っていったのを見て取って。
緊張で汗ばむ手を後ろで組みながら。
「――青石くん」
私と青石くんにしか聞こえないように、声を潜めて言う。
「どうした?」
「あの……――文化祭、一緒にまわらない?」
青石くんの不思議そうな顔に一瞬戸惑ってしまったが、私は口早に言った。
……言えた。それだけでも成長したな、と思う。
すると、青石くんはほんの少しだけ戸惑いの色を見せていたが。次第に言われた言葉を理解していったようで、
「もちろん!」
人懐っこい笑みを浮かべて……確かに私に、了承してくれた。
……ゆかちゃんはなぜ、こうなることを予言できたのだろう――少し気になったけれど、とにかくちゃんと言えて良かった。
「ありがと!私、麻奈たちと最初はまわるから……途中で合流する?」
「うん、俺もあいつらと一緒にまわる約束したから……そうしよっか」
青石くんはそう言いながら、教室で騒ぐ男子達の方を指さす。そんな青石くんの顔には、少しだけ桃色が差しているような気がした。
「楽しもうね、文化祭」
「ああ」
文化祭の翌日の運命にあらがうことは出来ない。
だから、精一杯楽しむ―――せっかく、青石くんとまわれることが出来るのだから。