コメディ・ライト小説(新)
- Re: キミの隣に。『コメント募集中(。>ω<)ノ』 ( No.112 )
- 日時: 2018/01/02 11:33
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
episode19.「Cultural festival」
時は流れ今日は文化祭当日――。私がこの盛り上がりの光景を見るのは2回目になる。だが、気分は1回目より複雑だった。
明日には――……青石くんは。
完全に、私の前から消えてしまうのだ。
そう考えると私は急に元気が無くなってしまうのだが、今日は青石くんと文化祭をまわれる。なるべくポジティブに考えようとしてはまた気分が沈んでしまうのだが、私は何とか心を保とうとしていた。
「やっほ~、芽衣ちゃん!」
「……ゆかちゃん」
「どーしたの?今日文化祭なのに元気なさそうだけど」
「あ、いや…なんでもない、大丈夫」
ゆかちゃん――ゆかちゃん自身、青石くんのことが好きなのに私のことを応援してくれる。これほど優しい人なんて居るのだろうか。ただの私の欲望なのに自分から引いてくれるなんて。
最近知ったことだけど、やっぱりそう考えると胸が痛い。
「……青石と……楽しんでよね」
私が暗い原因が青石くんにあると思ったのだろうか、ゆかちゃんは私を気遣ってそう言ってきた。
少し寂しそうな表情――それだから、私の心が痛くなるのに。
「……ごめん……」
「何で謝るの…私の方が悲しくなるじゃん。お願い、私のためにも楽しんできてよ。やっと諦めつきそうなんだから!」
せつなそうに笑うゆかちゃんは本当に諦めがついているのか、その言葉に嘘がないのか心配になったが、私はとりあえずありがと、とだけ言う。
「あ、開会式あるんだよね?行こう行こう!」
「う、うん……」
話を切り替えてゆかちゃんは明るい声で言った。私は頷いて、走っていくゆかちゃんの後を追った――。
○*
文化祭が始まると、前半はゆかちゃんが上手くまわしてくれたようで私と青石くん、あと何人かの班のメンバーが自由行動の次巻になった。最後にゆかちゃんは「頑張れ!」と私を励ましてくれた。
「行こ、黒崎」
「うん……」
こうやって話していられるのも、今日と明日だけなのだ。
この時間中に、明日学校の屋上に来てって誘わないと――。
「お化け屋敷行く?」
「えっ…!?………うん…」
正直怖いけれど、これは何かのチャンスではないのだろうか。もう少しでも、あと少しでも近づけるチャンス――。
少々変な間を取ってしまったから青石くんは不思議そうな顔をしていたが、私たちはお化け屋敷に入ることにした。
- Re: キミの隣に。『コメント募集中(。>ω<)ノ』 ( No.113 )
- 日時: 2017/12/30 15:29
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
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「………本格的……」
お化け屋敷に一足入ると、そこは遊園地で見るような怖いところと変わりない、すごく本格的な作りになっていた。こういうところを見ている時点では自分もまだ落ち着いて居るなぁと思ったのだが、お化けとかが出てきた瞬間に私は言葉を失った。
「………」
言葉を失ったというのはこれは本当のことで、……驚きで言葉を失ったのではなくただただ何も言えなかっただけだ。
そもそも私は、お化けみたいな存在と言っても過言ではないアニタを見てもただただ「誰?」としか言えなかったくらいだ。……割と自分でも落ち着いているのかもしれない。
「……黒崎、こういうの平気なの?」
「駄目だと思ったんだけど平気だった……」
少しだけ、怖がって青石くんに近づくというチャンスを逃したのは悔しかったけれどこれはこれで何だか楽しいなぁと思ってしまった。
○*
「お疲れ様でしたー!」
出口にいたお化け屋敷担当の子が私たちを明るく送り出してくれた。その子の目が少しだけ羨ましそうな目をしていたから何だか気分がよい。
今横にいる彼が、あと1日で無くなるだなんて信じられない。
「……黒崎」
「え?あ、ど、どうしたの?」
「……明日の夜って、都合ある?」
明日の夜――それって、青石くんが亡くなる少し前――?
けれどこのことを青石くんは知らないはずだから、私は平静を保って言う。
「ないよ」
「なら良かった、学校の屋上に来てくれない?」
「日曜日なのに?」
「うん。都合無いならお願い」
そう言った青石くんの顔はひどく切なくて、私は思わずどうして、と呟きそうになったが……見間違いだと自分に言い聞かせて意識を切り替える。
「……射的行く?」
「あ、行く!」
とりあえず、私はこの最後のチャンスを逃さないようにしよう。
もう今日と明日で一生過ごせなくなる――青石くんの隣で。
- Re: キミの隣に。『コメント募集中(。>ω<)ノ』 ( No.114 )
- 日時: 2017/12/31 00:24
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
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「当たった!当たった…!」
「すっげ、俺全然当たらないんだけど……」
射的は適度な人数が並んでいて――結構すぐに順番が回ってきた。丁度2つのセットがあったから私たちは同時に始めた。
すると何と、景品を3つももらったという。そして青石くんは全然当たらなくて、または当たっても落ちなくて苦戦しているようだ。
……私、変なところで才能あるのかな。
「ではこれ、景品です!有り難うございました~」
「あ、有り難うございました」
合計10発を打ち終わり、私は景品を貰えたが青石くんは1つも貰えなかったようだ。
ちなみに私の当たった景品はクマのストラップが色違い…青色とオレンジ色で2個、よく分からないお菓子が1個。私は意を決して青石くんに言う。
「これ、要る……?」
そう言ってクマのストラップの青色の方を渡す。……明日にはもう会えなくなってしまうというのに、意味がないのに――私は何を言っているんだろう。
「あ、ありがと……大切にする……」
大切にすると言った君の声が震えているのは、どうして?
○*
文化祭が終わるのはあっという間で、もう私が青石くんと居られるのも24時間を切ってしまった。自分の家、いつものようにアニタが居る。
「良かったですか?文化祭」
「うん……多分……」
歯切れの悪い返事になってしまった。楽しいことには楽しかった。沢山笑えたし面白いことだってあったのだけれど、明日に青石くんが……その事実を実感してしまうと楽しめない部分もあった。
それに、彼は時々切なそうに笑っていた。
あの時は絶対、青石くんは自分自身が明日天国へ行くと言うことを考えていたんだろう。
「アニタ、明日……私、告白する」
「……そうですか」
反応はとても薄かったけれど、別にそれで良かった。その方が居心地がよい。
「ねぇ、青石くんが明日の夜屋上に来てって行ってたんだけど……なにか知ってる?」
「えっ……そうなんですか?でも丁度良いですよね、告白……」
「まあね……私も実は屋上に誘おうと思ってたんだよ、告白するとき」
青石くんの用件はよく分からないけれど、これから天国へ行く――それのカミングアウトか何かだろうか。そんなことされたら絶対悲しみで泣いてしまう気がするんだけれど……。
私は明日に備えて早めに寝ることにした。