コメディ・ライト小説(新)

Re: キミの隣に。『コメント募集中!!』 ( No.80 )
日時: 2017/04/27 18:00
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

~







――誰かと触れているような温かさが私の体に染みこむ。

――息切れしながら廊下を走る音が微かに耳に届く。

そのまま、何かふわふわしたものの上に乗せられたような感触があった後、私の意識は完全に途絶えてしまった――。


「本来の過去と――違うような……?」

そんな誰かの呟きも聞こえなかった。



○*


何時間経ったのだろうか。
確か今日は晴れていたはずだが、カーテンからは光の差し込みがまるで見えない。未だに視界は歪んでいるのに全く見えない……。ということは、夜……かな。
ゆっくり起き上がりながらそんなことを考えていると、


「黒崎……」

歪む視界でもはっきりと見える、青石くんの姿。

心配掛けてごめん。もう大丈夫……そう言いたいのに、青石くんの姿を見るとなぜか声が出ない。
……彼もトリップしているから。
彼の運命は変えられないと改めて知ってしまったから。

「……」
「大丈夫?」

その問いかけにも答えることが出来ない。

「……水山と森川と光崎が……ジュース買ってきてくれたから落ち着いたら飲めよ。3人とも夜になる前に帰ったけど」

当たり前だ。いつまでも私に付き合ってくれるわけがない。
……私の勝手な事情に……。


それなのにどうして青石くんは……?


「あら、黒崎さん起きた?」

私の疑問をかき消すかのような養護教員――川野先生の声が聞こえた。

「……はい……」

消え入りそうな声で返事をする。何とか声は出るようになっていた。


「実はねー、青石くんが貴方を背負って連れてきてくれたのよ」
「ちょ……先生っ!?」



……背負って?

私を?











――


つい先日スポーツテストがありました(*^_^*)
50m走の記録が去年より落ちていました……泣

Re: キミの隣に。『コメント募集中!!』 ( No.81 )
日時: 2017/04/29 10:51
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

~






(え……じゃあさっきの音……それに感触は……)


青石くんが私を背負って保健室に連れてきてくれた、ということなのだろうか。
顔が一気に紅潮する。

「え……ほん…と?」
「……」

青石くんは無言だ。……青石くんの顔も、少し赤く染まっている。

私が問うてからしばらく沈黙が続く。




「それにしても、何で急に倒れたのかしら?」

不意に、川野先生がそんな疑問を私にぶつけた。

「え……?」



……この世界の青石くんについてを、知ってしまったから。

そんなこと言えない。口が滑ってもこれだけは言えない。
正直……私もなぜ倒れてしまったのか、明確な理由はよく分からない。


「……疲れてたのかな?お大事にね」

何も喋らない私を見て先生は思い出せないと読み取ったのか、それだけ言うと職員室へ戻っていった。
未だに無言を決め込む青石くんと私が取り残される。




何とかしてこの沈黙を破ろうと、私は近くの机に置いてある咲恵ちゃんやゆかちゃん、麻奈が買ってきてくれたという炭酸ジュースを手に取り開ける。
その時のプシュッ、という音が気味の悪いくらい静かなこの保健室に響いた。

少しだけ飲んで机に置くと、また沈黙が続く。




○*


結局あの後、「ばいばい」としか言わずに私と青石くんは別れた。途中まで無言で一緒に歩いていたけれど、分かれ道でそれぞれ逆だった。


すっかり暗くなった夜道。トリップしたすぐ後だっただろうか――青石くんと歩いた夕陽でオレンジに染まった道とこの暗い道は同じだと思えない。


ほろり、と……涙がこぼれた。
街灯に照らされきらりと輝く。

前、この道で涙がこぼれたときは……青石くんと過ごせる時間が、過ごした分だけ短くなった……それに対する悲しい、という思いからだった。

でも今はとにかく――お礼も何も言えなかった、自分が許せなかった。
勝手に倒れて……青石くんがそんな私を助けてくれたのに。それなのに、ありがとうと一言も言えなかった。


「っ……ぁ……」

このままでは……私が嫌だ。


青石くんは自分がトリップした2ヶ月後に天国に引き渡されることを分かっていて、この世界に過ごしているのだ。

それを分かりながら笑顔で生活している青石くんは、本当に強いと思う。

それなのに私は……この世界の彼について教えてもらった――それだけで、急に倒れるなんてそんな弱い人間なんだ。


このまま彼の不幸ごとだけ考えて、彼とまともに話せないなんて――嫌だ。
青石くんの過去は変えられない。そうかもしれないけれど。


話したい。



そんな欲求が私の涙を止めた。


少ない街灯だけで前はよく見えないけれど、私は振り返って走った。
さっきの分かれ道まで必死で走る。

必死で、必死で。

やがて分かれ道へ着くと、私の家の逆の方へと足を進める。


青石くんの家がどこなのかなんて分からない。

ただ真っ直ぐ走っていれば、会えるような――そんな気がした。











――


黒崎さん前向くの早すぎですね。汗

これで半分きった……かもしれません。
にしても今回、久しぶりに1000字超えました笑