コメディ・ライト小説(新)
- Re: キミの隣に。『コメント募集中!!』 ( No.86 )
- 日時: 2017/04/30 09:26
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
- 参照: episode13続き
~
必死に呼吸を繰り返し、腕を大きく振って歩幅を広げる。
きっと会えるはず。
何の保証もないのに私は確信できた。きっと、私が走る先に居る、と。
10月後半、肌寒い空気が私に向かってくるけれど、全く気にならなかった。
ひたすら足を進める。住宅街から聞こえる家族の暖かな声を聞きながら。
「あっ……」
「彼」はなぜか、街灯の近くに佇んでいた。
いつもより肩を落として、なにやら寂しそうにしていた。
「あおっ……ぃ…」
そんな姿に声を掛けようとするが、喉の奥に引っかかって出てこない。
私のそんな声には気付かず、青石くんはずっと立ち止まっていた。
どうしたの、何してるの、帰らないの……?そんな疑問は浮かんでくるけれど、何より会えたことに嬉しさが湧き上がる。
その嬉しさでもう一度声を出そうとする。
「ぁ……お……」
さっきの決心――話したい、という思いはどこへ行ったのだろうか。
どうして声が出ないの――?
話したいのに。
近くにいるはずの青石くんは、なぜか遠くの世界に居るんじゃないかと言うくらい距離を感じた。
ここで話しておかないと――もう話せないような――そんな感情が渦巻く。そんなはずないと信じたいけれど、心の中はもやもやした気持ちでいっぱいだった。
『じゃあ、またな』
『うん、また明日…――』
また明日。
その言葉が続けばいいな、と私は確かに思った――。
真っ直ぐ青石くんを見据える。
青石くんの「この世界の未来」……それを考えずに。
ずっと一緒にいられると考えて。
また明日、と言う言葉をずっと言えると考えて。
目一杯、息を吸い込んだ。
青石くんに届くように。
「青石くんっ!!」
立ちすくむ青石くんにもはっきりと届いたのか、彼は暗くても見えるくらい驚いた顔で私の方を振り向いていた。
――
この…第13話が終わったら、もう少しコメディになると思います。
段々明るくなってきました……か?←
- Re: キミの隣に。『コメント募集中!!』 ( No.87 )
- 日時: 2017/04/30 09:58
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
~
「黒崎……?」
そう呟いた青石くんの声は力なく感じた。
胸が締め付けられる感覚を覚えたけれど、ゆっくりと彼の方へ歩み寄っていく。
「……その……」
何でここへ来たの、逆方面だろ……疑問符を浮かべる青石くんはそう言っているような気がした。けれど、
話したい。明日も。
また明日という言葉が続くように。
「今日は有り難う!心配かけて本当ごめん……。もう大丈夫、ありがと」
精一杯の笑顔で。
しっかり青石くんに届くように。
なぜか私の心の中には、「青石くんの運命は変えられない」なんて気持ちはなくなっていた。ちゃんとお礼を言えたことが嬉しかった。
胸が締め付けられる気持ちも……なかった。
「………」
青石くんは小さく口を開けて……いわば放心状態だった。
そんなに意外だったのかな、と心配になる。
「あ……いや、別に謝らなくても」
「ううん、急に倒れたのは私だし……本当ありがと」
青石くんがどうして私を保健室に連れて行ってくれたのかは分からないけれど。助けられたし、本当に嬉しかった。
お互い気まずい空気で「ばいばい」と言った時の雰囲気とは違い、
「んじゃ、また明日」
「ばいばい」
明るい雰囲気の中、そう言い合って私は振り返り家の方へと走っていった。
○*
「おかえりなさい、黒崎さん」
「ただいま!」
どこか吹っ切れた気持ちの私は、いつもより高い声が出た。
「遅かったですね?」
「あぁ……ちょっとね、まぁ……委員会とか?」
倒れた、とは言えなくて嘘をつく。
アニタにも余計な心配をされたくない……もしかしたら知っているのかもしれないけれど。
「そうですか。お疲れ様です」
青石くんもトリップしているなら。
何か未練があるのだとしたら。
私はその未練を影ながらでも応援したい……。
楽しい時間を送ってもらいたい。
自分が天国へ送られると分かっていて笑顔で過ごせている青石くんのように、私も笑顔で過ごしたい――。